なぜフナは春に産卵するのか?水温と積算温度から見る繁殖のしくみ

魚類学
先生
先生

今日は「フナがなぜ春に産卵するのか?」解説していきます。
春になるとフナが浅瀬に集まって産卵するのを見たことがある人もいるかもしれませんね。

女の子
女の子

そういえば、水辺で魚がバシャバシャしているのを見たことがあります!
でも、なんで春に産卵するんですか?

先生
先生

それには水温や体の中のホルモン、卵の育ち方など、
いろいろな「からだのしくみ」が関係しているんです。

男の子
男の子

そうなんですね。
春の自然の中で、魚たちがどう生きているのか知りたいです!

水温が産卵開始に及ぼす刺激

フナ類は春になると水温の上昇に伴い、岸辺の浅瀬や水草のある場所に集まって産卵行動を開始します。

水温が10℃以下になるような冬の間はフナやコイは代謝が落ちて餌もほとんど食べず、不活発です。
やがて春が近づき、水温が10℃を超える頃になると活動が活発化し始めます。

特に水温が約15℃を上回る状態が数日続くことが産卵開始の引き金になると考えられています。

フナの産卵適水温はおよそ17〜20℃で、ちょうど春から初夏(4〜6月)の水温に当たります。実際、フナは自らの卵が孵化に適した水温を求めて行動し、水温がまだ15℃程度の棲息域からより水温の高い場所へ遡上して産卵することも観察されています。
例えば、水温15℃の湖から水温20℃近い川の浅瀬にフナが群れで移動し、水草やヨシに体を擦り付けるようにして産卵する「ハタキ」行動が確認されています。

先生
先生

このように春の水温上昇がフナにとって重要な産卵刺激となり、
産卵期が春に集中する大きな要因となっています。

卵の発生・孵化に必要な積算温度

フナの卵は水草や落ち葉などに粘着性の卵を産み付けられます。
卵の発生速度は水温に依存し、発生から孵化までに必要な時間は積算温度で表されます。


先生
先生

フナ類の魚卵は一般に積算温度100℃とされています。

男の子
男の子

温度が100℃?そんなの熱湯じゃないですか?

先生
先生

例えば、水温20.7℃程度であれば5日前後で孵化に至りますが、
計算式に当てはめるとこうなります。

100(℃)÷20(℃)=5(日)

女の子
女の子

割り算で孵化するまでの時間が計算できるんですね。なんだか面白い。

先生
先生

水温が高ければ発生は速まり、25℃では約4日ほどで孵化できます。
逆に水温が低ければ孵化までにより長い日数がかかり、15℃程度では約6~7日要する計算になりますね。

春に水温が15~20℃に上がるタイミングで産卵することにより、卵は適度な期間(数日程度)で孵化し、初夏までに稚魚が泳ぎ出ることができます。
このタイミングで孵化仔魚はプランクトンが豊富になる初夏の環境で餌を十分に摂取し、生き残りやすくなります。

また、冬の低水温下では卵の発生が極端に遅れることで、水カビ病などの発生リスクが高まり、卵が正常に孵化する可能性も低下していきます。春の適温下ではそうしたリスクも低減でき、フナの卵の発生・孵化にとって最適な積算温度を確保できます。

先生
先生

これが産卵時期が春に集中する一因となっています。

水温と生殖ホルモン・フナの代謝活動への影響

水温の変化はフナの内分泌系(生殖ホルモンの分泌)や代謝活動に大きな影響を与えます。

というのも、フナをはじめとする魚類は変温動物であり、冬の低水温期には新陳代謝が著しく低下して活動休止に近い状態になります。

この間、性腺の発達も停滞し、生殖ホルモンの分泌も抑制されています。

春になり水温が10℃を超えて上昇し始めると代謝が活発化し、性腺の成熟が加速します。
特に産卵適温の15〜20℃に近づくにつれ、脳下垂体から放出されるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が活性化し、それによって下垂体から卵巣刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)といった性腺刺激ホルモンの分泌が高まります。

また、春先に水温が上がることでフナは活発に摂餌を再開し、その栄養分を体の成長だけでなく卵などの繁殖へと振り向けることができます。

先生
先生


したがって、春の水温上昇はフナの代謝と内分泌の両面から繁殖を促し、
産卵期を春に集中させる要因となっています。

まとめ

先生
先生

さて、今回はフナが春に産卵する理由について学びましたね。
水温の上昇が体のしくみを変えて、卵の成長やホルモンの働きに影響を与えることがわかりましたね。

女の子
女の子

春の水のあたたかさが、フナの産卵の合図になるってことなんですね!
しかも、生まれた稚魚が初夏のごはんをしっかり食べられるようになるのも計算されてて、すごいです!

先生
先生

その通り。自然のしくみはとてもよくできていて、フナたちもそれに合わせて命をつないでいるんですよ。
これからも、生き物のふしぎを一緒に学んでいきましょう。

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