
ゲンゴロウブナとかニゴロブナって、名前がちょっと変わってますよね。
どうしてそんな名前なんですか?

いいところに気がつきましたね。
実はその名前には、琵琶湖の昔の暮らしや、ある人物の名前が関係しているんですよ。

えっ、人の名前?魚の名前なのに?
もっと詳しく知りたいです!

もちろんです!
今回は、ゲンゴロウブナとニゴロブナの名前の由来や、地域での呼ばれ方について、わかりやすく紹介していきます。
ゲンゴロウブナの語源と地方名

漢字表記:源五郎鮒
標準和名:ゲンゴロウブナ(Gengoroubuna)
【由来・語源】

「ゲンゴロウブナ」という名前には、いくつかの興味深い由来があります。
いずれも、滋賀県・琵琶湖の西岸、堅田の漁師「源五郎」という人物に関係していると言われています
恋文を仕込んだフナの伝説

応仁の乱の頃、堅田の漁師・源五郎が都へフナを売りに行きました。
そのフナはとても評判が良かったです。
ある日、今出川の大納言家の姫君に恋をします。
想いを伝えるため、焼きフナを作ってその腹に恋文を忍ばせて献上したところ、手紙はフナを通じて姫君に通じ、ついには恋が成就したと伝えられています。
安土城への献上魚

源五郎は、いつも特に大きなフナを獲っており、それを安土城の城主に献上していました。そこで、「源五郎が獲った大きなフナ」という意味から、「源五郎鮒(ゲンゴロウブナ)」と呼ばれるようになったとも言われます。
フナ専門の魚屋「源五郎」説

堅田に源五郎という魚屋がいて、大きなフナだけを専門に売っていたため、
「源五郎鮒」と呼ばれるようになったという説もあります。
【ゲンゴロウブナの地方名・別名】

ゲンゴロウブナには地域や文化に応じていくつかの別名があります。
マブナ(真鮒)
まず、「マブナ」という呼び名は、滋賀県の高島市今津や長浜市菅浦など、琵琶湖周辺の地域で広く使われています。もともとはマブナの一種として分類されていたゲンゴロウブナですが、琵琶湖ではこの名前で親しまれてきました。
カワチブナ(河内鮒)
一方、「カワチブナ」という名前は、大阪府や茨城県の霞ヶ浦周辺などで見られ、主にため池で養殖されたゲンゴロウブナを指す際に用いられています。流通や養殖業の中で特定の呼称として定着したものと考えられます。
ヘラブナ(箆鮒)
また、釣りの世界では「ヘラブナ」という名前もよく知られています。この名称は全国的に広がっており、特に釣り愛好家の間で定着しています。「平たい体型」や、釣りに適した品種改良の結果生まれた個体を指すこともあります。
オウミブナ(近江鮒)
さらに、ゲンゴロウブナが移入された茨城県の霞ヶ浦では、かつて「オウミブナ」と呼ばれていた時期もありました。これは、滋賀県の旧国名「近江(おうみ)」にちなんでおり、移入元を意識した呼び名と考えられます。
霞ヶ浦では「カワチブナ」とともに、この「オウミブナ」という呼称も一時的に使われていたようです。

こうしてみるとゲンゴロウブナは、
人々の暮らしや文化と深く結びついた名前が多いですね

その呼び名には歴史と物語が込められており、
単なる魚の名前以上の魅力があります。
ニゴロブナの語源と地方名

漢字表記:似五郎鮒
標準和名:ニゴロブナ(Nigorobuna)
【由来・語源】

「ニゴロブナ」という名前は、滋賀県・琵琶湖周辺で使われてきた呼び名です。
その語源は、同じく琵琶湖に生息する「ゲンゴロウブナ(源五郎鮒)」に姿が似ていることに由来します。

ゲンゴロウブナに似ていることから
「似た源五郎鮒」→「似五郎鮒(ニゴロブナ)」と呼ばれるようになったとされ、
名前の中には見た目の印象と地域の文化が反映されています。
【ニゴロブナの地方名・別名】
ニゴロブナは、琵琶湖周辺の地域、とくに滋賀県長浜市菅浦のような集落で、さまざまな呼び名で親しまれてきました。
これらの地方名は、その土地に根ざした暮らしや漁業文化の中で育まれたものです。
イオ(魚)

たとえば、「イオ」という呼び方は、菅浦などの集落で最も一般的だった古い名称の一つです。また、漁の時期や見た目の違いによって、さらに細かく名前が変わることもあります。
また、寿司に使うことを目的としたものは「スシイオ(寿司魚)」と呼ばれ、発酵させたなれずし(鮒ずし)の材料として珍重されてきました。
テリブナ、ヒデリブナ、アメブナ
「テリブナ」や「ヒデリブナ」、「アメブナ」といった名前は、魚の採れた天候や状態、時期などに応じた分類名として用いられていました。
晴れた日に採れたものは「ヒデリブナ(干出り鮒)」、雨天時のものは「アメブナ(雨鮒)」、照りつける日の魚は「テリブナ(照り鮒)」といった具合です。
小型な個体の呼び方
このほか、小ぶりな個体を指して「マルブナ(丸鮒)」と呼ぶこともあり、さらに地域によっては「ガンゾ」という独特な名前も使われています。
これらの呼び名は、2014年に滋賀県長浜市が実施した「菅浦の湖岸集落景観保存調査」にも記録されており、伝統的な湖岸集落における暮らしと密接に結びついていたことがわかります。

ニゴロブナは魚の分類を超えて、
地域の生活文化や言語、食文化と深く関わっていますね。

とくに鮒ずしの原料として有名であり、
滋賀県の食文化を支えてきた存在です。
名前のひとつひとつに、琵琶湖と共に生きてきた人々の知恵と記憶が込められているのです。
まとめ

なるほど、ゲンゴロウブナもニゴロブナも、地域の歴史や生活と深く関わっていたんですね。魚の名前って奥が深いなあ。

そうですね。
魚の名前ひとつにも、その土地の人々の暮らしや文化がにじんでいるんだ。だから、ただの「呼び名」じゃないんですよ。

また、他の魚の名前にもどんな意味があるのか調べたくなりました!
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