今回は日本産のフナ類の種小名(亜種小名)の由来について記していきます。
日本では、比較的、集団についての解析が進んでいおり、いくつかの独立した集団が確認され、多くが便宜的に亜種レベルで扱われています。
しかし、フナ類は形態からでなく、どの集団に属すか不明瞭なフナ類も各地から採集されますので、
分類学的整理は日本においても完了していないのが現状ですね。
キンブナとナガブナ
Carassius auratus supsp.
体色が黄褐色になっていることが多い「金鮒」、尾の付け根辺りが長い「長鮒」。
キンブナの種小名は「carassius subsp2」でナガブナは「carassius subsp1」とされています。
”subsp”とは「Subspecies」の略称で「亜種の集団のひとつ」であることを表しています。
意味合いとしては
- 属名までは特定したが種小名まで同定できる特徴が未確認
- 学名を与えられていない未記載種
つまり、この2匹は「フナ属魚類の1種」であり、亜種として確立していないことを示しています。
オオキンブナ
Carassius auratus buergeri Temminck and Schlegel, 1864
キンブナに類似し大型に成長する為「大金鮒」と名のつけられていますが、
オオキンブナの種小名は「auratus buergeri」になります。
亜種小名である”buergeri”とは、人名でシーボルトの助手である”Buerger”に由来されます。
また、オオキンブナは1960年代頃から亜種として示唆されるようになり、1980年頃に提唱されはじめています。
その後、C. buergeri の新亜種として記載されたそうで、「buergeri burger」とされる場合もあります。
明確な文献がなかったので、私は「auratus buergeri」とさせていただいています。
ニゴロブナ
Carassius auratus grandoculis Temminck et Schlegel, 1846
ゲンゴロウブナに類似しているから「似伍郎鮒」という名前がつけられた「ニゴロブナ」
ニゴロブナの亜種名は「auratus grandoculis」になります。
”grandoculus”は、”Grand”が「偉大な」、「常に大きい」の意の接頭語であり、
”ocularis”が「目のある」、「目」の意の接続語でになっています。
意味合いとしては「目の大きい」フナであることを表していますね。
異名としては「オオキンブナ」の亜種名である「buergeri agrandoclis」が挙げられます。
ゲンゴロウブナ
Carassius cuvieri Temminck & Schlegel, 1846
日本の琵琶湖に生息する日本固有種であるゲンゴロウブナ。
本種は日本産のフナ類で唯一、種として確立しています。
種小名Cuvieriですが、これはフランスの動物学者「キュヴィエ Georges cuvier(1769-1832)」から由来している。
種として確立している為、異名が非常に少ないです。
英名は”Deep bodeied crucian carp”といいますが、。
”Deep bodeied”は、「大きな、深い体」を表しており、他の種類と比較して体高比が高い種類であることを表しています。
主に釣りの対象魚である「箆鮒」をさしていることが多いですね。
ギンブナ
Carassius auratus langsdorfii Temminck et Schlegel, 1846
体色が銀褐色になっていることが多い為、「銀鮒」という標準和名がついています。
そんなギンブナの種小名は「auratus longsdorfi」となっており、これ人名の”Langsdorff”という学者に由来しています。
異名としては亜種名がそのまま使用された「langsdorfii langsdorfii」が挙げられます。
また、中国大陸に生息するギベリオブナの種小名である「giberio langsdorfii」とされた文献を散見されます。
まとめ
ということで、今回はフナの種小名について解説していきました。
いまだに文献によって種小名、亜種小名が確立していないので、今後も見ていきましょう。
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