【実験学】実験用フナの飼育管理まとめ

水産学

実験用フナの入手方法

フナの採集方法には投網、巻網およびモンドリを用いるが、これらによって多獲することは難しく、多くの個体を必要とするときには漁業組合や養業者から入手することが良策だろう。養魚者からは受精卵、稚魚、親魚が入手できる。卵の輸送方法は、・・・

魚の輸送中に生じた魚体の損傷部は、細菌による疾病を引き起こしやすい。輸送中の用水にサルファ剤を溶かしておくとこれを防止することができる。

採卵用親魚

ゲンゴロウブナの採卵には3~5年の雌と2~4年の雄個体が用いられる。ゲンゴロウブナには追い星も出現しないので雌雄の判別はやや難しいが雄は産卵期間中精液を出すから放精の有無で区別できる。また、完熟卵をもつ雌は雄に比べ腹部が肥大する。

採卵は人工授精による方法と自然産卵にまかせて採る方法とがあり、前者の場合は完熟卵を持った雌と採精可能な雄が必要である。

実験用フナの飼育管理

ここでは、実験用としてみたフナの飼育管理について述べる。実験用に養成するため、最大限に良好な環境での飼育を行っているのだと考えられる。通常飼育と特に大差がないため、このまま飼育講座で使用しても好ましい。

仔稚魚の飼育管理

ゲンゴロウブナの仔魚は、孵化後3日目に餌をとるようになる。ゲンゴロウブナの初期餌料の大きさは200~300マイクロで、ミジンコ類を採餌するまでにはもう1段階小さな餌が必要で、ワムシ類が適する。ワムシやミジンコが初期餌料として優れているのはいうまでもないが、鶏卵黄。配合餌料などを与えても生育させることができる。

仔稚魚の給餌

これらを給仕すると歩溜りは低くなるが、飼育管理上の手間が省かれる。ミジンコを与える場合、鶏卵黄や配合飼料を5~7日間与えた後、ミューラーガーゼでこしたミジンコに切り替える。ミジンコの投餌量は仔魚1尾当たり1日50個体、稚魚1尾当たり80個体を目安にする。広い面積にわずかな尾数を飼育すると餌密度が低下するので、卵の収容時から稚仔魚の密度を考慮しておく必要がある。ミジンコの次の餌料には人工配合飼料(クランブル)を用いる。生餌を用いず、鶏卵黄や配合餌料を給餌する時は1日2回与える。

ガラス水槽における飼育では、これらを少量の水に溶いて沈殿したものをスポイトにとり、水槽の底に敷き詰める。餌は水槽に常時見られるように余分に与え、残った餌は次の投餌前に換水を兼ねてサイフォンで除去する。稚魚の餌料にはペレットを粉砕したものを用いるが、細かいほど溶質しやすく水質を早く悪化させるので口に合った粒状にとどめる。

稚仔魚の放養尾数は止水で平方メートル当たり仔魚300尾、稚魚100尾程度であり、エアレーションを施すとこれらの5倍近くを収容できる。

成魚の飼育管理

ゲンゴロウブナは2年で15cm、3年で20~25cmになる。したがって小型水槽におけるこれらの飼育は未成魚までが対象となり、成魚を室内飼育するには0.5、1tタンクが必要である。また、野外飼育では2平方メートル以上のものが望ましい。収容尾数は酸素の供給量、換水量などの条件により異なるが、エアレーションを施した60L水槽では1年魚10尾、2年魚数尾、0.5tタンクで30尾飼育できる。

成魚の給餌

給餌に際し、胃がないので食いだめができず少量に分けて数回に分けて行うのが望ましいが、実験用の成魚の飼育は養殖における場合とは異なり、成長促進を計るよりも魚体の正常な維持が目的であるため、適度に給餌を行うとよい。このことから投餌回数は毎日1回(12~2月)あるいは2,3回(3~11月)とし、給餌量は1回につき20~30分で食いつくす量とする。野外水槽で冬季水温が5℃以下となるときは給餌を控える。

使用する飼育水

卵管理から親魚養成に至るまで飼育用水には水道水、地下水、河川水などを用いる。水道水は十分に爆気するか、チオ硫酸ナトリウムによる中和または活性炭による塩素除去を行う。地下水、河川水を使用する場合、それらの水質が魚の飼育に適しているかどうか、また試験目的に対して適当なものであるかどうかを調べておく必要があるだろう。フナ類の飼育において溶存酸素量は3cc/L(4.3ppm)以上必要で、pHは6.7から8.6の範囲にあることが望ましい。

実験用金魚の繁殖

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繁殖

産卵期は4~6月で、1匹の雌は産卵期間中に数回産卵し、1回に3000個~4000個を産む。金魚の雌雄は外見からの判別が困難である。生殖孔の形で判別できるといわれているが、熟練を要する。

産卵期にはややはっきりしていて、雄の生殖孔は長楕円形で、雌は円形でやや突出している。産卵時期には、雄は鰓蓋や胸鰭付近に追い星ができ、雌を追うようになり、腹部を押すと精液を出す。雌は卵が成熟し、腹が膨らみ、産卵直前には腹を押すと黄色の熟卵を出す。


金魚の繁殖には、雌1尾につき雄2~3尾を入れて産卵させるが、実験用としては雌雄1匹ずつを用いて産卵させる。1つがいで産卵させると、不受精卵の割合が増して孵化する稚魚の数が減少するのみならず、混じっている死卵(不受精卵)に水生菌が付着して、十分に管理しないと卵を全滅させる恐れがある。

人工授精

産卵期の腹の大きい雌と追い星の出ている雄を別々の水槽に入れ、十分餌を与える。成熟した雌の腹を押すと熟卵を出す。これを容器にとり、雄から精子をとって混ぜる。数分後に水を入れて精液を洗い流す。受精卵を水に入れると、直ちに容器の底や壁などに付着する。

したがって水を入れる前に容器の大きさに応じた卵を入れる。その後、適当に水を交換しながら飼育する。人工受精をすると受精時期がはっきりしているため、受精直後からいろいろの発生時期を正確に揃えて実験に供することができる。

産卵の調節

すでに述べたように、金魚の産卵期は1年に1回である点から発生の実験には使いづらい点があった。近年、産卵直前に魚を低温室に移して飼育し、必要なときに温度を上げて(20℃位)産卵させる技術が開発された。この技術によって、長期間にわたって、卵を入手することができ、卵発生に関する実験が行いやすくなった。

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