焼きふな
季節:春
場所:奈良県生駒郡斑鳩町
材料:ふな/醤油
奈良県生駒郡法隆寺村(現斑鳩町)岡本に住む方の家では、川や池、他の魚類も食事に利用している。
溜め池ではふな、こい、もろこが取れる。沢がにや、からす貝も取れる。こいやふなは煮物や焼き魚、こいのあらいやこいのおつゆ(味噌汁)、こい味噌(茹でたこいの身に味噌と砂糖を加えて練ったもの)にする。
ふなは番茶で煮ると臭みが取れる。
こいやふなは取れたときには食べずにいけすに入れて飼っておく。そうすることで泥を吐き、臭みを取ることもできる。はらわたを取り除く。金串を打ち、七輪の炭火で、醤油の付け焼きにする。
フナのしそ煮
季節:夏
場所:熊本県阿蘇郡阿蘇町
材料:ふな/しその葉/醤油/砂糖/酢
田植えが済み、畑にとうきびを植え、あぜに大豆や小豆を植え終わると農作業も一段落し、一息つく。作物の手入れの合間に川魚取りが始まるのもこの頃である。
フナは小川の浅瀬に多く網や笊で掬って採る。たくさん取れた小ぶなは、おかずの佃煮として仕上がることが多い。
夏場に畑に勝手に生えている青しその葉を取り、良く洗って水気を切り、鉄鍋の底に敷き、小鮒のはらわたを出したものを上に乗せ、醤油と砂糖を少々いれ、さらに酢を入れてぐつぐつとゆっくり煮汁がなくなるまで炊く。
酢が入っているので骨まで柔らかくなり、醤油の塩分で身がしまり、形が崩れることなく、しその香りと調和のすぐれた佃煮が出来上がる。
朝夕のおかずに、また焼酎の肴に、農家にとっては格別のご馳走である。
ふなの煮もの
季節:秋 場所:岐阜県海津郡海津町 材料:ふな/醤油/砂糖
祭りのごちそうとしてよく作られる。ふなのうろこと内臓をとり、醤油味の甘炊きにする。
秋祭りの前になると、かいどり(池や水路の水を落として魚をつかまえる事)などでとり、新鮮なフナを使う。
皿つきの料理であるため、、見た目がきれいになるように仕上げねばならない。煮崩れさせないコツは、汁がよく煮立ってからふなを入れて、弱火で煮ることである。身に味がしみわたればそれで完成。
ふなの松笠煮
季節:秋 場所:島根県松江市西浜佐陀町 材料:ふな、こい/番茶/醤油/酒/砂糖/しょうが
結婚式をはじめ、お祝い事などの晴れ日に大きなふなやこいを使って作る。ふなの内臓を抜いてきれいに洗い、うろこ一枚一枚の付け根に包丁をいれ、煮たときにうろこが立つようにする。このうろこの様子が松笠に似ているところから松笠煮と呼ばれる。作り方はこいの場合も同じである。
番茶を大鍋で煮出し、魚が浮くらいの番茶汁を作る。これを醤油、砂糖、酒で調味し、魚を入れ、一昼夜煮る。煮あがったら冷ましてから大皿に盛り、千切りしょうがかおろししょうがを添える。盛り付けを客に披露したあとさらにとりわけ、しょうがを添えて客に渡す。
番茶で長時間にてあるから骨もうろこも食べられる。代表的なご馳走の一つである。
ふなのこぐい
季節:秋 場所:佐賀県佐賀市兵庫町 材料:ふな/大根、こんにゃく/昆布/大根の葉/味噌/あめ
おくんち(式神の祭り)や堀干しのあとに作る。大きな鍋に、大根を大きく切って底に並べておく。こんにゃくを置くこともある。その上にふなを乗せる。
ふなはうろこを取り、あごのところの苦味がある胆のうを取り、昆布を巻いて一晩ゆる火で炊く。昆布は巻かないときもある。
ふなを炊くときはなまだいを入れてふなの上に大根の葉をのせ、ある程度にえてから、あまがた(水飴を煮詰めた固い飴)10個くらい入れる。
