
今回は魚の起源について解説してきます。
魚は大昔からさまざまな場所に生息していますが、大陸をまたいでも近くの環境に生息している個体もいます。

魚は人間みたいに海外旅行はできないものね

その謎について一緒に見ていきましょう。
遠く離れた大陸に同じ仲間の魚がいるのはなぜ?


日本のペットショップでもよく見かけるネオンテトラやピラニア。これらの魚は「カラシン」と呼ばれるグループに分類されます。
カラシンの仲間は、南アメリカやアフリカの川や湖に広く分布し、その種類はなんと1,600種以上にものぼります。

南アメリカ大陸とアフリカ大陸は海をはさんで遠く離れているのに
なぜ同じ仲間の魚が両方の大陸にいるのでしょうか?

実は、これには地球の大陸の歴史が大きく関わっています。
大昔の地球では大陸がつながっていた

現在の地球では、アジア、アフリカ、南北アメリカなど、いくつもの大陸があります。
しかし、今から約3億年前の石炭紀(せきたんき)には、すべての大陸がつながった「超大陸」と呼ばれる巨大な陸地がありました。
この大陸は「パンゲア大陸」といい、その周囲には大きな海が広がっていました。
しかし、パンゲア大陸はその後ゆっくりと分裂し、それぞれの大陸が少しずつ移動しました。
やがて、アフリカ、南アメリカ、アジアなどの大陸が形成され、現在のような地球の姿になったのです。
この大陸の動き(大陸移動)の影響を受けて、生き物たちもまた異なる場所へ分かれていきました。もともとは同じ地域にいた魚たちも、大陸の分裂によって別々の場所で暮らすことになったのです。

そのため、今でも遠く離れた大陸に、
同じ祖先をもつ魚が生息しているという現象が起こるのです。
コイ目の魚も大陸移動の影響を受けている

このような現象は、カラシンの仲間だけでなく、コイ目の魚にも見られます。
コイ目には、日本でおなじみのフナやコイが含まれています。
これらの魚は、アジアやヨーロッパの淡水域に広く分布していますが、元をたどれば、彼らの祖先も大陸移動の影響を受けながら世界中に広がっていったのです。
フナやコイは、日本の川や湖でよく見られますが、ヨーロッパやアフリカの一部にもコイ目の魚が生息しています。

これは、かつての大陸のつながりと分裂によって、
魚たちが異なる地域に分かれていったからなのです。
アロワナの仲間も大陸移動の証拠

また、アロワナ亜科に分類される魚たちも、大陸移動の影響を受けて分布が決まりました。
アロワナの仲間には、いくつか種類がおり、それぞれ異なる大陸に生息しています。
- ナイルアロワナ (アフリカに生息)
- アジアアロワナ (東南アジアに生息)
- シルバーアロワナ(南アメリカに生息)
これらはすべてアロワナの仲間ですが、生息地が大きく異なります。
この理由も、大昔に大陸が分かれたことで、同じ祖先をもつ魚が異なる地域に取り残されたからなのです。

つまり、アロワナの仲間が世界の複数の大陸に分布しているのは、過去の大陸の移動を反映しているのです。
生き物の分布と大陸の歴史

このように、大陸の移動によって動物の分布が決まることを動物地理区(どうぶつちりく)といい、世界は6つの地域に分けられています。
それぞれの地域には特徴的な動物が生息しており、その分布には数億年にわたる地球の歴史が深く関わっているのです。
たとえば、オーストラリアにはカンガルーやコアラといった独自の動物が生息していますが、これはオーストラリア大陸が早い段階で他の大陸と分かれ、独自の進化を遂げたためです。

同じように、南アメリカとアフリカに同じ仲間の魚がいるのも、
かつての大陸の動きによって生息地が分かれた結果なのです。
近年の魚類の大陸移動|国外外来種の影響
外来種が日本に来る理由
近年、日本にはさまざまな外来魚が持ち込まれています。その主な理由は、釣り・食用・観賞用の3つです。
遊魚目的
ブラックバスやブルーギルは釣りの対象魚として輸入され、
一部の個体が人の手で密放流されました。
食品目的
ティラピアやアメリカナマズなどは養殖や食材として持ち込まれた後、
自然界に逃げ出しました。
観賞目的
アロワナやカダヤシのような観賞魚は、飼いきれなくなった飼育個体が川や湖に放たれることで野生化するケースが報告されています。

このように、人間の活動が外来魚の分布を広げる大きな要因となっているのです。
外来種が生態系に与える影響
外来種が自然界に定着すると、在来種の生息環境が大きく変わります。
捕食・競争
ブラックバスやナイルパーチのような肉食魚は、在来種の小魚や甲殻類を大量に捕食し、個体数を激減させることがあります。
病気の拡大
外来種が持ち込んだ寄生虫やウイルスがまん延し、在来種に感染症を広げることも問題です。
遺伝子の攪拌
オオクチバスとコクチバスのように、外来種と在来種が交雑して遺伝子が混ざることで、もともとの在来種が消失する「遺伝子汚染」も懸念されています。

このように、外来種は捕食・病気の拡大・遺伝子の攪拌といった形で、
日本の生態系に大きな影響を及ぼしているのです。
生態系を守るために必要なこと

外来種問題を防ぐためには、持ち込まない・広げない・駆除することが重要です。
ペットの魚を自然に放流せず、適切に管理することや、釣りで外来魚を釣った場合は再放流しないことが求められます。
また、自治体や研究機関の外来種対策に協力することも、生態系を守るための一歩です。
まとめ
- 昔の地球ではすべての大陸がつながっていた
- 大陸が分裂・移動することで、生き物の生息地が変わった
- カラシン、コイ目、アロワナ目の魚も大陸移動の影響を受けている
- 今の生き物の分布は、過去の地球の歴史と深く関係している
私たちが今、世界のさまざまな場所で目にする魚たち。その分布には、何億年もの歴史が隠されているのです。水族館やペットショップで魚を見るとき、そんな「地球の過去の物語」にも思いを馳せてみると、さらに興味が湧いてくるかもしれませんね!

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