肝吸虫に要注意!淡水魚の生食リスクと予防策を知ろう

生物学

今回は、フナに寄生し、最終的にヒトを含む哺乳類に感染する可能性がある肝吸虫について解説します。

淡水魚を愛する人々の間では、刺身や甘露煮といった食文化が楽しみの一つです。
しかし、フナなどの淡水魚を生で食べる際には、肝吸虫という寄生虫への注意が必要です。

この寄生虫は人間の体内に入り、健康に影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、肝吸虫の生態や感染リスク、予防策について詳しく解説し、安全に淡水魚を楽しむためのポイントをお伝えします。

先生
先生

肝吸虫について詳しく学ぶことで、
感染予防や安全な食文化の理解につなげていきましょう。

肝吸虫の生態と生活史

肝吸虫は、日本列島、朝鮮半島、中国、台湾といった東アジア一帯に生息しており、これらの地域で感染例が報告されています。

特に、湖や湿地帯周辺で感染リスクが高く、フナやコイ科の淡水魚が主な中間宿主となります。

生活史の流れ

肝吸虫の生活史は非常に複雑です。その過程を整理します。

成虫が卵を産む
成虫は寄生している胆管内で1日に約7,000個もの卵を産みます。卵は胆汁とともに排出され、水中に流れ込みます。

第一中間宿主:マメタニシ
卵は水中に放出されても自然には孵化しません。湖沼や低湿地に生息する巻貝の一種であるマメタニシに摂取されると、その消化管内で孵化して幼生(ミラシジウム)となります。

体内での変態と成長
ミラシジウムはマメタニシの体内で変態し、スポロシスト幼生を経てセルカリア幼生となります。成熟したセルカリアはマメタニシから水中へ泳ぎ出します。

第二中間宿主:淡水魚
水中を遊泳するセルカリアはフナ類やコイ科の淡水魚の体内に侵入します。主に筋肉内でメタセルカリアという感染可能な幼生に変化します。

終宿主:ヒトや哺乳類
ヒトやイヌ、ネコなどが感染した淡水魚を生で食べると、小腸でメタセルカリアが孵化します。そこから胆汁の流れを遡って胆管内に定着し、約23~26日で成虫になります。成虫の寿命は20年以上と非常に長いことが知られています。

寄生による影響|肝吸虫症のリスク

主な症状

肝吸虫が胆管に多数寄生すると、以下のような症状を引き起こすことがあります。

症状一覧

胆管の炎症と閉塞
胆汁の流れが妨げられ、炎症や胆管の肥厚が発生します。

肝機能障害
肝細胞の萎縮や壊死が進行すると、肝硬変に至ることもあります。

全身症状
食欲不振、倦怠感、下痢、腹部膨満感、さらには黄疸や貧血を伴うことがあります。

ただし、寄生個体数が少ない場合、無症状であることもあります。

肝吸虫の分布と感染状況

古くから肝吸虫症の流行が確認されている地域として、日本国内では以下の場所が挙げられます。

流行地
岡山、琵琶湖、八郎潟、利根川流域、吉野川流域
その他の地域
宮城、新潟、長野、京都、大阪、福岡など

これらの地域では、淡水魚の刺身や調理が不十分な魚料理を介して感染が広がるケースが多く報告されています。

感染予防のポイント

フナやコイ科魚類の生食を避ける

特に流行地域では、フナやホンモロコなどの小型魚を刺身や生調理で食べることを避けるべきです。また、ワカサギ釣りなどで得た魚も注意が必要です。

十分な加熱調理

肝吸虫のメタセルカリア幼生は、高温に弱いため、魚を十分に加熱してから食べることで感染を防ぐことができます。

加熱した際にも中までしっかりと火が通ったか確認できるように魚を調理する際に中心温度を測れると心強いですね。

肝吸虫症の治療法

かつては塩酸エメチンなどの副作用が強い薬が用いられていましたが、現在ではプラジカンテルという安全で効果的な薬が主流です。
1日の服用で完治するケースが多いため、早期発見・治療が重要です。

おまけ|北大路魯山人と肝吸虫

日本の美食家・北大路魯山人は、生煮えのタニシを好んだために肝吸虫症を発症し、肝硬変で亡くなったという俗説があります。

しかし、彼が感染した可能性が高いのはフナやコイの刺身を食べたことによるものと考えられています。

このエピソードからも、淡水魚を生で食べる際にはリスクを十分理解する必要があると言えるでしょう。

まとめ

肝吸虫はフナやコイなどの淡水魚を介して人間に感染する寄生虫であり、適切な調理を行わないと健康リスクを伴います。

特に流行地域では生食を避け、感染を防ぐために魚介類を十分に加熱することが重要です。

また、感染した場合は早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

先生
先生

この記事で紹介した知識を活用して、安全でおいしい淡水魚の食文化を楽しんでください。

コメント