今回は小島吉雄さんの記載した「コイとフナの雑種の細胞遺伝学の前書き」について紹介と解説を行っていきます。
この本ではコイとフナの交雑種である「コイナ」の歴史と学術的な重要性について語っています。
では詳しく見ていきましょう。
交雑種の重要性
日本をはじめとした多くの国々で、魚の育種は重要な産業として発展しています。
淡水魚や海水魚において、すでに養殖されつつある種類の育成はもちろんのこと、
自然に生存する種類の利用だけでなく、さらにより優秀な新しい魚を作り出す方法はないかと、日々研究が進められています。
その方法はいくつか考えられていますが、中でも雑種を作り出すということが有力な方法の一つであり、魚類の雑種については過去に非常に多くの試みがなされてきました。
交雑記録
世界で最初の雑種に関する記録は生物学者Gesnerが作った雑種であり、
コイとキンギョの交配を行ったと言われています。
それ以来、多くの研究者の手により50科、2000種以上の魚を用いられて雑種が作られてきました。
交雑手に関する研究の文献の数は現在は1800を超えています。
しかし、これらのほとんどは雑種ができたという記録として残されたものが多く、最初から細胞遺伝学的な研究を目的としたものは少ないのが現実です。
育種という面から考えれば、できた雑種が備えている有望な性能の未来性から考えて当然ですね。
コイとフナは生息している場所が被っていたから
自然と交雑種が見られていたんでしょうね。
細胞遺伝学としての雑種
そんな中、魚類の種文化を細胞遺伝学的に研究しようという動きが世界的に起こりつつあります。
これは人類を含む高等脊椎動物の進化の謎を解く鍵を、魚類が握っていると考え立てる証拠が次々と明らかにされるためでもあります。
しかも、魚類のグループは、現在もなお進化の激しい流動の中にあることがわかりますね。
進化の長い歴史の中で、雑種が種文化の起爆剤になったと考えられるような資料もたびたび見つけられてきました。
小島さんは古くから雑種のについて注目して、長年に渡り雑種を作る研究を進めていました。
そして実験で用いてきたのは我が国をはじめ世界各国で最も普遍的に分布するコイとフナでした。
フナとコイの関係としては、分類学的には属が違うことからも「属間雑種」にあたります。
コイとフナの歴史
コイとフナは同じコイ科魚類に属し、以前は両者とも同じコイ属魚類とされていましたが、
1832年にニルソンによってフナはフナ属と分類されることにより、コイ属から区別されることとなりました。
フナとコイの違い
フナもコイと同じく我が国では古くから知られており、最も古くは常陸風土記にその名が現れている。
それぞれの特徴はこのようになっています。
・フナはコイよりも分布が広い。 ・フナはコイよりも寒冷に強く、索餌温度も低い。 ・フナはコイよりも性質は荒く人には慣れにくい。 ・フナはコイと比べると群集性がない
意外と違いがあるんですね
コイナの記述
近江彦根、藤井重啓選、「湖中産物図鑑1」湖魚図説第一上に鯉鮒、鯽魚一種というのがあります。
鯽魚(フナの意味)の一種でコイナと呼ぶ魚あり、其状鯽魚に似て鱗黒く頭は鯉なり。 春夏の際、犬上郡八坂浦にて間網に入る。古くより鯉鮒と書きて、「コイナ」と訓すと云。 大きなものは一尺と四、五寸(約40〜50cm)に至る。 味は白魚(ニゴイ)に似て、まりありて甚美なり。 保昇集解に説くところのものはこれ魚なり
と記載されている。
湖中産物図証は、文化12年(1815年)に刊行されたものであるから、今から約200年ほど前にコイとフナの自然雑種が琵琶湖で採取され、コイともフナともつかない魚を見た当時の漁師達が、両者の中間の名前をとって「コイナ」と名付けたに違いない。
こんなことを想像するだけで昔の琵琶湖周辺が対象になるのでしょう。
コイとフナの雑種は、
いろいろな遺伝的形質が両親の中間に表現されてくるんですね
まとめ
と言うことで、今回は「コイとフナの交雑種の歴史と記録」について解説してきました。
世界で最初に記録された雑種がコイとフナの雑種であり、日本でも歴史があります。
次回はコイフナの種類と価値について解説していきます。
では。
参考文献 遺伝 1978年7月号 小島吉雄
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