今回は、研究室時代に行った英語の論文に関する翻訳を行ったレポートを公開していきます。
一応、自分の研究に関するレポートをさがしたんですが・・・なかったですね。
レポートテーマ
Effects of husbandry conditions on the skin colour and stress response of red porgy, Pagrus pagrus
(飼育環境の影響でマダイにおける皮膚の色やストレス反応に及ぼす)
Aquaculture Volume 241, Issues 1–4, 26 November 2004, Pages 371–386
A.L. Van der Salm M. Martínezc, G. Flika, S.E. Wendelaar Bongab
Abstract Red porgy, Pagrus pagrus, is a potential candidate for aquaculture. However, darkening of the body occurs after capture of wild fish and during farming of cultured animals. In fish, skin pigmentation is hormonally controlled and the main hormone involved in skin darkening, α-melanocyte-stimulating hormone (αMSH), is not only involved in pigmentation but also in the regulation of the response to stressors. In this study, several environmental conditions were evaluated for their potency to influence the skin colour and to evoke a stress response. Background colour was the main factor in controlling skin pigmentation. A light background colour restored the lightness value of the skin up to levels found in wild red porgy (L*=∼70). The background effect was enhanced by applying blue illumination. Light intensity had no clear effect on the body colour, but a high density of fish had a negative effect on the lightness. Plasma parameters (cortisol, αMSH, glucose, lactate and osmolality) were not influenced by background colour. A stocking density of 25 kg/m3 did not evoke a stress response in contrast to earlier studies on red porgy, nor influenced the body colour. We propose that this difference can be attributed to the number of fish per volume of water, which was lower than in other studies. This indicates that the number of fish per volume of water rather than the density in kilograms of fish per volume of water is the relevant factor. Furthermore, we suggest that the culture of adult red porgy can be optimised by maintenance of fish on a light background, thereby restoring the body colour to a more natural hue, without affecting the stress response.
導入
マダイ(Pagrus pagrus)は養殖されている。未成熟魚は小型の甲殻類の多く生息する水深20~50mと比較的浅い海域に生息し、成魚は水深250mまでの深い海域に生息し、より大きな甲殻類を捕食する。
野生個体の捕獲後に起こる体色の黒化が問題となっており、全体的に濃い灰色に変わる。
皮膚の色素沈着はホルモンの刺激によって変更可能な脊椎動物では、背景の色と照明強度で皮膚の色素沈着のための因子が決定し、影響している可能性がある。今回の実験では背景色や照明強度や光スペクトル及び飼育密度でマダイにおける体色の黒化する現象の回復を図る。
材料と方法
供試魚:マダイ(Pagrus pagrus)
実験1では120gの個体を200尾
実験2では380gの個体を120尾
容器 :円形ポリエステルタンク500ℓ
環境
光スペクトル
太陽光照明(FS)、青色光照明(BS)
背景色
赤色(RBG)、白色(WBG)、黒色(BBG)
光強度
高い(HLI) ←照明2機
低い(LLI) ←照明1機
飼育密度
高い(HD) ←160ℓに10尾
低い(LD) ←500ℓに10尾
実験処理
捕獲してすぐに魚の皮膚の色を数値化。その後、採血して血漿をエッペンドルファ中で保存。1500rpmで5分間、4℃で遠心分離して急速凍結
実験Aは0、2、8、16、30日目。実験Bは30日目
にサンプリングする。
カラー分析
色の測定は捕獲後に現れる独特な皮膚の黒ずみを防ぐ為に
捕獲した直後に撮影
三刺激比色計(ハンターラボミニスキャン™XE)で分析
色空間はCIELabを用いる。
明度(L値)と彩度(C値)を結果とする
彩度(C値)の求め方
C * = (a2 +b2)0.5
生理学的検査
コルチゾル、αMSH、グルコース、乳酸塩、浸透圧、乳酸イオン(ナトリウム、カリウム、Cl)を測定する。
実験結果
・背景色が白色の場合には明度が高く、青色光で更に数値が高くなる。
・背景色が白色の場合には彩度が低くなる。背景色の赤色の方が彩度は高いが、白色背景、青色光、低密度の場合も数値が高くなる。
・コルチゾル値は2日目にすべてのグループで増加したが、8日以降から戻っている。
・αMSH濃度は16日目まで全てのグループで増加した。
・グルコース、乳酸、浸透圧は背景色ごとの有意差が見られなかった。
・コルチゾルの変動性が高く有意差が検出されなかった。
・乳酸は高密度のグループでは低い数値を示した。また、Naイオンは高密度、青色光では低い数値を示した。Kイオンは低密度よりも高密度の方が低い数値を示した。
考察
青色の照明と明るい背景色の組み合わせでマダイの皮膚の明度が増加させている。
背景色
・今回の研究では背景色によりストレスの誘発はない。
・αMSHの血漿濃度増加したが、マダイの色素沈着に影響を与えない。
光スペクトル
・太陽光照明よりも青色照明の方が魚にかかるストレスが少なく明るい体色を示す。
→成魚が生息している水深200mで見られる光スペクトルの為であると考えられる。
光強度
・低光強度よりも高光強度の方が背景色の誘発効果を増強する。
・高強度が高すぎると死亡する事例もあったが今回は死亡する個体が存在しなかった。
密度
・高密度飼育下では肌の色に暗色化効果があり、低密度と比較しても明度および彩度が低い。
・高密度飼育下では乳酸、NaおよびKで低い値を示す。
・養殖を行う場合、マダイにおける赤い皮膚の復元を行うには青色光照明で明るい背景色の環境での飼育が適していると結論付けられた。
・赤色の色素沈着は天然のカロテノイド濃度の高い餌料を投与することにより増強される。
・設定した高密度(25kg/㎥)ではマダイがストレスとは感じず、皮膚の色にマイナス(黒化)効果が得られなかった。
・成魚のマダイ(380g)に、高濃度のストレスを誘導する効果が得られなかった。
・以前の研究では未成熟魚(120g未満)の個体では高密度でストレスを起こした可能性がある。したがって未成熟個体のマダイの飼育密度は10kg/㎥程度に低く維持すべきだと示唆する。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この論文から、自分の研究に活かせたことが正直あまり思い浮かばなかったですね。
テーマとしては青、体色変化、魚類で調べたんですが、内容が似ていましたが、関与していなかったですね。かなり頭を抱えながらこの論文を翻訳していた記憶があります。
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