学名:Carassius auratus auratus
概要
種としては確立されないが、まれに個体確認することがあるので記載する。一般的には金魚すくい等の養殖された金魚が何らかの原因で河川に生息し、野生化した個体である。大抵の場合に野生化した原因は、金魚の飼い主が河川に放流した個体が在来種との交雑し、そのF1個体が野生化したという場合である。
金魚は体色が保護色でない派手な赤や黄色であることが多いが、この場合は在来個体との掛け合わせにより、体色が通常のフナ色をしていることが多い。(これは、金魚の赤い体色の遺伝子が劣勢遺伝のためであると考えられる。)
また、尾鰭が長い個体(流金やコメットが交配下であると考えられる。)と尾鰭が短い個体(交配下が和金であると考えられる。)の2種類が確認されており、前者の場合は尾鰭の長さが長いため、通常のフナとの分類が容易に行える。
しかし、後者の場合は相違点がほかのフナと多くなく分類が非常に困難である。
生態は他のC.auratusのフナ類と大差ない。(それ以前に親である金魚が野生で生存している事自体以上でもあるが)金魚の種名はC.auratusであるが、近年、金魚の起源が中国大陸に生息するギベリオブナC.giblioであることが判明しており、日本の在来種と交配すると遺伝の多様性に影響が生じてしまうため、あまりよろしくない。できることなら金魚を河川に放流することは考えたほうがよいだろう。
コメント
ヒブナの棲む沼で30センチ前後のフナを捕獲したことがあります。
2011年にこのフナの鰭を東大大気海洋研の高田未来美さんに送って鑑定してもらったところ「大陸のフナ」との回答がありました。
沼にはギンブナ、ヒブナ(白色が過半数)が棲息しています。
ギンブナは体長が25センチ止まり体高が低く細い体色がやや銀白色。
大陸のフナは30センチ前後で体高が高く黒っぽいです。
数十年、人が入らない沼ですから金魚の先祖返りと思われます。
必要があれば画像を送ります。
30センチ前後の体高が高く黒っぽい個体、確かに金魚の先祖返りや大陸起源のフナを想起させる特徴ですね。東大の高田先生による「大陸のフナ」との鑑定も非常に興味深いです。
ヒブナやギンブナが棲む、長年人の手が入らない沼という環境からも、自然な形での遺伝的多様性が残っている可能性がありますね。
実は、近年の研究によると、ギンブナはもともと日本在来の魚ではなく、約1万年以上前の氷河期に大陸から渡ってきたと考えられています。
そして現在の日本各地に広がった背景には、クローン増殖だけでなく、日本にいた他のフナとの交配を通じて多様な遺伝子を取り込んできた歴史があることもわかってきました。
もし画像がありましたら、ぜひ拝見させていただければうれしいです。外見的な特徴と合わせて、地域のフナ相を知る手がかりになるかもしれません。