鼻と嗅覚
フナの鼻は人間と違い、口腔とはつながらず、呼吸には寄与してない嗅覚専門の感覚器官である。鼻は左右に一対あり、その各々前後に一対の鼻腔があるので、鼻の穴は四つある。前鼻腔から水が入り、後鼻腔から抜ける仕組みになっていて、その間にある嗅覚細胞で匂いを察知する。その嗅覚は、人間の百万倍といわれ、犬にも匹敵することが分かっている。とくにアミノ酸を敏感に嗅ぎ分けるほか、繁殖時のフェロモンを感じ取り、仲間や外敵を識別するのにも役立てています。
目と視覚
魚類の視力は網膜上の視細胞の密度により決まり、フナは0.1~0.2程度の視力だといわれている。人間では近視とされる視力であるが、魚類の目の役割は主に餌と外敵の認識なので、十分役割を果たせるのである。顔の両側についているため、前方から後方、上方から下方までの広範囲にものを見ることができる。また、フナの場合は視界のピントの合わせを人間のように水晶体の厚みを調整する仕組みでなく、水晶体の位置を変えることで行っている。そのため、水槽で飼育すると目が飛び出しやすいと言われている。つまり、水槽の外の遠くまで見ようとして少しでも目を前に出し、焦点を合わせようとするためではないかと考えられている。
耳と聴覚
フナの耳は内耳があるだけで外耳と中耳はない。内耳には三半規管、小嚢がある。三半規管はおもに平衡感覚を補佐しつつ、振動を感じることで聴力をまかなっている。フナは音には敏感で、良感度の領域は100~1000ヘルツ、ほぼ人間並に聞き取れることが分かっている。
口と味覚
口の役割は餌をとることである。歯がないため大きく堅い物は食べられないが、喉近辺に一列に4個に並んだ歯のような咽頭歯があり、よく伸縮する咽頭筋などを使って咀嚼することができる。咽頭歯は消耗品で、すり減ったぶんは補われる。
唇は前に突き出したり、引っ込めたりでき、伸縮自在な厚い肉でできている口蓋(口腔と鼻腔を分離している口腔上壁)で水を吸い込んで口腔内に水を送ることができる。伸縮自在な厚い肉の口蓋は異物をつかむように留めることもできるので、物や硬いものを口から吐き出すことができる。水槽で底の石などを吸ったり出したりしているのがこの動作である。また、フナの舌は三角形のものがあるが動かすことができない。しかし、舌にはしっかりとした味雷(味覚を感知する器官)があり、味を認識していることがわかっている。
側線と触覚
魚の体側にある、点線上の縫い目に見えるのが側線である。側線は頭部の頭頂部から眼の前方そこから下顎にかけてS字上に配置された「側線孔」と体側のほぼ中心に配列された「側線鱗」という型で存在する。その役割として、かつては温度も感じているいわれていましたが、今では温度は感じていないことが分かっている。
側線器には感覚細胞と感覚毛を備え、感覚毛は「クプラ」という寒天状の突起に包まれていて、頭部と側線鱗に分布した脊髄皮膚神経につながっいる。ごくわずかな水の動きなどでクプラが曲がると、それと同時に起こる感覚毛の歪みによって感覚細胞が興奮し、その動きを察知する。側線で周囲の水の動きをチェックしている。
その能力は極めて高く水の動きで周りの物がすべて見えていると思ってもよいくらいである。狭い穴などに一目散に飛び込んだりできるのも側線のおかげである。
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