今回は加福竹一郎さんが書かれた「カワチブナの起源についての考察」という論文の中から
フナの分類ついての意見の紹介と私の感想を記載していきます。
フナの分類学については様々な人が色々な文献を出していますので、
ここではさまざまな文献の紹介をして情報を増やせて行けたらいいなと思っています。
加福氏は魚類の分類についての研究を行っている方ですので、他の魚類の分類と比べたフナの分類について参考になるものが多いかと思います。
導入
フナ属魚類の分類は、多数の生態系に対応した変異があるため、サケ科のゴレゴヌス属と同様に分類学上の難問を抱えています。
文献のみから簡単に結論めいたものを出すことはしませんが、
仮説を提示した立場上あえて結論づけるならば、次のことが言えます。
以上の5つになります。詳しく見ていきましょう。
見解
日本のフナは泳層での分化があるが、日本以外のフナにも当てはまる
まず、加福氏はフナの分化についてこう語られています。
日本産フナ類の中では底生から表層性へと分化の関係が見られたが、このような関係は日本以外のフナにも見られる。
C.carassiusとC.auratus gibelioの間ばかりではなく、中国産のC.auratus auratusの間にも見られるはずである。
フナは確かにキンブナ型、ギンブナ型、ゲンゴロウブナ型でそれぞれ泳ぐ層が違っていますから、
棲み分けがうまく行えているということですね。
同じキンブナ型であるヨーロッパブナとギンブナ型であるギベリオブナ、中国に生息しているフナの間には生息地が大きく離れていますが、このような生態の違いは自体は起こっているとも考えられますね。
地域によってフナの形態の組み合わせが違っていることについて
次に形態の組み合わせについてこう語っています。
各地でこのように生態品種の多様化がおきつつあり、腸長、体高、鰓耙数相互の組み合わせが違ったものが、地域によっておこっていると考えることが妥当だろう。
現在、分類については腸の長さと体高比、そして鰓耙の数での分類が主に行なっていますが、
これは種としてだけでなく地域によって差が生じている例も少なくありません。
これは特にフナの分類が難しくなっている原因の一因についての意見ですね。
ゲンゴロウブナ型の分化段階が見られず、特殊なものであること
次にゲンゴロウブナについてはこのように語っています。
これまでの文献に関する限りでは、ゲンゴロウブナ型の分化の段階のものは見られない。
したがって、日本のゲンゴロウブナは、ヨーロッパ・アジアを通じて特殊なものと言える。
これは、ゲンゴロウブナが日本固有種であるという点の意見ですね。
細かい点については加福氏のゲンゴロウブナの起源についてまとめている記事がありますので、そちらをご覧ください。→【分類学】ゲンゴロウブナの特徴と起源
分化の段階を加味しないと地域差の分類が煩雑になること
そして、地域差について加福氏はこのようなことも言っています。
今後のフナ属魚類の分類には、このような種の分化の段階を加味した考えを入れない限りは、無数の地域別の種名により一層混乱するだろう。
これは、現在の分類学において非常に頭を抱えている問題の一つですね。
フナの形態の違いについては今でも多くの学者が頭を抱えていますし、
Twitterでも採取したフナの種類がわからないと嘆く人も多いです。
種の分化についてはもう少し私も文献を見ていきたいですね。
金魚の起源は中国のフナであること
最後に金魚について話されており、
金魚の起源は、中国のキンブナ型にはじまると言ってもほぼ間違いないだろう。 金魚の発祥の元となった中国産のフナを、仮に主体がギンブナ型であっても、C.auratus auratusとすることは一応納得するとしても、キンブナ型にあたるヨーロッパ産のものをC.carassius更には同系統と思われるアジア産のものにC.auratus gibelioとすることには納得できない面もある。
ということで、金魚はギベリオブナやヨーロッパブナとも形状が異なるので、一つの種であるということを言っていますね。
私の感想
まとめいきましょう。
今回は加福氏のフナの分類についての5つ意見について解説していきました。
特に分化についてはフナの分類において重要な点であり、
地域差や種別の違いについても見ていく必要があるように感じますね。
現在C.auratusを日本産フナに適用することに賛成します。
なお資料収集の上、Carassius 属の種名について再検討の必要があるように思いますね
参考文献 カワチブナの起源についての考察 加福竹一郎
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