今回は魚類の消化器官とその働きについて解説していきます。
魚の消化器官は、食べ物を食べてから体に必要な栄養を吸収し、不要なものを排泄する大切な役割を持っています。今回は、フナという魚がどのように消化を行うのかを解説します。
特に、フナは「無胃魚」と呼ばれ、胃がありません。このため、食べたものが直接腸に送られ、消化される仕組みがどのようになっているのかを見ていきましょう。。
消化器官とは

消化器官とは、基本的には咽頭から肛門までの管(消化管)と消化に関わる消化液を分泌する器官を指します。
消化管は一般的に食道、胃、および腸に区分され、
構造としては内側から「粘膜」、「粘膜下組織」、「筋肉」、「漿膜(しょうまく)」から成りたっています。
消化管は、生まれて最初は1本の直線の管ですが、成長するにつれて長さが増していき、種類によっては複雑に湾曲していきます。
消化器官は消化酵素の分泌などの消化に関わる肝臓や胆嚢、膵臓などの器官も同じくお腹に収納されています。
フナの食性が特殊な理由

フナの最大の特徴は「無胃魚」であることです。
つまり、フナは胃を持たず、食道から肛門までがすべて腸となっています。この構造は、フナが頻繁に食事をしなければならないことを意味します。
無胃魚であることで、フナは効率的に食物を消化し、必要な栄養素を素早く吸収できます。
さらに、フナは淡水環境に広く分布しており、生態系において重要な役割を果たしています。
フナは雑食性であり、植物プランクトンや微生物、デトリタスなどを食べることで、栄養循環に寄与しています。
また、フナは他の魚や水生生物の食物連鎖にも重要な一部を担っており、その存在が生態系のバランスを保つ助けとなっています。
フナのような無胃魚の研究は、魚類の進化や生態系の理解を深めるために重要であり、環境保護の観点からも関心を集めています。
食道
食堂は咽頭と胃(腸)を結ぶ短い管で、内部にはシワの多い粘膜が発達しています。
種類によっては食道が消化に関与するとも言われていますが、
そもそも長さが短く、分泌物もないため、基本的には咽頭から胃へと送り込むための管という扱いで間違いないと思います。
食道は海水では浸透圧調整に関与する機能があるとされており、
ウナギを淡水から海水に移していくと、食道の表面の組織が淡水型から海水型へと変化し、
飲み込んだ海水の塩分を排除するようになります。

これは海水魚や回遊魚における特性なので、
フナとはあまり関係はありませんね。
胃

続いて紹介するのは胃です。主に食物の貯蔵と消化を行う消化器官になります。
胃の表面は伸縮性に富んでいて、満腹になると拡張され、膨れ上がります。
魚の胃は多く3つに分けられており、
噴門部(ふんもんぶ)
胃の入り口部分、食道からつながっています。
盲嚢(もうのう)
食物の貯蔵部分。噴門部と幽門垂の間にある。
幽門垂(ゆうもんすい)
胃の出口部分。腸へとつながります。
腸と同じ構造で、粘膜には栄養の吸収機能があります。
盲嚢の部分ではペプシンと塩酸が分泌されてタンパク質の消化を行います。
胃がない魚



また、一部の魚には胃がないものもあります。
- フナ
- コイの仲間
- ダツ
- サンマ
- トビウオ
- ベラ
- ブダイ
このような胃がない魚を「無胃魚」と呼ばれます。
胃がない理由

さて、ここからはフナに関してお話ししていきます。
フナも胃が存在しない「無胃魚」になりますので、食道から肛門までが全て腸となります。
そのため、体内における食物の貯蔵を行うことができないため、
頻繁な食事を行う必要があります。

フナの水槽を見ると常に何かを食べるように
口を動かしているのが見て取れるかと思います。
なぜフナは胃がないのか、これはフナの生態が大きく関与していると考えられます。

説1:なんでも飲みこんでしまうから
無胃魚は餌といっしょに多量の泥や不消化物を飲み込むので、胃のない方が消化に有利である。
説2:歯が発達してるから
そもそも喉にある咽頭歯が発達していおり、餌を良く噛んでから飲み込みます
そのため、食べ物を消化をする胃が不要になったことにより退化したとも言われています。
海底の泥など何でも食べる雑食性や植物プランクトンや海藻などを食べる植物食性の魚には胃がない個体が多く見られるところから、
食性と胃の退化の関係についていろいろな考察がなされています。
腸


