クローン繁殖!?ギンブナの不思議な繁殖方法と性の秘密

生態学
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今回はギンブナの性比と単位生殖について解説していきます。

ギンブナという魚には、驚くべき特徴があります。それは、ほとんどがメスしかいないことです!

どうしてメスだけで繁殖できるのか、今回はその仕組みを見ていきましょう。

ギンブナの特徴と性比

ギンブナは日本中の川や湖に住んでいる魚で、体長はだいたい25cmくらいです。
特に、ギンブナのメスは単為生殖という「オスがいなくてもメスだけで子供を産む」珍しい繁殖方法で増えることが知られています。

ギンブナについての詳しい内容はこちらでも解説しています→【魚類解説】ギンブナ

ギンブナの性比

ギンブナの性比は場所によって違いがあり、たとえば関東地方ではオスがほとんどいません。

逆に、西日本では比率が異なり、岡山県や富山県ではオスもメスもいることがあるそうです。
でも、ギンブナに似たオオキンブナと混同されることもあるため、注意が必要です。

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今回は追求しないでおきましょう。

気になる方はこちらをどうぞ

追い星を持つギンブナ

追い星を持つギンブナ

ギンブナはメスしかいないと言われていますが、例外もあります。
通常、オスだけに見られる「追い星」という模様が、稀にメスに現れることがあります。

これは、繁殖期にオスが成熟すると体に出てくるもので、ギンブナにもオスがいる場合があることを示しています。

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ただ、文献によってはメスにも発生することもあると言いますので、一概にはいえませんね。

ダイビング中ですので他の雌雄の確認箇所も見れませんし、真相は湖の中ですね。

単為生殖について

脊椎動物の中でもシュモクザメやコモドオオトカゲは両性生殖が主ですが、
稀に単為生殖で繁殖できることが知られています。

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しかし、ギンブナは単為生殖をメインで繁殖をやっているのです。

単為生殖の仕組み

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では、どうやってギンブナのメスは子供を産むのでしょうか?

ギンブナのメスは産卵すると、他の魚(例えばコイやドジョウ)のオスをフェロモンで引き寄せて放精させます。

しかし、その精子は卵と結合せず、あくまで「きっかけ」として使われます。
その結果、母親の遺伝子だけを持ったクローンが生まれるのです。

単為生殖のメリット

単為生殖にはいくつかのメリットがあります。
たとえば、オスを探す必要がなく、すべての子供が母親と同じ遺伝子を持つので、環境が安定しているときには有利です。

一方、有性生殖(オスとメスが交配する方法)では、新しい遺伝子の組み合わせが生まれるため、環境の変化に強くなるというメリットがあります。

単為生殖のメカニズム

繁殖期のゲンゴロウブナ。本来ならば雌雄集まって繁殖する。

通常の場合

なぜ、雄性遺伝子を受け付かずに雌性遺伝子だけで繁殖するのでしょうか。
それはフナのほとんどが3倍体という通常より染色体の数が多いからです。

他のフナは本来の両性生殖するフナは(2倍体=2n)になります。

通常の2倍体の細胞核にはオスとメスとも100個の染色体があります。

それぞれ減数分裂によりオスの精子に50個の染色体とメスの卵子に50個の染色体が合体して
オスとメス両方の遺伝子を受け継いだ100個の染色体をもつ2倍体の子供が産まれます。

3倍体の場合

一方、150個の染色体(3n)をもった個体が現れました。これが(3倍体=3n)になります。
今ではその個体数は圧倒的に多くなります。

3倍体は減数分裂をしないためその卵子も3倍になります。
正確に言うと染色体自体が倍化して、通常2回行われる減数分裂が1回だけしか行われます。

 ✖️ 2 = 6 ➗ 2 = 3

染色体の数が通常のものよりも多いので、オスの精子との染色体の数が合わないので、
染色体数の合わない精子と卵子とでは合体できないというわけですね。

3倍体が受精する可能性

稀ではありますが、3倍体の卵子がオスの精子を受け付ける事もあります。

通常のオス(2n)の精子(1n)と3倍体のメス(3n)の卵子(3n)が合体して
1n + 3n = 4n

2倍体と4倍体は偶数3倍体は奇数になります。

偶数は精子と卵子が結合する両性生殖ができることになっている。

4倍体同士での交配は精子2n+卵子2n=4nと4倍体の子供が生まれることになります。

2倍体と4倍体の交配ではたとえば2倍体のオスと4倍体のメスでは

通常の魚の精子(1n)+卵子(2n)=となり、
1n + 2n = 3n

それによって3倍体が生まれるということになります。

偶然3倍体のメスが4倍体のオスの精子を受け付けたら4倍体になり、

通常の魚の精子(2n)と3倍体メスの卵子(3n)で、
2n + 3n = 5n

5倍体のフナが生まれることもありえるかもしれませんね。

クローン繁殖するフナの起源

最近、科学者たちはギンブナの起源を調べました。その結果、ギンブナはもともとは日本には存在せず、アジア大陸から来た可能性が高いことがわかりました。
まだ氷河が広がっていた約1万年以上前の氷河期に、日本に渡ってきたと考えられています。

でも、ただのクローンブナで終わりではありません。
ギンブナは時々日本にすでに住んでいる本来のオスとメスが交配して増える「有性のフナ」と交配することがあります。この交配によって、新しい遺伝子を取り入れることで分布を広げてきたのです。

これには理由の一つとして、ギンブナの中にも稀にオスの個体が生まれることがあるからでしょう。
私もギンブナの成魚を観察していると稀にエラ蓋部分に追い星が見られるオスの個体を発見することがあります。

このように、クローンとして増殖する生物が他の魚と交配して遺伝子を交換し進化していくのは、いくつか存在していますが、脊椎動物では初めての発見です。

まとめ

と言うことで、今回はギンブナの性比と単為生殖のメカニズムを紹介していきました。

ギンブナの単為生殖は、脊椎動物の中でもとても珍しい現象です。
こうした不思議な繁殖の仕組みを知ると、魚の世界がもっと面白く感じられるかもしれませんね!

参考文献

びわはく 7号 2023年6月1日発行
「雌しかいない!?クローン繁殖するフナの起源」
国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター染色体分配研究チーム三品達平

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