飼料-はじめに
フナの餌として昔からミジンコ、イトミミズ、およびアカムシなどの天然飼料が用いられており、とくにミジンコは現在でも稚魚の生産に必須な飼料である。しかし、これらの天然飼料は繁殖地である場所の近郊化により年々減少しているため、入手が困難になっている。したがって、これを確保するには、水槽や人工の池を用いて独自で培養する必要がある。
一方、天然飼料に替わる餌として、配合飼料が存在する。配合飼料は各種の原料をバランスよく配合することにより、魚種独自の成長に適したものを作ることが可能である現在、フナの栄養要求性についてほとんど研究されていないが、市販のコイ用配合飼料で充分に飼育が可能である。
また、配合飼料は天然飼料の欠点である保存性の困難さ、および細菌や原生動物による汚染などの心配がないので、安心して使用できるが、給餌量が多すぎると水質悪化の原因となるので注意が必要である。
天然飼料
ワムシ(輪虫類)
ワムシは、ミジンコとともに淡水の動物プランクトンとして重要なもので、数多くの種類がある。天然では小さな水たまり、池及び湖沼などに発生し、養鰻池や金魚池ではときどき爆発的に繁殖して、いわゆる「水変わり」を起こす原因になる。大きさは普通100~300マイクロであるが、500~1500マイクロに達する種類もある。
従来からワムシはフナをはじめとする多くの魚の初期餌料として必須のものと考えられてきたが、ミジンコだけに充分に成長するので、ワムシはクロレラやクラミドモナスなどを摂食して繁殖するので、培養するのにはまずこれらの藻類を繁殖させる必要があるが、ミジンコ用酵母を用いても培養が可能である。しかし、淡水性のワムシは汽水性のものにくらべて、その増殖をコントロールすることが困難である。
ミジンコ
ワムシ同様にミジンコの種類も多数あるが、一般にフナ類の種苗生産に使用しているのは、タマミジンコとミジンコである。タマミジンコは小型であること、殻が柔らかいことおよび増殖速度が早いことなどの理由により、ミジンコよりも稚魚に適しているといえる。
アカムシ
アカムシはユスリカに総称であるが、金魚の餌として大量に培養するには世代の回転が早いこと、および小形であることなどを理由によりセスジユスリカ(以下単にユスリカと省略する)が最適である。
ユスリカの幼生は、泥中に生息してバクテリアや藻類を摂取して泥の表層にこれを排出する。メスは卵塊を池の壁面に産みつける。卵塊中には平均500粒の卵が含まれている。アカムシの卵の積算水温は900~1000℃であり、水温20℃の環境下では45~50時間で孵化する。
幼生は水底の泥の表層に生活する。幼生期間は水温と関係があり、水温が高いほど成長しやすく、成長に適した水温は20~25℃である。ユスリカ幼生の培養方法については、まだ産業的規模に確率されていないが、試験的規模では培養が可能である。
イトミミズ
イトミミズにも多数の種類があるが、金魚のえさとして適した大きさのミミズは、イトミミズ、ユリミミズ、エラミミズ、およびスエヒロミミズの4種である。
イトミミズ類は主に5~10cmの表層に生息し、泥の中の有機物や微生物を食べて繁殖する。繁殖方法は長さが灼く1mmの卵が入った紡錘状の袋を産み、この卵は20日後には孵化を始める。そして、孵化後約1ヶ月で体長3cmくらいに成長する。ただ、スエヒロミミズだけは、卵を産むことなく、分裂によって増殖する。これらのイトミミズについては研究者が長年研究されている。
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