餌料原料
餌料原料は魚の成長によく、長期にわたり、一定の品質のものが安定して入手できるものでなければならない。また、保存生がよく、価格も安定できることも必要である。
動物性原料
動物性原料は植物性原料に比べ、タンパク質の量が多く、生物物価も高いが、フィッシュミール以外のものは保存性が悪く、供給も不安定である。また、サナギのように脂肪を多量に含むものは、脂肪が酸化して魚に影響を及ぼすので注意する。
植物性原料
タンパク質が動物性原料と比べて少なく、炭水化物源やつなぎとして使用されることが多い。餌それぞれに特徴があって特徴を書きにくいが、特筆すべき点は供給量が安定し、保存性が良い点である。
油脂類
市販の配合飼料に油脂を添加して、魚の増重率を高めるようとする試みは、ここ数年かなり普及し、飼料用添加油脂に対する需要は増大している。飼料原料、特に多脂肪原料に含まれている油脂は、酸化変質を起こしている場合が多く、この酸化油による大量へい死は過去にしばしば問題とされてきたが、当時直前に良質の油を添加することにより、へい死の増大なしに多量の油脂を投与することができる。しかしながら、金魚の場合、投餌の主要目的は健康に飼育する必要はないであろう。
発酵工業製品
パイプ酵母やビール酵母はビタミンB群を多量に含み、乾燥物中に40~50%含まれているタンパク質も80%以上の消化率を示し、栄養的に優れた原料である。特にパイプ酵母は、最近の研究でコイにおいて魚粉の一部に代替できることがわかっている。
ビタミン剤・ミネラル剤
最近、飼料会社や製薬会社から種々のビタミン剤やミネラルを含む強化剤が売り出されているが、家畜向けに製造された物をなんら試験の裏づけなしに、養魚用にそのまま振り向けている場合もあるようである。これらの添加剤は現状では多くの場合有効ではあろうが、含有成分をよく調べておかなければ、実際には必要な成分が不足していたり、不要な物が入っていたりして採算が合わないことになる。
ビタミン剤の配合割合は金魚の場合、現在のところほとんど研究されていないので、コイの例を参考にする他ない。
ミネラル剤についても魚類ではとくに検討された例がない。家畜用の組成がそのまま採用されている場合が多い用である。
粘結剤
後述する粉末飼料では、水中における飼料成分の溶出を防止する目的で使用し、固形餌料の場合には粉の発生を防止するために使用される。一般に使用されて効果を上げる物は、CMC、a-澱粉、グルテン、ポリアクリル酸ソーダ、リグニスルフォン酸ソーダ、アルギン酸がある。これらの添加率は、ポリアクリル酸ソーダ、リグニスルフォン酸ソーダなどでは0.5~2.5%、a-澱粉、グルテンなどは5~20%の範囲が効率的である。
配合飼料
我が国で最初の研究が着手された養魚用配合飼料は、マス用飼料である。アメリカでは以前からサケ・マス類の養殖要求が研究されており、日本における養魚飼料の研究はほとんどの場合、アメリカにおける研究成果を元にして進められてきたといえる。
現在、各種の養殖魚に対して、種々の配合飼料が市販されており、その中にはマスやコイのように完全飼料といえるものがある。金魚用の配合飼料についての研究はこれまでほとんど行われていないが、コイ用飼料で十分に飼育できることがわかってきている。
配合飼料の形態には粉末と固形(ペレットとクランブル)があり、いずれも生餌料に比べて保存性がよく、給餌の労力が少なく、種々の栄養素や薬剤の添加も容易になるなどの利点がある。
配合餌料の組成と成分
我が国における配合飼料の組成では、魚粉が比較的多いのが特徴である。市販されているコイ用配合飼料では、マス用と比べて飼料中のタンパク質含量をすくなくしてある。これは、コイ科魚類は炭水化物の利用性が高いためである。
配合餌料の形態と特徴
粉末餌料
練り餌用で、稚魚用、成魚用などと使用目的に応じて配合割合を変えたものもある。ふつう、同量または2~3倍の温湯で練って使用するか、他の魚肉や内蔵と一緒に使用するのが一般的である。養魚家では、油や薬剤を適当に混入できるので具合が良いという。
固形餌料
ペレットはペレットミル(ペレット製造機)により粉末餌料を形成したものである。クランブルはペレットを砕いて適当な大きさに箱分けしたものであるペレットミルは直径2.5mm以下のものの製造に向いていないので、あらかじめ大きなペレットを作っておいてからクランブルに砕いている。
ペレットには種々の大きさのものがあり、普通養魚用としては直径2.5~8mm前後で、長さは直径1~2倍程度のものが多い。
クランブルには現在、マス、コイ、ハマチなどの稚魚用に使用されるほか、金魚は成魚に至るまで使用される用になってきた。(成魚の大きさがせいぜい数10gであるしクランブルで十分である)なお、クランブルは粉になりやすいので、取り扱いには注意を要する。
そのほかの形態としてはフレーク状の飼料や発泡浮上性飼料があり、ニシキゴイ、金魚、熱帯魚などの鑑賞魚の餌料として市販されている。フレーク状飼料は粉末に約2倍量の水を加えて練り合わせられたものをドラム・ドライヤーを用いて厚さ0.05mm前後の薄片としたものである。発泡浮上性餌料は粉末餌料に約20~50%の水を加えて練り合わせ、加圧、加熱することにより生成するもので、軽石餌料ともよばれる。
