
今日は『氾濫原湿地と水田生態系ネットワーク』について説明します。
『氾濫原湿地』と呼ばれる場所は、生き物たちにとって大事な場所なんですよ。

氾濫原湿地って聞いたことないです。でも、どうしてそんなに大事なんですか?

氾濫原湿地は、雨で増えた川の水が陸地に広がってできた場所で、水温が上がりやすく、栄養が豊富なんです。
そのため、魚の赤ちゃんが育つのにとても良い場所なんですよ。
現在は、その代わりに田んぼが大きな役割を果たしてきたんです

田んぼが氾濫原の代わりになるんですか?詳しく教えてください
氾濫原湿地とは

日本の中流域から下流域にかけて、川の幅は広がり、水温も上昇し、川底の粒の大きさはだんだん小さくなっていきます。
さらに、大雨によって川の水量が増えると、普段は陸地だった場所も河川の一部となり、水が引いた後には平原のくぼ地に水たまりが残ることがあります。

このように、
陸と川の間にできる水域を「氾濫原湿地(はんらんげんしっち)」と呼びます。
氾濫原湿地は、多くの水生生物や陸上動物が行き交う重要な場所です。
特に、水温が上がりやすく栄養豊富な環境であるため、生産性が高く、稚魚が成長するのに適した場所として知られています。

また、川は本来、縦横無尽に流路を変えながら移動するもので、
その過程で取り残された川の跡地が「三日月湖」として残ることもあります。
氾濫原湿地と水田の関係

「氾濫原湿地」というと少し難しく感じるかもしれませんが、実は日本では「田んぼ」がその代わりとして機能してきました。
日本人は弥生時代以降、氾濫原の高い生産性を活かし、水田地帯として開発してきたのです。
特に従来の水田地帯では、農薬の使用がほとんどなく、水田・水路・ため池が互いに連結された「水田生態系ネットワーク」が存在していました。
このネットワークは、生物たちが自由に移動し繁殖できる環境を提供し、多様な生物種の生息地として重要な役割を果たしていました。
水田生態系ネットワークの役割と価値

水田やその周辺の水路、ため池などは「二次的自然」とも呼ばれる管理された環境です。
しかし、この環境は多くの希少な生物にとって重要な場所でもあります。
例えば、ウシモツゴやヒナモロコといった絶滅危惧種は、こうした水田生態系ネットワークの中でしか見られないことも少なくありません。
また、公共の水域や管理者の許可を得た場合には、水田や水路での観察を楽しむことができます。
そこでは、ゲンゴロウやタガメといった水生昆虫類、ヒルムシロやマツモといった水草など、さまざまな生物との出会いを楽しむことができます。
近代化による環境の変化

しかし、戦後の近代化に伴い、日本の農業は大きく変わりました。
高い生産効率や収益を求めて各地で圃場整備(ほじょうせいび)が進められ、水田生態系ネットワークのつながりは弱くなってしまいました。
さらに、農薬の使用も普及し、これによって多くの水生生物が姿を消してしまいました。

特に、生態系ネットワークが分断されたことで、魚や昆虫が自由に移動しにくくなり、生息環境が大きく制限されることになりました。
魚類と氾濫原湿地のつながり

日本の中下流域にある氾濫原湿地や水田生態系ネットワークは、コイやドジョウ、ナマズなど多くの魚類にとって重要な産卵場所や稚魚の成育場所です。
特に日本の梅雨の時期は河川の水量が増え、この時期に多くの魚が産卵を行います。
たとえば、天然記念物のアユモドキは、梅雨時に川から用水路を通って水田に遡上し産卵するという特異な生態を持っています。
しかし、圃場整備や開発によって、そのような産卵環境が失われ、アユモドキは絶滅の危機にさらされています。
氾濫原湿地と水田生態系を守るために
現在、日本では氾濫原湿地の減少や水田生態系ネットワークの分断が進んでいます。かつてのように多様な生物が行き交う環境を取り戻すためには、伝統的な水田の維持や水路の管理が重要です。また、農薬の使い方を見直したり、自然と共存する農業のあり方を考え直したりすることも大切です。
私たちが日常的に目にする田んぼや水路の中には、多くの生物たちが息づいています。

氾濫原湿地や水田生態系ネットワークを理解し、守っていくことで、日本の自然環境と生物多様性を次の世代へ引き継ぐことができるでしょう。
まとめ

といことで、今回は「氾濫原湿地」について解説していきました。
田んぼを自然に近づける取り組みも進んでいて、生物多様性を守る努力が続いています。

なるほど…。生き物たちのために、
これからどうすればいいか考えなきゃいけませんね。

その通りです。今回学んだ『氾濫原湿地と水田生態系ネットワーク』の重要性を覚えておくことが、自然を守る第一歩ですよ。


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