
今回は「育成学と水族館」について解説していきます。
育成学の観点からも非常に重要な施設なんです。

先生、水族館ってただ魚を展示しているだけじゃないんですか?

いい質問ですね。実は水族館は、魚を見せるだけでなく、魚を適切な環境で飼育し、教育や研究、種の保全にも貢献しています。
今回は、水族館が育成学にどのように関わっているのかを詳しく見ていきましょう。
水族館の役割


現在、育成環境を最も間近に観察でき、活発な場として適しているのは、養殖漁業場よりも水族館でしょう。
ここでは、「育成学」の視点から水族館をテーマに、水族館の設備や機器類、育成学の観点から見た役割について紹介します。
水族館の最大の役割は、レクリエーションとしてのエンターテイメントの場であることです。しかし、それだけでなく、魚について学ぶ教育の場としての役割も重要です。

さらに、育成研究を通じて種の保存にも貢献しており、
絶滅危惧種の保全や繁殖プログラムなども行われています。
水族館の建設目的


水族館は、以下の目的で建設されることが一般的です。
- 社会的な教育機関として、魚や水生生物について学べる場を提供する。
- レクリエーション施設として、地域住民や観光客に楽しみを提供する。
- 地域活性化・振興の一環として、観光施設の役割を担う。
水槽の配置と種類



水族館において最も重要な設備の一つが水槽です。水槽の規模は、小型のものでは数リットル〜100リットル、大型のものでは100㎥〜1000㎥以上と、さまざまなサイズがあります。
このような巨大な水槽を製作できる日本の技術は非常に優れています。

水槽の形状も多様で、以下のような種類があります。
- 独立型の小型水槽
- 壁面に設置された大型水槽(壁水槽)
- 天井水槽(上から魚を見られる構造)
- 回遊水槽(円形や長方形で魚が回遊する)
- トンネル水槽(観覧者が水中を歩いているような演出)
水槽の材質

ガラスやアクリルが一般的ですが、FRP(繊維強化プラスチック)やコンクリート製のものも存在します。以前はガラス水槽が主流でしたが、現在はアクリル製水槽が主流です。
アクリルは、耐衝撃性が高く、比重が軽く、加工がしやすいという特徴があります。
特に、大型水槽の製作には、アクリルパネルを継ぎ合わせる技術が活用されています。一方で、汚れやすく表面に傷がつきやすいという欠点もありますが、補修することは可能です。
飼育水の確保


水族館は閉鎖環境であるため、安定した飼育水の確保が重要になります。
淡水の場合
上水道の水道水を利用したり、井戸水や川・湖の水を取水することが一般的です。
海水の場合
海が近ければ取水できますが、遠方の場合は沿岸海洋水や海洋深層水を輸送・取水して確保する必要があります。
生物の収集

水族館の主役である魚や水生生物はどこから入手するのか?
主に以下の方法で調達されます。
- ペットショップや漁協で購入する。
- 他の水族館と生体の交換を行う。
- 水族館の飼育員が海や川へ直接採集しに行く。
- 仲卸業者を通じて購入する。(海外業者から輸入、地元市場や漁協、遠方の漁師からの仕入れなど)


仲卸業者を利用すると、多様な種類の魚を効率的に調達できるため、多くの水族館が活用しています。
水質管理

水族館での飼育展示では、魚の健康状態を長期間維持することが求められます。しかし、魚が餌を食べることで水質が悪化しやすく、適切な管理が必要になります。
水槽内の水質悪化の原因の一つがアンモニアです。餌の食べ残しや排泄物が分解されることで発生し、有毒なため放置すると魚が死亡してしまいます。そこで活躍するのが水中のバクテリアです。
アンモニアは、バクテリアによって亜硝酸に分解され、さらに硝酸塩に変わります。
しかし、硝酸塩が溜まりすぎると、コケ(茶ゴケ・藍ゴケなど)が繁殖し、水槽の景観や魚の健康に悪影響を及ぼします。
そのため、定期的な水換えが必要になります。

水族館みたいに大きな水槽だと水換えするのも大変ですよね、

水質管理の手法として、以下のシステムが利用されます。

- ナチュラルシステム
生物ろ過を活用して硝酸の蓄積を抑える。 - 濾過装置の活用
重力式濾過装置(底面式濾過、オーバーフロー式濾過、上部式濾過)
圧力式濾過装置(外部式濾過、外掛け式濾過) - プロテインスキマー
水中のタンパク質を除去し、水質を安定させる装置。
これらの技術を組み合わせることで、水族館の水槽は長期間にわたって安定した環境を維持し、魚の健康を守ることができます。
まとめ

水族館って、ただ楽しむだけじゃなくて、魚の保護や研究にも役立っているんですね。

そうです。水族館は、魚の生態を学ぶ場であり、飼育技術の発展や種の保存にも貢献しています。
適切な水槽管理や水質維持を行うことで、生物を長期的に育成し、私たちに貴重な学びを提供してくれるんですよ。
水族館は、育成環境を間近で観察できる場であり、エンターテイメント、教育、種の保全、研究の場としての役割を果たしています。
水槽の設計や水質管理は、水生生物の生存に直結するため、最新技術を駆使した設備が導入されています。
水族館の運営には、生物の調達や飼育環境の維持など、多くの専門知識が求められますが、それらを適切に管理することで、魚たちの魅力を存分に引き出し、来館者に貴重な学びと感動を提供することができます。
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