
今回は養殖漁業について解説していきます。

先生、養殖って何ですか?天然の魚とどう違うんですか?

養殖は、魚や貝などを人工的に育てることを指します。
天然の魚は自然の川や海で成長しますが、養殖魚は人の手で管理された環境で育てられます。
例えば、池や水槽、海の生け簀で魚を飼うことも養殖の一種ですね。
養殖の歴史

養殖は古くから世界各地で行われてきました。
紀元前500年には、中国でコイの養殖技術をまとめた「養魚経」が記されており、養殖の歴史が非常に長いことが分かります。
日本においても、平安時代に養殖事業が行われた記録が残っています。江戸時代には、カキの稚貝の育成やノリの養殖が盛んに行われていました。戦後の1960年代以降、養殖業は急速に発展しました。

現在では約80種類もの魚介類が養殖されています。
養殖が成立する条件
養殖を成功させるためには、いくつかの重要な条件があります。
- 区画漁業権の設定
養殖を行うための法的な権利が必要です。 - 良質な飼育用水の確保
水質が適切で、排水処理が容易であることが求められます。 - 種苗やエサ・飼料の入手の容易さ
養殖対象の魚の卵や稚魚、エサが安定的に供給される必要があります。 - 施設の設置と労働力の確保
養殖施設を適切に設置し、管理できる人材が必要です。 - 市場価値の高さ
食用や観賞用として価値のある魚であることが重要です。 - 飼育管理の確立
その魚種に適した管理方法が確立されていることが理想です。 - 出荷・集荷のしやすさ
販売に向けた物流がスムーズであることも大切な要素です。 - 衛生管理の適正化
食品として販売する場合は、衛生管理を徹底する必要があります。

なんでも養殖すればいいってわけではなさそうですね。
養殖の方式の種類

養殖にはさまざまな方式があり、大きく4つの区分で分類されます。
- 施設別
池中養殖、溜池養殖、水田養殖、網生簀養殖、海面区画養殖、垂下式養殖、固定式養殖 - 用水別
淡水養殖、海水養殖、止水式養殖、流水式養殖 - 種苗供給別
完全養殖、不完全養殖 - 餌・飼料別
給餌養殖、無給餌養殖
養殖施設

養殖施設は、地理的特性や養殖対象の生態に応じて選択されます。
池中養殖
人工の池で行う養殖で、フナやコイの養殖によく使われます。以前はコンクリート製の池が主流でしたが、現在は強化プラスチック(FRP)製の水槽が一般的です。
従来は止水式や流水式が主流でしたが、現在は循環式が主流となっています。循環式では、飼育水をろ過して再利用できるため、水の使用量を抑えつつ高い生産性を維持できます。
網生簀養殖
海や湖に網を浮かべたり、中層に吊るして行う養殖方法です。
水の入れ替え(換水率)が高く、高密度での養殖が可能なため、生産性が向上します。
特に海水魚の養殖に多く用いられます。
種苗供給別の分類

完全養殖
人工授精から成魚までの全過程を人為的に管理する養殖方法。
水族館や養殖業の目標の一つとされています。
不完全養殖
仔魚や稚魚の育成が完全には確立されておらず、天然の親魚や稚魚に依存する養殖方法です。
海水魚の場合は天然種苗を用いることが多いので、不完全養殖である場合が多いですね。
淡水魚はフナをはじめとした大半は完全養殖になります。

現在ウナギが完全養殖で行うために研究が進んでおります。
ウナギの生態を解明し、いかに仔稚魚を確保し養成できるかが鍵になっていますね。
給餌別の分類

給餌養殖
人工飼料やエサを与える方法。魚類や甲殻類の養殖に適しています。
無給餌養殖
養殖対象が自然の環境からエサを得る方法。ホタテやアサリ、ノリなどの養殖で多く用いられます。
フナの中でも植物プランクトンを主として食べるヘラブナの場合は
溜池の水質を調整して植物プランクトンを増やすことで無給餌養殖が可能です。
しかし、給餌養殖の方が成長速度が速いため、一般的には給餌養殖が採用されます。
養殖の段階
- 養殖方式の選択
どの方法で養殖するかを決めます。 - 養殖施設の設置
対象魚に適した施設を準備します。 - 環境の整備
水質管理や水温調整を行います。 - 親魚の確保と人工授精
種苗の生産を行います。 - 卵の孵化管理
孵化した稚魚を適切な環境で育てます。 - 育成・出荷
成魚になるまで飼育し、出荷サイズまで成長させます。 - 病気対策と管理
健康な状態で市場に供給できるよう管理します。
魚病対策


現在、魚の病気対策は「治療」から「予防」へとシフトしています。
大きく3つの方法が用いられます。
- 治療
1980年代までは抗生物質や合成抗菌剤を用いた治療が主流でしたが、薬事法の規制により、使用できる薬剤が制限されています。 - 予防
2000年代以降は、飼育環境の改善、ワクチンの投与、免疫賦活剤の使用が主流になっています。 - 疾病対策設備の確保
紫外線(UV灯)を用いた飼育水の殺菌・消毒が一般的に行われています。特に紫外線(波長250〜260nm)は細菌やウイルスのDNAを損傷させる効果があり、効果的な水処理手法となっています。
まとめ

先生、養殖ってすごくいろいろな方法があるんですね!

そうですね。養殖にはさまざまな方式があって、それぞれの魚や環境に適した方法が選ばれています。
また、病気対策や水質管理なども進化してきて、より効率的で持続可能な養殖が可能になっています。

将来、もっと環境に優しい養殖方法も出てきそうですね!

その通りです!技術の進歩によって、これからもより安全で持続可能な養殖が発展していくでしょう。
養殖は、未来の食料供給にも大きく貢献する大切な技術なんですよ。
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