なまだいは、黒っぽくなった三年味噌の赤味噌に水を入れて炊き、袋に入れて布でこしたものいで、ざるに入れて押し出していくとすんだ汁が出る。これを味付けに使う。
あまがたは赤味噌と相性がよく砂糖を使うよりもこくが出るし、ふなの生臭みも消す。
こぐいは味も薄味にたっぷり作る。二段も三段も重ねて、なまだいの汁を注ぎ足しながら、わらの炊きもんを使ってとろ火で炊く。
「いり目の出ー目のひっこい目」になるまで炊くと(不なので目が引っ込むくらい長く炊くと)、骨まで柔らかくなって口の中でとろけるようになる。
底に敷いた大根も柔らかく、味噌の風味がしみている。水芋(サトイモの一種で茎を食べる)の親芋も一緒に入れて時間をかけて炊くと、こくんこくんとした舌ざわりで、結構柔らかくなる。
ふなの刺身・あらい・背切り
長崎県の場合
季節:秋 場所:長崎県北高来郡森山町 材料:ふな/酢味噌/はすいも
長崎県のほぼ中央に位置する平野には干拓水田が広がっている。干拓水田の水路は掘割とかクリークと呼ばれ、こい、ふな、ナマズの住処である。
水落としをした掘割で取れたふなは、湧き水のあるところですぐ洗い、土手で背切りして用意した酢味噌に付けて食べる。
あぜのふちには、はすいも(茎を食べるサトイモの一種)があれば、茎をとって皮をむき斜めにうす切りして一緒にあえて食べる
ふなの大きいのは三枚におろし、刺身にしたり、冷たい水にさらしてあらいにしたりするが、どちらも味噌を添えると川魚の臭みが気にならない。
滋賀県の場合
季節:冬
場所:滋賀県東浅井郡びわ町
材料:ふな/大根/わさび/醤油
ふなのうろこをはぎ、頭、はらわたを取り、三枚におろす。
皮を薄くして削ぎ切りにし、わさび醤油で食べる大根の薄切りを水にさらし、ぱりっとした所を添える。
新鮮なふなが捕れるので、晴れの日にはよく食べる。
小さいふなは、「どがねなます」といって、細かい骨ごとぶつ切りにして酢味噌で食べる。ふなやこいなど魚料理はたいてい男が受け持つ。男達の包丁裁きは見事である。
ふなのなます
季節:冬 場所:茨城県稲敷郡桜川村 材料:ふな/豆腐/酢/砂糖/塩
ふなのなますは「これができなければ浮島もんではない」といわれるくらい、霞ヶ浦に近い浮島独特の料理である。
まず、五寸以上のふなを三枚におろし、小骨を取る。小骨は直角に切ってからとる。そうすると残った小骨が短くなる。
この切り方が大事で、間違えると小骨が多くて食べられない場合がある。切り終えたら、こいの「あらい」のように水でさらし、酢で締める。そして、豆腐をすり鉢ですり、酢と砂糖、塩で味付けしてふなをあえるのである。
ふなのなますは主に冬の料理であるが、祭りや神事には作られている。
季節:冬
場所:大分県宇佐市赤尾
材料:ふな/大根/にんじん/酢/砂糖、塩/醤油
ふなやこいは、寒くなってからのほうが身がしまっていてうまい。大きなふなやこいが取れたときには家のそばに池に生かしておき、暮れや正月のときに使う。
ふなはうろこを取り、三枚におろし、細切りにして薄く塩をしておく。しばらくおいてから、ふながつかるほどの酢をかけ、なじむまでそのままにする。
大根とにんじんを千切りにし、薄く塩をして押しておく。なじんだころあいを見計らって、大根とにんじんをよくしぼり、ふなの酢漬けと合わせる。砂糖と少しの醤油で味を調える。
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