今回は標準和名と地方名の関係性について解説をしていきます。
どちらも魚の名前として学術的にも人文学的にも関係が深い要素になります。一緒に見ていきましょう。
標準和名
まずは標準和名ですが、こちらは日本における魚の正式名称になります。
フナのであてはめるのであれば、「ギンブナ」、「ゲンゴロウブナ」という名称がこちらになりますね。
私たちが、教科書や専門的な図鑑で見かける魚の名前は基本的に標準和名で書かれています。
なぜ、標準和名が用いられるのでしょうか。
本来ならば、学名が世界共通の名前であり、学名を用いることが一番合理的です。
しかし、学名はラテン語でつづられており、私たちにはなじみがなく、普段使うことには難しいですね。
また、一つの種に対して、複数の地方名があったり、似たような種類の総称として扱った名称もあったりしますから、煩雑な印象も受けます。
その点、標準和名であれば、公共や研究などの場面において共通の理解を得やすいですから
スムーズに研究や普及などに進めることができますね。
なお、これについては、学名や地方名などの使用を制限するものではありません。
別に標準和名じゃなくても構わないですが、日本専用の名称ですし、優先的に使うほうがいいかもしれませんね。
増える標準和名
研究や調査方法などの進展により、生物種の分類が細分化されるようになってきました。
それにより、今まで同じ種類だと思われていた魚が、別の種類として記載されることは良くあります。
当然、その分「種名」が増えるということですから、標準和名はどんどん増える傾向にあります。
例えば、1970年に新種として記載されたイシドジョウという標準和名がいます。
この種は西日本各地から確認されましたが、地域によって個体群の斑紋において違いがみられました。
その後、詳細な比較系統学や集団遺伝的な研究が行われ、四国の個体群はイシドジョウとは別種であるとされ、ヒナイシドジョウという新しい標準和名が付けられました。
反対に研究によって今までの別の種類と思われていたものが同じ種類のオスとメスの違いであったり、幼魚と成魚の違いであったりした場合もあります。
この場合は、名前が整理されて標準和名が減ることになります。
減りつつある地方名
全国的な流通の発達や情報の普及や人々のかかわり方の変化などによって、
近年、「地方名」を使用する機会が減りつつあります。
地元で獲れた魚をその地で消費する「地産地消」がよく行われていた頃には、魚の名前は同じ地元の中だけで流通するだけでした。
しかし、現在は輸送技術の発達により遠方からも魚が届けられ、広範囲の流通が行われるようにもなりました。
その為、日本全土で通用する名前を使用しなくてはいけませんので、「標準和名」が普及することとなりました。
また、映像や書籍などを通した情報の普及、地域の漁業の衰退や魚自体の減少も地方名の減少の一つですね。
しかし、標準和名が普及していく中でも、魚の地方名は今でも使われることも少なくありません。
一例を挙げるとすれば、漁業者や市場の取引の場面、魚屋さんですね。
業界用語として定着していることもあり、そこでは地方名がよく用いられれていますね。
今でも昔ながらの魚屋に行ってみるとこの場合は商品名とも言えますが、その地域で呼ばれている地方名が使われて、販売されていることがあります、
まとめ
ということで、今回は地方名と標準和名について解説していきました。
いままで、地方名で呼ばれていた分類不明な魚が同定されて標準和名が作られる。
これに関しては生物学、特に分類学の発展によるものであり、本当に素晴らしいことであります。
しかし、標準和名が増えて、地方名が減るというのはその地域での独特の文化や歴史とも言える名前が失われるということでもありますね。
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