今回は魚の鰭(ヒレ)の形状と働きについて、機能や進化について解説していきます。
魚たちの水中生活には欠かせない存在である『鰭(ヒレ)』。
この漢字を見て「何だろう?」と思った方もいるかもしれませんね。
実は、鰭は魚が効率よく水中を移動するために重要な役割を果たしています。
今回は、フナをはじめとする魚類の鰭の種類やその機能について、進化の観点も交えながら詳しく解説していきます。
さあ、魚たちの驚くべきヒレの仕組みを一緒に学んでいきましょう!
鰭(ヒレ)とは
鰭とはフナをはじめとする魚類や水中で生活する生物が水をかいて推進力を得たり、
体の姿勢をコントロールするために持っている体の器官になります。
鰭の多くは体から膜条に伸びていて、骨や軟骨によって支えられており、 さらにその根元にある筋肉によって動かされています。
水中では浮力が働くため、我々でいう「無重力状態」に近く、
重力に逆らって運動する必要がありません。
その反面、水は空気よりも密度や粘性が高いです。
そんな水中で最小限のエネルギーで効率よく移動するために
水の抵抗を減らす流線型の体と筋肉の動きに負わせて柔軟な動きができる薄い膜条の鰭が装備しているんですね。
ダイビングをしている人ならフィンを使って推進力を出すイメージですね。
魚のヒレの基本構造
ヒレを見てみると何本もの筋が見えると思います。
それは鰭を構成する筋のうち、硬い棘条のものが棘条、柔らかい筋を軟条と言います。
棘は軟条が硬質化したもので、節がなく、柔軟性がありません。
一方、軟条には分節を持ち、柔軟な動きに対応できます。
硬骨魚類の背鰭にはイワシのような軟条ばかりのものとサバのような棘条と軟条が組み合わさったものがあります。
この軟条の数によって魚の種類は概ね決まるので、魚の種類を特定する際のキーポイントとしても用いられています。
フナも背鰭の軟条数が分類点とはなりますが、
確実ではないので、それだけで判断するのが難しいですね。
詳しくは分類学で解説していきます。
ヒレの種類と役割
それ以外にも脂鰭や小離鰭など特殊な鰭も存在しています。
魚のヒレには左右対称に2枚あるものと、対ならないものがあります。
対になっているものを「対鰭」、ついになっていないものを「不対鰭」と言います。
胸鰭と腹鰭は対鰭、背鰭と臀鰭、尾鰭が不対鰭になります。
胸鰭(むなびれ、きょうき)
胸鰭は、陸上の生物でいうならば前足、我々でいう腕に相当し、左右の鰓の後ろにあります。
フナをはじめとするコイ科やニシン科の魚は体の腹側に位置しています。
人間の手のように泳ぐ時には使わないんですね
フナや多くの魚類は胸鰭を遊泳のためには使用しませんが、
ベラは遊泳のために左右の鰭を用いたりすることがあるようですね。
腹鰭(はらびれ、ふっき)
次に紹介する鰭は腹鰭です。これは陸上の生物における後ろ脚、我々にあたる足に相当する部位になります。
主に体のバランスと保つ役割があり、イワシ類は腹部、スズキ目は胸部にあります。
一般的には進化の度合いが高い魚の方が体の前側に位置していると言われています。
これは腹部が前にあるほどに胸鰭と連動して効率よく方向転換を行われるからだと言われています。
フナの腹鰭はイワシ類ほどではないのですが、比較的原始的な形態を持っており、胸鰭よりもやや後方に位置しているのがわかりますね。
ちょうど体の真ん中に位置しており、水底に着地した際の足として使用されています。
また、泳ぎ出す際に腹鰭を上げることにより浮力を生じることもできますので、
フナの生態としては理にかなっていると言えますね。
背鰭(せびれ、はいき)
続いて紹介するのは、背鰭です。
構造としてはコイやニシンのように1基だけ持つものと、スズキ目のように第一背鰭、第二背鰭の2基を持つものやタラのように3基もつ個体もあり、より進化した魚の方が背鰭を複数持っている傾向があります。
フナは比較的原始的な形態を持つ魚であり、背鰭は軟条のみで構成される背鰭を1基もっています。
また、頭に近い軟条は「棘状軟条」で硬くなっているのが特徴ですね。
尻鰭・臀鰭(しりびれ・でんき)
続いては尻鰭です。臀鰭とも書きます。一部の例外を除いてほとんどの魚類には一基存在しています。
カワハギやナマズのように一部の魚では遊泳の際に使う種類もいますね。
尾鰭(おびれ)
最後に紹介するのは尾鰭です。
形状は魚の種類によって変化を富んでおり、
生息する環境や泳ぎ方に合わせて進化しています。
魚の泳ぎ方については別の章で紹介していますね。
魚のヒレのエネルギー効率
魚のヒレの形状は、その泳ぎ方やエネルギー効率に大きく影響します。ヒレの形によって、どのようにエネルギーを使って泳ぐかが変わり魚の生活スタイルに適した動きが可能になります。
ここでは、特に尾びれの形状に注目して、エネルギー効率の違いを詳しく説明します。
