今回は水族館でよく見かける繁殖賞について解説していきます。
近年、水族館の存在というものがアミューズメント性に傾いてきていますが、
それ以外の学術的な価値として存在している水族館も少なからず存在しています。そんな側面を見ていきましょう。
繁殖賞とは

そもそも、繁殖賞は、1956年に日本動物園水族館協会が規定している表彰の一つです。
協会に加盟している水族館の中でも、日本で初めての生き物の繁殖を成功させた功績がある場合に与えられるものとなっています。
繁殖方法にも複数種類があり、人の手を加えずに生育に成功した「自然繁殖」、生まれてから親の哺乳を受けずに育てたり、卵を人工孵化させた「人工繁殖」、そして人工的に人の手で受精して誕生させた「人工授精」の3種類が存在します。
魚類の場合は、「自然繁殖」が多いですね。というのも、魚類の生態からしても基本的に親が育てたり卵の人工孵化ということが少ないですからね。
いずれの場合も6ヶ月以上の生存をしなくてはいけないという規定があります。
ですので、長期飼育を可能とされる飼育技術や環境が整っていないと難しいんですね。
また、フナとコイの交雑種である「コイナ」などの一代雑種、金魚などの家畜種は対象外となっています。基本的に野生個体の繁殖が対象だということでしょう。
これらの条件を満たしたことで、施設の自己申請によって審査がなされるというわけです。
コイ科魚類での繁殖賞

淡水魚を扱う水族館が特に力を入れているのが自然復帰を目的とした繁殖でもあります。
ここでは、繁殖賞を受賞している水族館を確認してみましょう。
・・・といっても、ものすごい種類の繁殖賞が存在していますので、私の記事では関心の高いコイ科魚類のみ取り上げていきます。
アオウオ(さいたま水族館:1994年)
コヒガイ(なかがわ水遊園:2008年)
タカハヤ(碧南海浜水族館)
カワムツ(碧南海浜水族館)
ヒメドジョウ(なかがわ水遊園:2005年)
フクドジョウ(山梨県立富士湧水の里水族館:2002年)
スジシマドジョウ(狭山市立智光山公園こども動物園:2004年)
チャイナバタフライプレコ(神戸市立須磨海浜水族園:2009年)
興味のある方は繁殖賞受賞一覧をご覧下さい。
フナの繁殖賞はいるのか?
ここまでみていただいた中で、一つ思ったことがあります。
それはフナでの繁殖賞は存在しないのか。
確かに、繁殖賞は「日本で初めての繁殖に試みた」という点が重要であり、フナは割と水族館以外でも水産試験場などで繁殖、飼育をなされている例が多いのです。
では、フナで繁殖賞を受賞した水族館は存在しないのか。
繁殖賞の受賞のリストを見渡したときに、1種類だけフナが存在しておりました。
それが「ヨーロピアンブナ」です。
まさかの外国のフナでしたね。それでも、繁殖賞が存在していたのは嬉しい限りです。
琵琶湖博物館で平成6年に自然繁殖で実施しており、繁殖賞を受賞していました。
以前、琵琶湖博物館の学芸員さんとお話をしたときにヨーロピアンブナを飼育していたという話を伺ってはおりましたが、まさか繁殖賞を受賞していたとは・・・。我ながら感服です。
琵琶湖博物館の実力

それでは、繁殖賞を受賞した琵琶湖博物館について設備について話していきましょう。
琵琶湖博物館での保護増殖センターでは、実に40種類の近くの繁殖を実施しています。
その一つで環境の変化により多くの日本淡水魚が絶滅の危機に瀕しているなか、このような環境で保全をしているんですね
液晶パネルに「自然の川や湖などで減少している淡水魚の繁殖を行っています」との文字が表示され、絶滅の恐れがあるゼニタナゴやウシモツゴなどの水槽が、ガラス越しに見流ことができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか、生物の飼育展示に長けている水族館ではこの繁殖賞を受賞している水族館も少なくありません。
まだまだ課題は多いというが、遺伝子レベルでの系統分類が進み、同一水系の個体群の系統保存などに成功していますし、今後がたのしみですね。
ではまた。
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