【養殖学】養殖方式の種類まとめ

水産学
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12月19日追記:水田フナ養殖を追加しました。

飼育方式の種類と得失

 フナの生育と植物プランクトンの繁殖は密接不可分の関係にあり、プランクトンが果たす役目は止水式養殖魚の場合の用に単に炭酸同化作用による水中の溶存酸素を補給する事や動物プランクトンが稚魚期の飼料ということとしても考えるべきである。

 コイやウナギは止水方式でも流水方式でも又は生き餌方式でも飼育が可能であるが、植物プランクトンを使用するフナの飼育は止水方式以外には考えられない。ただし止水方式の養殖の弊害として、面積当たりの生産量が少ないため、生産量をどのようにして高く盛っていくかが今後の課題である。

 フナにとって掛け替えのない飼料である植物プランクトンにおいても、人工を加えずに自然の繁殖のみに頼ると生産力が非常に低く栄養状態がよくない。更に蓄養や輸送に対しての耐久性がなく、食用にも釣り用にも価値のないフナになる。
 
 そのため、蓄養や輸送に耐える栄養状態のよいフナを育て、生産量を増大するには施肥によってプランクトンの繁殖をはかったり人工飼料を与えたりしているが、その方式は大別して四式になる。

  • 粗放養殖(無施肥・無給餌)
  • 施肥養殖
  • 給餌養殖
  • 施肥・給餌養殖

粗放養殖

 生産力に見合った適量の稚ブナを冬に放して1~3年間放置し、飼料は天然に繁殖したプランクトンのみに頼る方式である。経費も手間も全くかからない安直な方法であるが、生産量は少なく栄養状態もよくないため、品質の劣等なフナになる。ただし家庭下水や牧畜の糞尿、食品加工工場の排水等の有機物が適度に流れ込み、栄養が豊富でプランクトンの繁殖が旺盛である場合は欠点も補える。

施肥飼育

 有機物の流入がなく栄養が少なくて比較的透明度の高い溜め池に鶏や豚の糞のような有機肥料を投入して、プランクトンを繁殖させて養成させる方式である。付近に養豚場があり、自動車で容易に運搬できる条件がそろっていれば、比較的に経費も安く手間もかからずに行える。しかし、投入できる肥料には限度があり、生産量もそう多くは期待できないことが多い。

給餌飼育

 最も一般に行われている方式で適度に家庭下水、有機物が流入して、栄養が富むことによりプランクトンが繁殖している溜め池で人工飼料を与え、更に生産を高める品質の優良な個体を養成する方式。経費がかかるが、生産量が多いのが特徴。

施肥・給餌飼育

 栄養に貧しく天然飼料の少ない池で肥料を投入して積極的にプランクトンを繁殖せしめながら、人工飼料も併せ与える方式である。経費及び労力を最も要する方法であるが、品質の優良なフナを大量に生産できるので管理を十分にすれば有利な企業となる。

施肥養殖

適地の選定

 フナは温水性魚類であり、プランクトン食性魚類であるということから、止水式養殖を原則としている。プランクトンの摂餌量はかなりおおいので、池面積に対する生産量が他の養殖魚に比較して少ない。従って、成魚養成を行うには養魚目的で造池することは経営上採算が取りづらいのがげんじょうであり、一般ではダムや湖沼、河川に放流して養殖することが多い。集約的に養成する場合、養殖用ため池を使用する事があるので、ここでため池の選定のみ行う。

水深

 一般に水深が深いため池はコイ池、フナ池といわれている。コイ養成のため池は2m、フナの場合はそれ以上4~5mくらいまでとされている。
 底生生物を摂食するコイとは異なり、中上層を遊泳してプランクトンを摂餌するので、魚の遊泳とプランクトンの生息範囲が広い環境ほど生育が良好な為、水深が深くなっている。ただし、深いところへ施肥すると、肥料の分解が良くないので、2m以下の部分がため池にあることがひつようである。

用水

 溜め池は一般に河川水、湧水、雨水をためているが、プランクトンを繁殖させるためにはある程度の有機物を含んでいることが必要であり、池の用水として適度な家庭下水が流入する河川水が最適である。しかし、有毒な化学工場の廃液や農薬の流入するおそれのある河川水はさけなくてはいけない。
 食品加工工場の有機廃液や、牧畜場から糞尿を含んだ廃液は池の生産力増強のために、ある程度は非常に好ましいが、量が過多になることを注意しなければいけない。
また、長年月の間に池のそこに未分解の有機物が堆積するので、2~3年ごとには冬季に池を干して日に晒したり、石灰を散布したりして分解を促進しなければならない。

面積

 フナの養殖はしかも施肥に重点をおくため、その対象になる溜め池も面積が大きいほど企業としての採算がしやすい。成魚の養成を行う場合は少なくとも0.5haは必要である。現在行われている養殖では最大50haの溜め池を使用している。期間や目的によって様々であるが、100m^2から1haぐらいの溜め池が多く使用される。

立地

 溜め池は道路事情の不便なところにある場所が多い。しかし近年は省力化のために施肥、投餌、取り揚げなどは自動車を使用することが多いため、道路が池まで通じていたり、堤防の上まで自動車が登れたりすると便利である。
 太陽光線はプランクトンの繁殖、有機物の分解、魚の生育にとっては不可欠なものであり、なるべく1日の日照時間の長い池がよい。
 魚を取り上げる時に排水を行うので、それに便利なように排水路が池底よりも下にあり、樋門から水路へ流れ出るような池がよい。
 施肥を行う場合は肥料が手近にあって入手しやすい事も必要である。糞尿の処理に困っているような養豚、養鶏場が付近にあると有利である。給餌する場合は残飯等を餌にすればいいのだから、付近にそのような食品加工工場や残飯の出る食堂、寮などがあれば更に便利である。

水田フナ養殖

 水田養殖は、現在は長野県で行われている養殖方法です。以前はフナではなくコイが主体で「稲田養鯉」と呼ばれており、「稲田養鯉」が盛んな頃はフナはあくまでも副産物としての扱いでした。しかし、コイヘルペスの影響から養鯉が衰退してフナ養殖が代わり継承されていきました。
 この養殖は水田でフナを買うことによって、補助金がかからない、農薬の使用しない米、そしてフナの生産と一石三鳥の利点があり、長野では急速に普及、多い時には年に60t、約1億円の産業までに発展しました。
 現在は250戸ほどの農家で生産しています。また、佐久地区においては、「フナ部会」が組織され、農薬を使用しない米の生産と一体となった活動が行われている。

 水田養殖で生産されているフナは「改良ブナ」と呼ばれる品種である。これは水産試験場が鑑賞用として生産していた赤いヒブナの中から出現した体色の黒いフナを選抜し、固定化してきた系統である。ギンブナと比べて体色は金色で、腹部が膨らんでおり、見た目にも味にも優れている。

 取り揚げたフナを多くの家庭で甘露煮にして食する習慣は、長野県独特のもので、ふるさとの秋の風物詩である。甘露煮の味付けは各家庭の秘伝となって伝わっており、我が家の自慢料理の一つにもなっている

水深

 深い方が、水温・水質が安定し飼育が容易である。稚魚の餌となる動物プランクトンも発生しやすい。水深は休耕田の場合は30cm以上、稲作田でも20cm以上は確保したい。

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