次に紹介するのは腸です。
腸は胃の後端である幽門垂から肛門を結ぶ管であり、
主に消化や吸収の中心的な役割を果たしています。
魚の腸は「十二指腸」、「中腸」、「直腸」の大きく3つに区分されていますが、
人間と比べてそれらの境界が明らかではありませんね。
長さと食性の関係性



腸の長さは食性との関係があり、一般的には植物性の魚類は肉食性の魚と比べて相対的に長い傾向があります。
魚の消化管(咽頭の後ろから肛門まで)の全長と体長の比は次のようになりました。
食性 | 魚の例 | 消化管と体長の比率 |
プランクトン食魚 | イワシ、アジ等 | 0.5〜0.7倍 |
肉食魚 | マグロ、スズキ等 | 0.6〜2.4倍 |
植物食魚 | メジナ、ボラ等 | 3.7〜6.0倍 |
ただ、この計測方法だと体長が体型の影響を受けてしまうので腸の始まる部分から肛門までの直線距離を使って比較する方法もあります。
この場合は肛門の位置も影響があるので、これも適正とは言えませんね。

ちなみにこの計測方法だとフナの数値は
10倍以上と他の魚と比べて圧倒的に長くなります。

フナの肛門の位置って意外と手前にありますからね。
フナの腸の長さ


では、フナの腸の長さは実際どれくらいでしょうか。
フナ類は種によって食性に差があるため、腸菅の長さが異なっています。
フナの型 | 主な食性 | 腸管と体長の長さの比率 |
キンブナ型 | 動物食性(底生生物等) | 約2.0倍 |
ギンブナ型 | 雑食性 | 約3.0倍 |
ゲンゴロウブナ | 植物プランクトン食性 | 約5.0倍 |

どのフナの平均的に腸が長いですね。
フナの中では動食性に近く、腸管が短めであるキンブナ型でも体長の約2倍程度と、
他の魚と比べると平均的には長くなっています。
植食性プランクトン食のゲンゴロウブナの腸管は非常に長く他の種類とは圧倒した数値となっていますね。

このように長い腸管を体内に格納する為に、
体高が高く進化したといわれていますね。
肝臓と胆嚢


続いて紹介する消化器官は肝臓と胆嚢です。ここは胆液という消化液を作ることで、
栄養代謝や血液の成分調整、異物の分解など生命維持には欠かせない働きをおこなっています。
肝臓で作られた胆汁を蓄えており、さらに胆汁を濃縮しています。
腸に食物が入ると胆汁を腸へ出して消化を行います。
胆汁は消化酵素であり、胆汁酸や胆汁アルコールは主に脂質の消化や吸収を行います。
胆嚢は肝臓の下側に袋状であり、色は黄色から黄緑色をしています。

フナの胆汁濃度が高く、特に強力です。
解剖する際には胆嚢を傷つけてしまうと胆汁出てしまい
周りの内臓器官を痛めてしまいますので注意が必要ですね。
肝膵臓


最後に紹介する器官は「膵臓」です。
ここでは「膵液」と呼ばれる消化液を作ったり、インスリンのようなホルモンの分泌を行う器官です。

フナの場合は明確な膵臓という臓器はなく、
代わりに肝膵臓という臓器が腸管にこびりつくように存在していますね。
肝膵臓は、膵臓に相当する消化液分泌機能をあわせ持つ独自の器官です。
主に「アミラーゼ」「トリプシン」「リパーゼ」という物質が生成されます。
フナが栄養を摂るための頻繁な食事

フナは胃を持たないため頻繁に食事をする必要があり、一般的には、1日に数回、約2~3時間ごとに食事をします。
フナは雑食性で、植物プランクトンや微生物、デトリタスなどを好んで食べます。
このような食事の頻度は、フナが必要な栄養をしっかりと取り入れるために重要です。
また、フナは食事をするときに口を動かして食べ物を探す姿がよく見られ、活発に行動するのが特徴です。
まとめ
ということで、今回はフナの消化器官について解説していきました。
- 消化器官は大きく消化管と消化酵素を生産するする器官が存在する。
- 一般的には食道、胃、腸が存在するが、フナは胃がない「無胃魚」であること
- 胃がない代わりに腸が発達していて、他の魚と比べて長いこと
フナの消化器官について学ぶと、魚の体の仕組みや食べ物の消化の仕方がわかります。フナは胃がない代わりに長い腸を持ち、頻繁に食事をする必要があります。
これらの特性はフナの生態に深く関わっています。さらに詳しい情報や解剖方法については、次回をお楽しみに!
参考文献
水産脊椎動物Ⅱ、魚類 岩井保著:恒星社厚生閣
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