【研究室】組織標本の作り方

研究室
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今回はフナの体色変化現象における皮下組織の構造の変化を観察するために行う「組織標本」の作り方について紹介していきます。

この手法は実際に生理学研究室に存在した機材を使用して作成を行います。

組織標本の作り方

生物試料の切り出し

組織の変質を防ぐため、氷冷麻酔直後の供試魚を乾燥処理し、目的の部分をすばやく取り出しました。

今回は最も体色が明瞭に変化した側線より上の乾燥させた皮膚(縦1cm×横2cm)と比較として反対側の同面積の皮膚を摘出しました。

次に述べる固定の際に、固定液の浸透をよくするため、試料はなるべく筋肉層を除くように切り出します。

固定液

今回はブアン液を使用しました。

ピクリン酸飽和水溶液:ホルマリン:氷酢酸を容積比で15:5:1の割合で作成します。

洗浄

固定化したのちに洗浄を行います。

洗浄液として「70%エタノール」を用います。

脱水

右側の複数のビーカーがある機械の方ですね。

脱水の作業には自動脱水機(サクラロータリー RH-12)を使用しました。

脱水にはステンレス製の小型カゴの中に組織を入れて行います。

脱水の順序

  1. 70%エタノール・・・ 2時間
  2. 90%エタノール(Ⅰ)・・・ 2時間
  3. 90%エタノール(Ⅱ)・・・ 2時間
  4. 100%エタノール ・・・2時間
  5. 無水エタノール(Ⅰ) ・・・2時間
  6. 無水エタノール(Ⅱ) ・・・2時間

透徹

アルコールはパラフィンとはなじまないので、このままではパラフィンで包埋ができません。

そこでアルコールと混じり、パラフィンとも混ざる物質であるキシレンとアルコールとを置き換えていきます。

透徹手順

  1. キシレン:エタノール を1:1の溶液 ・・・30分間
  2. キシレン・・・ 30分間

包埋

左側にある機械がパラフィ溶融機です

パラフィン溶融機の中から包埋用のパラフィンを取り出して

温めておいた容器に移し、包埋かごの中の組織片を包埋します。

包埋手順

  1. 低融点パラフィン ・・・2時間
  2. 高融点パラフィン(Ⅰ) ・・・15分間
  3. 高融点パラフィン(Ⅱ) ・・・15分間
  4. 高融点パラフィンに包埋

整形

パラフィンに包埋した試料を整形して木製のブロックに付けミクロトームに取り付けられるようにします。

薄切・伸展

薄切にはミクロトーム(ライカRM2245)を使用しました。

5μmの連続切片を作成し、スライドグラス上に並べ伸展・乾燥しました。

切片の脱パラフィン

 次の染色作業のために切片の脱パラフィンを行います。

脱パラ手順

  1. キシレン(Ⅰ) ・・・5分間
  2. キシレン(Ⅱ) ・・・5分間
  3. 無水エタノール・・・ 5分間
  4. 100%エタノール ・・・5分間
  5. 90%エタノール ・・・5分間
  6. 70%エタノール ・・・5分間

染色

切片の染色にはMayerのヘマトキシン-エオシン二重染色およびAZAN染色を行い観察にしました。

切片の脱水

  1. 70%エタノール
  2. 90%エタノール
  3. 100%エタノール
  4. 無水エタノール

染色便の中で濯ぐ程度でよい。ただし、各液をよく切って次に移す。

  1. キシレン(Ⅰ) ・・・5分間
  2. キシレン(Ⅱ) ・・・5分間

封入

適当な封入剤(大道産業 マウントクイック)とカバーグラスで切片を封入することにより、切片が観察しやすく、かつ、保存性がよくなります。

一晩乾かしたら完成です。

観察するとこんな感じになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか、

組織標本を作成するのはここまで手間がかかるんですね。

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