
今回は「広島もとまち水族館の展示デザイン」について解説していきます。
ここは広島市内のビルにある魅力的な水族館です。

ビルの中ってことは大きな水槽とかは置けませんよね。
水族館の魅力は、大きな水槽や珍しい生き物によって決まるのではないのですか?

それだけではありません。
背景や照明、植物、水槽台などを含め、空間全体をどのように整えるかによって、
小さな水槽や身近な魚も魅力的に見せられます。

水槽の中だけでなく、周囲の空間にも注目すると、
展示の意図が見えてきそうですね。

この記事を読めば「身近な魚や小さな水槽を魅力的に見せる方法」
がわかるようになるでしょう。それでは授業を始めます。
「何を飼うか」だけでなく「どう見せるか」が重要
一般的な水族館では、珍しい魚、大型魚、色鮮やかな魚が展示の中心になりやすいものです。
しかし、魚そのものの珍しさだけに頼ると、フナやカワムツなどの身近な淡水魚は地味に見えることがあります。

生き物の価値を魚種の珍しさだけはありません。
「生息環境」、「植物との関係」、「日本文化」、「静寂」
このようなテーマを与えることで、魚を見る体験そのものをつくっています。
Forest|人工物を隠し、河川環境を見せる

「Forest」では、日本の河川上流と中流を再現した水槽が展示されています。
上流にはゴギ、中流にはカワムツが泳ぎ、それぞれの魚が暮らす環境の違いを観察できます。




特に印象に残ったのは、水槽の仕切りや縁、濾過設備といった人工物を、
フェイクグリーンによって目立たなくしている点です。
さらに、給水部分から水だけでなくミストが噴き出し、水面付近には薄い霧が漂っていました。
水槽上部に現れやすい人工的な境界が曖昧になり、水中から水辺、森へと風景がつながって見えます。

生態展示では、自然物を増やすことだけが重要なのではありません。
人工物の存在感を弱め、観覧者が環境へ意識を向けられるようにすることも大切です。
展示する魚の選び方も風景を左右する



ここで大事なのはForestで展示されていたゴギやカワムツは、
美しい体色やヒレ、模様を持ち、日本の川らしさと水槽内での見栄えを両立した魚であることです。
身近な淡水魚を地域性だけで選ぶと、展示が単調に見えることがあります。
しかし、体形や体色、泳ぐ位置、群れ方を考え、テーマに合う魚を組み合わせれば、
見過ごされがちな日本淡水魚の魅力を引き出せます。

残念ですが、
ここの展示魚がフナだったらこうはなっていない気がしますね。

自然環境の再現と、鑑賞展示としての美しさを両立した貴重な例ですね。
森の研究所|生き物の関係そのものを展示する


Forestのエリアには「森の研究所」というコーナーがあり、
生体の特徴を解説しつつ、ラボのような雰囲気で展示をまとめています。

個人的にはここの壁面に研究所やアクア用品のトンマナを飾っている光景
がすごく魅力的で好きです。
アクアポニックス水槽


そんな「森の研究所」でも特筆すべき展示としては
水槽の水を利用して植物を育てるアクアポニックス展示です。
ここの水槽ではカネヒラやヌマムツなどの日本淡水魚が泳ぎ、
その上ではミニトマトやキュウリが育てられていました。
アクアポニックス展示では、養殖魚と葉物野菜を組み合わせたり、
観葉植物の根を水槽へ伸ばしたりする形式がよく見られます。



ここでは日本淡水魚と身近な野菜を組み合わせ、
環境技術の紹介と水族館らしい鑑賞性を両立させていました。
魚を単独で展示するのではなく、水、栄養、植物の成長まで見せることで、
生き物同士のつながりを展示テーマにできます。
水槽の外側もレイアウトの一部になる

奥の壁に3つ並ぶ熱帯魚水槽では、
水中だけでなく水槽上部にも熱帯植物が植栽されていました。
水中には色鮮やかな熱帯魚と水草があり、陸上部分にも存在感のある植物があります。
水槽の上へ植物を少し添える程度ではなく、水中と陸上の両方を主役として扱っている点が特徴です。

ここの展示はパンフレットの表紙を飾るほど人気な水槽の一つです。
本来ならば華やかな要素を重ねれば、情報過多でハレのプレッシャーが圧迫してきます。
しかし、ここでは
- 水槽周辺をの照明を暗くする
- 天井、床、水槽台の色を統一する
これによる植物と水槽だけが浮かび上がるように見えます。

華やかなものを増やす場合は、それ以外の情報を抑える。
このバランスが、水槽を空間の中で際立たせています。
White|引き算によって水槽を作品へ変える

「White」は、水槽以外の空間を白で統一した展示です。
装飾や色彩を極端に減らした空間に水槽が配置され、美術館で作品を鑑賞しているような静けさがありました。
これは、水槽という「ハレ」の要素をより強調するために、
周囲の情報を徹底して減らした展示と考えられます。
先ほどの熱帯植物の展示のある熱帯魚水槽もハレ要素の考慮に長けた水槽でしたが、
こちらもすごいですね。