これらの餌料は適当な浮上性と水面拡散性を備えており、沈降時も水中滞留時間が長く、鑑賞魚の採餌に適した性質を持っているが、ペレットに比べて餌料の生産性が少なく、製造時におけるビタミンの破壊性が大きいなどの欠点がある。
固形餌料は固いので、消化の点で心配されるが、摂餌量が適正ならばペレットの方が練り餌より吸収されやすいように考えてある。その理由はペレットの吸水速度が練り餌より早いので、消化液の浸透も速やかであるとかんがえられることと、原料の粒子が細かく消化されやすいことである。ただし、ペレットを過食した場合には、消化管内で膨張して消化管の膨満やほかの臓器の圧迫などの悪影響を与える心配がある。
固形餌料を製造するときにどうしても熱を加えるので、ある程度の変質が起こり、そのために油脂の添加が限られている。ビタミンのうち、熱編成によりもっとも損失の大きいものはビタミンAで、次にビタミンCである。
一方、十分乾燥して1年間保存したときのビタミンBのはかなり安定していることが示されている。ペレットの水分が10%以上あると、カビが発生しやすいので、水分を10%以下とするか、プロピオン酸ナトリウムのような抗カビ剤が剤用されている。このほか、虫害を被りやすいので、注意する必要がある。
配合飼料ー動物性原料
フィッシュミール
魚全体または一部を蒸煮、乾燥して粉砕したものをフィッシュミールといい、水産物加工の廃棄物として得られるアラで作ったものをアラ粕と呼んでいる。フィッシュミールとブラウンフィッシュミールの2種がある。前者はカレイ、タラ、スケトウダラなどを原料として、近年アラスカ沖などで工船により大量生産されているので、北洋ミールともいわれている。ホワイトフィッシュミールは60%のタンパク質を含みアミノ酸のバランスがよく、消化率も高いので飼料原料として非常に優れている。
一方、ブラウンフィッシュミールはイワシやサンマなどのいわゆる赤身の多獲魚を原料としている。脂肪含量がホワイトフィッシュミールよりも多いのが特徴である。しかもその脂肪は高度不飽和脂肪酸を含み、酸化しやすく、コイ、アユなどでは背コケ病の発生原因となるので、多量に使用するのはよくない。
サナギ
サナギは乾燥物の場合、タンパク質を多く含有し安価で魚の成長がよいので、古くからコイやニジマスに使用してきた。しかし、脂肪を多量に含み、かなり変質しやすいのである。この悪変脂肪の投与によりニジマス、コイ、アユ、スッポンなどで種々の病害を生ずることがわかっているので、サナギを単用するのを避け、他の飼料やビタミンと混用することが望ましい。
イサザアミ
乾燥物中にもおおくのタンパク質を含み、古くから養魚飼料や釣り餌に使用されていたが、塩基態窒素を多量に含む場合が多く、脂肪の酸化も早いので、多用することは控えた方がよい。
脱脂粉乳
牛乳からクリームを分離した脱脂乳を乾燥したもので、脂肪量は少ないが、粗タンパク質、乳糖、粗灰分をふくみ、これらがすべて魚に吸収されやすい形になっている。ビタミンB群も豊富であるが乳糖が多いので、多量に使用しない方がよい。
配合飼料-植物原料
小麦粉
タンパク質があまり含まれておらず、リジンやメチオニンなどの必須アミノ酸が少ないので、炭水化物源およびつなぎとして使用される。
小麦粉は色の白い順に一等粉、二等粉、三等粉、末粉に分けられ、飼料原料としては価格の安い三等粉、末粉などが使用される。
米ぬか、フスマ
米や麦を精製するときに除去される果皮、種皮、外胚皮および澱粉層を混ぜたもので、タンパク質含量は小麦粉同様に低い。炭水化物や繊維が多く、これらの給源となる。また、ビタミンB群やリン、マンガンなどのミネラルも多く含んでいるので、これらの安価な給源としても利用される。ただし、米ぬか粗脂肪を多く含み、貯蔵中に悪変しやすいので、新しいものを使用すべきである。
大豆粕
抽出粕と圧搾粕に分けられ、飼料原料としては前者が、主に使用される。圧搾粕はタンパク質含量が低く、脂肪含量は高い。抽出粕はタンパク質含量が圧搾粕と比べて高く、脂肪含量は低い。大豆タンパク質の魚における消火率は良好であるが、リジンやメチオニンが制限アミノ酸となりフィッシュミールに比べて生物価が低い。また、抽出粕にはトリプシン抑制物質が含まれているので、消火率を高めるのには加熱を用いるのがよい。
その他の油粕類
大豆粕以外の粕としては綿実粕、あまに粕、なたね粕、落花生粕などがある。これらの油粕にはタンパク質を多く含んでいるが、いずれもリジンの含量が少ない欠点がある。また、配糖体、その他の有毒物質を含むのが多いので注意を要する。さらに、最近、落花生粕や綿実粕に生ずるカビが発ガン性を発生させる原因になることがわかっているので、保存には十分な注意が必要である。
アルファファルミール
マメ科の牧草を乾燥させたもので、ルーサンミールとも呼ばれる。おもにアメリカからの輸入品であるが、最近、国産のものも少量製造されるようになった。人工乾燥したものはビタミンAやビタミンB群が多い。また、ルテイン含量が多いので、着色用原料としても有用である。
クロレラ
乾燥したものは多くのタンパク質を含み、ビタミン含量が多く、また色素類も多量に含んでいるので、これらの給源として使用される。ただし、タンパク質の消化率が低く、価値が高いことが欠点である。
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