抽水植物とビオトープ|水辺の景観と生態系を支える植物たち

水辺学
先生
先生

今回は「ビオトープに欠かせない抽水植物」について解説していきます。
池や湿地を作るとき、水辺に生える植物ってとても大事なんですよ。

女の子
女の子

うん、よく見る細長い葉っぱの植物とか、
棒みたいな花があるやつ、きれいだなって思ってました!

先生
先生

実はそれらは「抽水植物」と呼ばれていて、水質をきれいにしたり、
生き物のすみかになったりする大事な役割を持っているんだよ。

ビオトープと抽水植物

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ビオトープとは、本来の意味では「野生生物の生息空間」を意味する言葉で、都市部や人工環境の中に自然を再現する試みのひとつとしても使われています。

先生
先生

池や湿地を中心としたビオトープづくりでは、
抽水植物(ちゅうすいしょくぶつ)が重要な役割を果たしています。

抽水植物

抽水植物とは、
根を水中や湿地に張りながら、茎や葉を水面より上に伸ばして成長する植物のことを指します。浄化機能や景観効果だけでなく、水生昆虫や鳥類の隠れ場所や産卵場としても生態系の維持に欠かせません。

ここでは、代表的な抽水植物をいくつかご紹介します。環境保全の観点から、大阪府レッドリストに掲載されている種についても言及しています。

イグサ(Juncus effusus)

開花時期:6〜9月
環境指標:大阪府レッドリスト・絶滅危惧Ⅰ種

細く真っすぐに伸びる姿が特徴のイグサは、古くから畳の材料として使われてきました。現在、畳に使われるのは「コヒゲ」という栽培用に改良された品種が多いですが、野生種のイグサもかつては水辺や湿地に広く見られました。

茎のように見える部分に花をつけるのが特徴で、近年では減少が著しく、保全が必要とされています。

ヒメガマ(Typha domingensis)

開花時期:6〜7月

池や沼などに群生し、水辺の景観を象徴する植物の一つです。細長い茎の先に、棒状の茶色い花穂(かすい)をつける姿で知られています。花粉は「蒲黄(ほおう)」と呼ばれ、古くは止血や利尿のための生薬としても利用されてきました。

他の動植物と共生する力も強く、ビオトープでは水質の浄化や生物の隠れ家として重宝されます。

ミクリ(Sparganium spp.)

開花時期:6〜9月
環境指標:大阪府レッドリスト・絶滅危惧Ⅰ種

湖沼や河川、水路などに群生する多年草で、果実が栗に似ていることから「実栗(ミクリ)」の名が付いています。トゲのある球状の果実は見た目にもユニークで、水辺に訪れた人の目を引きます。

環境の変化に弱く、各地で生育地が減っており、保護対象としても注目されています。

ハンゲショウ(Saururus chinensis)

開花時期:6〜8月
環境指標:大阪府レッドリスト・準絶滅危惧種

開花期になると、花のすぐ下の葉の一部が白く変化し、「半分だけお化粧をしたように見える」ことが名前の由来です。さらに、暦の上での「半夏生(はんげしょう/7月初旬)」の頃に花が咲くことも名前に関係しています。

静かな湿地に生育し、落ち着いた雰囲気を持つ美しい植物です。ビオトープに取り入れると、季節感を演出する存在になります。

ミソハギ(Lythrum anceps)

開花時期:6〜9月

日当たりの良い湿地や小川のほとりなどに群生し、鮮やかな赤紫色の花を穂状に多数つける美しい抽水植物です。特にお盆の時期(8月)に開花することから「ボンバナ(盆花)」とも呼ばれ、仏前に供えられる風習があります。

乾燥にもある程度耐性があり、ビオトープだけでなく庭園のアクセントとしても親しまれています。

ビオトープにおける抽水植物の重要性

抽水植物は、単なる観賞用の植物ではありません。根や茎が水中の栄養塩を吸収して水質を改善したり、水の流れを緩やかにして土壌の流出を防止したりする役割も果たしています。

さらに、トンボやカエルなどの水生生物にとっては、産卵場所や隠れ家となり、ビオトープ全体の生物多様性を支える基盤となります。

先生
先生

自然と人との共生を目指すビオトープづくりにおいて、抽水植物の存在は欠かせません。
地域の絶滅危惧種の保全にもつながるため、適切な種類選定と管理が求められます。

抽水植物とフナの関係

抽水植物はフナにとって欠かせない存在であり、隠れ家産卵場として重要な役割を果たします。

これらの植物は水中に根を張り、茎や葉を水面に伸ばすことで、水中と水上の両方に生き物の居場所を提供します。
フナは春の産卵期になると、抽水植物の根元や葉の裏側などに卵を産みつけます。

また、繁茂する葉や茎は稚魚の隠れ場所となり、外敵から身を守るシェルターの役割も担います。

先生
先生

このように、抽水植物はフナの繁殖や成長を支える水辺の基盤なのです。

まとめ

先生
先生

ということで今回は「抽水植物の種類とその役割」についてお話ししました。ビオトープでは目立たないけれど、とても重要な存在なんです。

女の子
女の子

ただの飾りかと思ってたけど、生き物を守ったり、水をきれいにしたりしてるんですね。
もっとじっくり観察してみたくなりました!

先生
先生

そう、それが自然と人とのつながりを感じる第一歩です。
水辺の植物たちがどんな役目をしているか、ぜひ目を向けてみてくださいね。

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