【魚名学】フナの学名と種名の由来

生物学
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ここでは、フナ属魚類に確立されている種の学名と英名についての由来について記していきます。

論文を読んでいると20以上の学名が存在しているが、実際に存在するフナ属魚類はわずか3(4)種しかいないです。

一見すると少なく感じるが、大半は種よりも亜種という形で記載されていることが多いです。

ヨーロピアンブナ  carassius

イメージ:写真はキンブナです

フナ属魚類の中で初めて種として記載された種類であるヨーロピアンブナ。
本種の種小名である「carassius」がフナ属の属名となっています。主に欧州に生息していて、日本には生息していない種類ですね。

 Carassiusとは、フナ類の英名である”crucian carp”からきており、フナを表しています。
また、フランス語での”carassin(鯉)”を表しているとも言われています。

英名の”crucian carp”は、(米領バージン諸島の)”St,Croixの人”という意味があります。
croixはもともと”croces”というフランス語で”crucian”に近い単語に”croces”というのがあり、「cruxの複数形」になります。
”crux”もまた”cross”とほぼ同様の言葉で結合してあると考えられると、”crucian”というのは、”crux”+”‐ian”なのではないかと考えられます。

”crux”は「最も重要」や「十字」という意味があり、cruxをcrossと置き換えると、「交雑する」という意味になります。

コイの「common carp」(=ありふれた/一般的な)に対応していると考えられていますが、
現状、詳しいところは分かっていません。

ギベリオブナ  gibelio

※写真はギンブナ。形態はギンブナに類似しているとされている。

ヨーロッパからアジア北部に生息するフナであり、中国に複数生息している中国産フナ類もこの種にあたります。
遺伝子の染色体から金魚の祖先種であることが近年判明しています。

「家畜の裁定」により、家畜種(金魚)を同種として扱う場合は、この学名で記載されるます。

種小名のGibelioはドイツの科学者である「ギベル Dig Gibel」から由来しています。

英名は”Prussian carp”であり、”prussian”とは、プロイセン(ドイツのプロイセン地方)を指しているのではないかと考えられ、和訳すると「プロイセンの鯉」と読めますね。

ゲンゴロウブナ  cvieri

ゲンゴロウブナ(自宅の水槽にて撮影)


 日本の琵琶湖に生息する日本固有種であるゲンゴロウブナですが、本種は日本産のフナ類で唯一、種として確立しています。

種小名Cuvieriとは、フランスの動物学者「キュヴィエ Georges cuvier(1769-1832)」から由来しています。

英名は”Deep bodeied crucian carp”といます。(Crucian carpはヨーロッパブナを参照)

”Deep bodeied”は、「大きな、深い体」を表しており、他の種類と比較して体高比が高い種類であることを表しています。
主に釣りの対象魚である「箆鮒」をさしていることが多いですね。

東アジアに生息するフナ auratus

河川で泳いでいる金魚の事です。(写真:東京タワー水族館)


フナ(ヨーロッパブナ)同様に1758年にリンネが種として記載しており、一般的にはこの学名で表される種は、「キンギョ(C,auratus auratus)」にあたります。

ゲンゴロウブナ以外の日本産フナ類は全てこの種に当てはまり、非常に多数の亜種が存在しています。

種小名のAuratusとは、「黄金の」という意味があり、金魚を指していると考えられる。

英名は水産及び学術的には”crucian carp”で流通することも多いが、”wild gild fish”と呼ぶこともあります。

直訳すると「野生化金魚」である。
確かに種小名の”auratus”は金魚を表しているのだが、この呼び方は主にアメリカで言われることが多いです。しかし北アメリカ大陸にはフナ類は生息していません。
そのため、日本や中国から輸入されたgoldfish(金魚:観賞用)が唯一のフナ類であり、それの野生化個体に対して呼ばれたのではないかと考えられますね。

Carassus vulgaris

 種としては記載されてないが、外国の学術論文でよく目にするので載せておきます。

この種の定義は「野生の金魚(wild gold fish)に類似したヨーロッパ産のコイ」を指し、日本での「マブナ」や「雑魚」のような扱いをします。
種小名のvulgarisとは「庶民の、普通の、通常の」という意味の”valgar”からきています。

ちなみに、当サイトでは、こちらの学名は使用していません。

参考文献
BZN vol.60 : OPINION 2027 (Case 3010)

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