
今回は『フナ属の分類』について説明します。フナの分類は国ごとに違っていて、特に日本とヨーロッパで意見が分かれています。

日本と世界で分け方が違うんですか?どうしてですか?

学者たちによって意見が異なっているんですね。
どのように分類してきたのか、見ていきましょう。
日本におけるフナ属の分類

フナ属(Carassius)は、昔から日本をはじめ世界中で親しまれている淡水魚です。その中でも、日本に生息するフナは地域ごとに多様な形態や特徴を持ち、釣りや料理などの場面で身近な存在となっています。

しかし、このフナ属の分類については、古くから学者たちの間で意見が分かれており、現在でもその議論が続いています。
欧米と日本の違い
フナ属の分類について、欧米では次のような基本的な考え方が定説とされています。
- ヨーロッパフナ(Carassius carassius)
主にヨーロッパに分布する種類。 - アジアフナ(Carassius auratus)
アジアを中心に分布する種類で、キンギョ(飼育用の品種)もこれに含まれます。
欧米の学者たちは、これらを別々の種とみなし、日本産のフナもC. auratusに分類しています。
一方で、日本の学者たちの間ではこれらを同一種とする説や、さらなる詳細な分類を提案する説があり、意見が分かれています。

このように、フナ属の分類には歴史的な議論があり、簡単には結論を出せない問題があるのです。
日本における分類の議論
内田恵太郎氏の見解

1939年、日本の魚類学者である内田恵太郎氏は、北朝鮮北部の「咸鏡北道」でヨーロッパ産と考えられるフナ(C. carassius)を確認しました。
このフナは、体が大きく、体高が高いという特徴を持っていました。
しかし、内田氏は「外見が似ているからといって、必ずしも同じ種類とは限らない」と考え、フナの分類について新たな視点を提案しました。
具体的には、形態的な違いが必ずしも系統を示すわけではなく、地域ごとの分布を元に種が判定されている可能性があると指摘したのです。
内田氏は、この見解に基づき、日本産のフナをヨーロッパのC. carassiusと同じ種類とみなしました。

この意見は、フナ属の分類を考える上で重要な視点を提供しましたが、
その後の議論をさらに深めるきっかけにもなりました。
松井佳一氏の見解
1950年、もう一人の日本の学者である松井佳一氏は、フナ属の分類について異なる見解を示しました。
松井氏は、スウェーデンの生物学者カール・リンネが初めてフナを記載した際、それが実はキンギョ(C. auratusの飼育変異種)に基づいていることを指摘しました。
そして、日本産のフナをヨーロッパのC. carassiusとは異なる種類とみなし、すべてC. auratusとして統一することを提案しました。
さらに松井氏は、日本産のフナを以下のように亜種名で分類しました。
- ギンブナ: C. auratus langsdorfii
- ナガブナ: C. auratus burgeri
- ニゴロブナ: C. auratus gradoculis
- ゲンゴロウブナ: C. auratus cuvieri
この分類は、日本各地で見られるフナの多様性を反映したもので、地域ごとに異なるフナの特徴を理解するうえで大きな意味を持ちました。

また、松井氏はこれに該当しない種類としてキンブナを挙げ、C. auratusの亜種(subsp.)として取り扱うことを提案しています。
世界におけるフナ属の分類
ヨーロッパにてフナ分類の学説

一方、ヨーロッパでは、フナ属を以下のように分類する考え方がありました。
- Carassius vulgaris(ヨーロッパフナ)
ヨーロッパ全域に広く生息する種類。 - Carassius bucephalus(別のヨーロッパフナ)
形態的な違いに基づき、独立種とされています。 - Carassius auratus(アジアに生息しているフナ)
日本や中国などアジア全域で見られる種類。
この分類では、日本産のフナはすべてCarassius auratusの一部とされていますので、ギンブナやキンブナなどが全てこれに入っていました。
ベルグ氏の見解
ロシアの魚類学者ベルグ氏は、フナ属を以下の2種に分類しました。
- Carassius carassius(ヨーロッパフナ)
ヨーロッパからシベリアにかけて広く分布する種類。 - Carassius auratus gibelio(ギベリオブナなど)
アムール川や朝鮮半島、日本など、東アジアを中心に生息。
ベルグ氏は金魚の祖先となるアジア産のフナ(Carassius auratus)が
以下の地域に野生分布していると考えました。
- 日本全土
- 中国本土(トンキン地方や海南島を含む)
- 中国東北部(旧満州)
- 台湾

ルグ氏の見解では、フナ属が地理的な環境によってさまざまな形態に分かれていったことが示唆されています。
現在の課題と展望

フナ属の分類に関する議論は、現在も進行中です。
従来の分類は形態的な特徴を重視して行われてきましたが、近年では遺伝学や分子生物学の発展により、DNA解析を基にしたより精密な分類が可能になっています。
これにより、形態だけでは分けられなかったフナ属の詳細な分類が明らかになりつつあり、特に日本に生息しているゲンゴロウブナが種として独立するまでなりました。
まとめ

ということで今回は『フナ属の分類とは?日本と世界の歴史と学者たちの見解を解説』について説明しました。

フナの分類って、学者によっていろいろ違うんですね。
分類の研究は、学術的な価値だけでなく、生物多様性の保護や種の保存といった現代的な課題とも深く関係しています。
特に、日本の伝統的な漁業やフナに関わる文化を守るためにも、フナ属に関する正確な知識を深めていくことは重要です。
今後の研究が進むことで、フナ属の新たな知見が得られることが期待されています。そして、身近な存在であるフナという魚が、私たちの自然環境や生物多様性について考えるきっかけとなるかもしれません。
フナ属の分類は一見難しく感じるかもしれませんが、その背景には自然を深く探求しようとする多くの学者たちの努力があります。

こうした歴史を知ることで、
普段目にするフナに対して少し違った視点で興味を持つことができるのではないでしょうか?
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