一方で、白さと静けさを突き詰めた結果、
一般的な水族館とは異なる「強い違和感」も生まれていました。
いわゆる「リミナルスペース」と言いましょうか。

近くにいた子どもが「エスケープザバックルームみたい」
と表現していたのが印象的でした。
引き算は水槽を際立たせますが、
やりすぎると、人を遠ざける緊張感にもなります。

展示には作品性だけでなく、入りやすさや居心地も必要なのでしょう。
海の花鳥風月|生態ではなく文化から魚を見せる




「海の花鳥風月」は、切り絵や鮮やかな背景、球体水槽を用いた華やかな空間です。
背景と展示魚を「花鳥風月」というテーマで結びつけ、空間全体を一つの作品として構成しています。
自然環境を再現する生態展示ではなく、
日本人が自然に見いだしてきた美しさを表現する文化展示といえるでしょう。
魚も作品を構成する要素として扱われていますが、
背景や装飾との調和、生き物への配慮が感じられます。

アートアクアリウムのような尖った演出とは異なる、
雅で穏やかな魅力を持つ展示でした。
Zipangu|横から鑑賞することを前提に魚を選ぶ




「Zipangu」では、金魚や錦鯉を通して、日本らしい華やかさが表現されています。
特に錦鯉には、ドイツゴイやヒレナガニシキゴイなど、
水槽越しに鑑賞しても特徴が分かりやすい個体が選ばれていました。
池の上から見ることを前提に発展してきた錦鯉も、
品種や個体を選べば水槽展示で魅力を発揮できます。

展示する場所や見る角度に合わせて魚を選ぶことも、水槽デザインの重要な要素です。
生き物を飾るのではなく、生き物を中心に空間をつくる



広島もとまち水族館は、「次元の違うアートアクアリウム」だと感じました。
その魅力は華やかさだけではなく、水や生き物の営み、自然、文化を空間全体で表現している点にあります。
テーマは「好奇心」と「きっかけ」。
個性的な展示が好奇心を刺激し、生き物を好きになり、深く学ぶきっかけを生み出します。

アミューズメント性の高い水族館を敬遠しがちな私も、
ここには来館者が「推し」の魚と出会うための希望があると感じました。
私だったらアクアポニックス水槽の展示にフナを入れるのが一番違和感が少ないと考えます。
「アクアポニックス」という一つのテーマが「Wowオブジェクト」として注目されがちなので、
フナがいる水槽として全体の雰囲気を整えれば素敵な水槽になると思います。
まとめ|小さな水槽にも特別な景色をつくれる
| 展示 | 魅せ方の特徴 | 展示論として得られる考え方 |
|---|---|---|
| Forest | 河川環境、フェイクグリーン、霧 | 人工的な境界を隠して環境を見せる |
| 森の研究所 | 日本淡水魚と野菜のアクアポニックス | 生き物同士の関係を展示にする |
| 熱帯魚水槽 | 水中と陸上の植栽 | 水槽の外側まで風景として設計する |
| White | 白一色の静かな空間 | 周囲の情報を減らして水槽を際立たせる |
| 海の花鳥風月・Zipangu | 日本文化と魚の組み合わせ | 生態だけでなく文化から魚を見せる |

ということで、今回は「広島もとまち水族館の展示デザイン」について解説していきました。
水槽の魅力は、生き物だけでなく、照明や背景、植物などを含めた空間全体によって生み出されます。

大きな水槽の展示でなくても、
人工物を隠したり周囲の色を整えたりすることで、
記憶に残る特別な展示にできるのですね。

フナはいなくて残念でしたが、
得られるものがたくさんある魅力的な水族館でした。

そのとおりです。水族館の展示をそのまま再現することは難しくても、
何を見せ、何を隠すのかという考え方は、家庭の水槽にも取り入れられます。
それでは今日の授業はこれで終わりです。また次の記事でお会いしましょう。
施設情報
- 施設名
広島もとまち水族館 - 住所
〒730-0011 広島県広島市中区基町6-78 基町クレド・パセーラ7階 - 電話番号
082-221-0550(受付時間10:00~19:00) - 公式サイト
広島もとまち水族館 - 営業時間
10:00~19:00(最終入館18:30) - 休館日
原則なし。ただし、館内メンテナンス時や基町クレド・パセーラの休館日は休館する場合があります。 - 入館料
大人(中学生以上)2,000円、小学生1,200円、幼児(3歳以上)は大人1人につき1人無料、2人目から500円
アクセス
- 公共交通機関
アストラムライン「県庁前駅」から地下通路で直結。広島電鉄「紙屋町西電停」または「紙屋町東電停」から徒歩約3分。路線バス「紙屋町」停留所から徒歩約3分。広島バスセンターからパセーラへ直結しています。 - 自家用車
もとまちパーキングアクセスの地下道から「基町クレドパーキング」へ入庫します。土曜日、日曜日、祝日は周辺道路や駐車場の混雑、入庫規制に注意してください。 - 駐車場
基町クレドパーキングを利用できます。収容台数536台、営業時間7:30~24:30(入場は23:00まで)、料金は30分250円です。水族館の入場者は1時間無料サービスを受けられます。入場時に駐車券へスタンプを受け、パセーラ1階インフォメーションで割引処理が必要です。無料サービスは基町クレドパーキングのみ対象です。
アクセス・駐車場の案内はこちらから


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