今回は水族館における「飼育水の確保」について淡水魚水族館メインでお話します。
水族館としては切っても離せない飼育水。
多くの場合はどのような方法で調達しているのでしょうか、一緒に見ていきましょう。
飼育水について
飼育水は魚を飼育する上で最重要で、我々の人間にとって空気のようなものです。
空気が悪ければ、肺や喉を壊し、健康を阻害することもありますよね。
生きる上でそして成長をしていく上でもこの質は非常に考慮しないといけません。
フナをはじめとする淡水魚である魚の飼育、展示の飼育水としては当然淡水の確保が必要不可欠ですね。
飼育水の確保する手段は
- 川や湖の水を取水する。
- 井戸水や湧き水を使用する。
- 水道水を使用する。
という3つの方法に分けられます。
今回はこれら方法を採用している水族館についてそれぞれの仕組みを見ていきましょう。
川や湖の水を使用する(琵琶湖博物館の場合)
川や湖の水を直接取水している水族館として、琵琶湖博物館などが挙げられます。そこでは琵琶湖の湖水を直接水族館に引いて使用されています。
水族館が建つ場所から50~60m先に取水棟を設置しているので、1年を通じて安定した水質を確保ができています。
この水族館では濾過循環式を採用していますので、飼育水は濾過して使いまわしてはいますが、水槽の掃除などで減った分、湖水を補充しています。
その為、かなりの規模の水族館にも関わらず、1日の取水量も平均で60t程だといいます。
多いようにも少ないようにもとらえられますが、実際に水槽を見たりすると濾過能力の高さが伺えますね。
また、天候によって水質が左右されるので常に琵琶湖の水が使えるわけではないので、悪天候で湖の水が濁った場合には、やはり水道水に中和して使用しているそうです。
井戸水や湧水を使用する(須磨水族館の場合)
井戸水を使用している水族館としては兵庫県にある大型水族館である須磨水族館があげられます。
園内にある深さ100mの深井戸と、深さ8mの浅井戸から水を汲み上げてそれぞれをミックスして使用しています。
複数使用しているのはリスク分散でしょうか、深井戸は水質が安定していますが、水温が低そうですしので混ぜて使用しているのだと考えられます。
ここの水族館も大型水槽が多いですし、規模もかなり大きいので飼育水の管理が大変そうですね。
水道水を使用する(サンシャイン水族館の場合)
水道水を主体で使用している水族館としては東京都池袋にあるサンシャイン水族館があげられます。
サンシャインは東京都心11階建てのビルの屋上にある水族館であり、地下からくみ上げた水道水を30L貯めておくタンクもあります。
東京都の水道水には塩素が含まれているため、チオ硫酸ナトリウムを入れて塩素を中和しなければいけませんが、それでも天候によって水質が左右される河川や湖沼に比べて水質が安定しているのがメリットですね。
ただ、人工的な水ということもあって、トラブルもつきものであり、以前は飼育水に規定以上の薬品が入っていたということもあって水槽の大半の魚が死滅してしまったという事件もありました。
管理面からしたら、一概に良いとはいえませんね。
水道代が掛かるため、サンシャイン水族館では使用される水道水は1日で20t。一説によるとその水道代は東京全体でもかなり高いです。大都心に水族館を構えるのはそれだけ大変なのですね。
汽水での飼育水(ゴビウスの場合)
淡水でも海水でもない汽水での飼育を行なっている水族館も存在します。それが島根県にあるゴビウスです。
ここでは海水と淡水が混じりあった汽水環境の魚の展示をしているため、水槽に使用されている飼育水はどれも汽水を使用しています。
さらには水槽によって塩分濃度が違うので、生息している生物に合わせた飼育展示を徹底していると感じます。そのためか、展示個体はどれも元気なのが非常に見て取れますね。
好適環境水
おまけとして、好適環境水についても軽く触れておきましょう。
好適環境は淡水魚と海水魚が生育に対して必要な成分が入った水であり、この水を使用することで、淡水魚のフナと海水魚のアジを混泳させることができます。
水質も安定しやすく、生物の成長にも貢献できるので、近年は養殖事業にも使用されている飼育水であります。
しかし、水に環境水の素を溶かして使用するという使用のため、コストが当然のようにかかります。
大型の水槽での使用は正直難しいかなと思うのが私の現段階の考え方となっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか、水族館の命でもある水の管理は意外と複雑なんですね。
こうしてみると大量の水のありがたさを感じますね。
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