尾鰭の形状は魚の種類によって変異に富んでおり、サメのような上下の鰭が不対称な鰭を「異尾」 一般的な硬骨魚類のように上下が対象になっているのを「正尾」と言います。 正尾はさらに円形、二又型、などその形状によって幾つかに分類されています。
ちなみにフナは正尾の中の二又型に分類されます。
1. 円形の尾びれ(例:フナ、チョウチョウオなど)
円形の尾びれは、回転力(推進力)を重視して設計されています。この形状の尾びれは、水を大きくかいて回転するような動きをしやすく、急な方向転換や細かい動きに優れています。しかし、直進するスピードやエネルギー効率には劣ることが多いです。
- 利点: 小さなエリアでの素早い動きや細かな制御が得意で、餌を探すときや捕食者から逃げる際に有効です。
- 欠点: 長距離の移動や速い直進には向いていないため、エネルギーを多く消費しがちです。
2. 三日月型の尾びれ(マグロ、サメなど)
三日月型の尾びれは、直進性に優れた形状です。この尾びれの形は、水の抵抗を最小限に抑えながら効率よく推進力を生み出すことができます。そのため、速く泳ぐことができ、長距離を移動するのに適しています。
- 利点: マグロやサメのような魚は、この三日月型の尾びれを使って、長い距離を高速で泳ぐことができるため、エネルギーを効率的に使えます。移動が速いだけでなく、持久力も高いため、広い海での移動や捕食に向いています。
- 欠点: 急な方向転換や細かい動きが苦手で、俊敏性の点では劣ります。
一般的に高速で泳ぐ魚ほど上下に伸びた三日月型の尾鰭を持っており、
反対に底棲魚は幅の広い尾鰭を持つことが多いです。
飛行機の翼の効率を計算する際に用いられるアスペクト比(翼の幅の2乗÷翼の面積)というのがあるのですが、これを魚の尾鰭についてまとめると
となっています。円形や菱形の鰭をもつ魚はさらに小さくなりますね。
また、この数値は成長とともに増大することが知られており、稚魚や幼魚期から成長するにしたがってより効率よく泳ぐことができるようになります。
フナのような二又型だと三日月型よりも小さく、効率があまりよくないことがわかますね。
そもそもそこまで泳ぎ回らない魚のでこのくらいの数値が適正なのでしょう。
魚の尾びれの形によって、泳ぎ方やエネルギー効率が違ってきます。
円形の尾びれは、方向転換や細かい動きが得意で、素早く回転するための力を発揮しますが、速く泳ぐときにはたくさんのエネルギーを使います。
一方、三日月型の尾びれは、速くまっすぐ進むことに優れ、少ない力で長い距離を移動することができるので、エネルギーを節約できます。
魚たちは自分の住む環境や生活に合った尾びれの形を持っているんだな!
ヒレの役割の比較
魚の種類によってヒレの使い方には違いがあり、それぞれの役割も異なります。
魚がヒレをどう使うかを「遊泳のためにヒレを使う魚」と「方向転換やバランスを保つためにヒレを使う魚」に分けて説明します。
遊泳のためにヒレを使う魚
遊泳のためにヒレを使う魚は、前に進んだり、速く泳いだりすることに特化しています。
こうした魚たちは、通常、尾びれ(尾鰭)を強く動かして推進力を得ています。
例えば、マグロやサバなどの魚がこのタイプに当てはまります。
マグロは時速60キロ以上の速さで泳ぐことができ、広い海を長距離移動するために尾びれを使ってエネルギーを効率的に使っています。
方向転換やバランスのためにヒレを使う魚
一方で、方向転換やバランスを保つためにヒレを使う魚は、細かな動きや安定性を求めることに特化しています。
こうした魚たちは、胸びれ(胸鰭)や腹びれ(腹鰭)を使うことが多いです。たとえば、フグやカワハギがこのタイプに該当します。
フグは素早く方向転換する必要があるときに、胸びれを巧みに使いながら左右に動きます。また、カワハギは胸びれや腹びれを使って、まるで空を飛ぶように水中をゆっくり移動します。
遊泳魚と方向転換魚の違い
遊泳のための魚(例:マグロ)
尾びれを大きく使って高速でまっすぐに泳ぐことが得意で、長距離移動に向いています。
方向転換やバランスを保つ魚(例:フグ)
胸びれや腹びれを使って細かな動きや方向転換が得意で、狭い場所でも自由に動けます。
魚のヒレは種類ごとに使い方が違い、その役割も異なります。
速く泳いで遠くまで行く魚は、尾びれを大きく使い、推進力を出します。一方、細かく動いたりバランスを取ったりする魚は、胸びれや腹びれを使って方向を変えたり安定したりします。
魚のヒレの使い方を見ると、
その魚がどんな環境でどのように生活しているかがわかるんだね。
まとめ
ということで、今回は魚のヒレについて解説してきました。
魚のヒレについての知識を持つことで魚の泳ぎ方や定位する姿勢などを想像することができますね。
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