今回は泌尿器官として腎臓について解説していきます。
これを読めば魚の浸透圧調整を行う際に腎臓がどのようなことをしているのかわかります。
泌尿器官とは
魚の体内にできた老廃物や浸透圧の調整によって出てきた過剰な水分や塩分は主に腎臓や鰓などを通して排出していきます。
老廃物とは人間の場合は体内でアンモニアを尿素に変えて排出していますが、
魚にはそのような機構はないので、アンモニアのまま排出しています。
これを「アンモニア排出動物」と言います。
しかも、魚の場合は腎臓だけでなく、鰓が重要な役割を果たしています。
というのも、全てがアンモニアとして排出されずに、
一部は「尿素」や「トリメチルアミンオキシド」、「クレアチン」などの状態で尿の中に排出しています。
さらに腎臓や鰓は水中に生活している魚の宿命とも言える「浸透圧の調整」にも深く関わっています。
フナのような淡水魚の体液は淡水よりも高浸透なので、常に水がからだに入り込んできて水脹れになる危険がありますし、
海水魚は周りが低浸透なので、水が抜けていき生理的に脱水症状になる危険があります。
体液の流入や流出を防ぐためにも腎臓や鰓などは水や塩類の出入りをする上で重要な役割を果たしています。
腎臓
まずは腎臓について解説していきます。
魚の腎臓は主に「中腎」という器官が機能しています。
生物の発生初期には「前腎」をいう器官が形成されていましたが、これは成長とともに衰退していきます。
一般的な真骨魚類の場合、腎臓は頭腎と体腎とに別れますが、頭腎は衰退した前腎の組織からなり、
腎臓の機能を補助する副腎という役割があります。
腎臓は左右に1対の器官になり、体の背側かつ脊椎骨の腹側にいちしています。
腎臓の形状も魚によってはさまざまであり、左右の腎臓が接合しているものや分離しているものなどがあります。
フナの場合、左右の腎臓は前半は分離しているものの後半はつながっており、
頭腎の部分がわかりやすくなっているのが特徴ですね。
腎臓は単なる排泄器官ではなく、多種類の恒常性(体液量、浸透圧、イオン組成、体内ph等の生体内環境維持)に関係する機能を有した器官になっています。
つまり、泌尿器系だけでなく内分泌系等も大きく関係する器官になります。
浸透圧調整
魚の体の浸透圧調整には、淡水魚は常時体内に浸透してくる水の排水につとめ、逆に海水魚は常時脱水を補うために水を体内に取り込む必要があります。
淡水魚は口からの水の摂取を極力抑えており、鰓や体表から入ってくる水を大量の尿として排出しています。
したがって腎臓におけるみずを排出する「糸球体濾過量」が大きく、水の摂取量が少なくなります。
一方、海水魚の場合は多量の海水を飲み込んで脱水される水の補給を行い、尿の量を極力抑えています。
これにより糸球体濾過量は小さくなり、尿管で水を再吸収しています。
さらに過剰になりがちな塩分であるカルシウムやナトリウムは主に鰓などから排出しています。
腎臓における浸透圧調整
淡水魚であるフナの場合、体内環境は外部環境に比べて高浸透圧となり、
体内に流入してくる大量の水を排泄し、有用な成分を取り込む器官として腎臓が発達しました。
この浸透圧調整の仕組みにおいて、ホルモン=内分泌系が非常に重要な働きをしています。
具体的には、淡水は細胞内(体内)より浸透圧が低いため、水が体内に流れ込んできてしまいます。
それを防ぐためにホルモンの働きで鰓でNa+の流出を抑え、水の吸収を抑えるんですね。
同時に腎臓では血液の濾過量を増やし、Na+の再吸収を促進するということを行っています。
それによって魚類は淡水に適応することができました。
もとは泌尿器系の器官である腎臓を使い、
内分泌系とも連携しながら海水から淡水への適応を可能にしたということがわかりますね。
腎臓目線で語る好適環境水のメリット
よく水産業界で話題に上がる「好適環境水」ですが、
この水の何が良いのかというとシンプルに浸透圧調整の必要がなくなります。
というのも魚は消費するエネルギーの約3割が鰓や腎臓などに使われていると言います。
それほどに浸透圧調整は体力を消耗していくのです。
しかし、塩分濃度が適正で浸透圧調整が必要な成分が入っている水だとわざわざ鰓や腎臓を使用する必要がないんですね。
なので、本来は鰓や腎臓で消費していた栄養が成長にまわすことができるため、
通常の飼育水よりも成長速度が増すと言われています。
詳しい記事も書いていますので、よければそちらをご覧ください。「好適環境水について」
まとめ
ということで、今回は泌尿器官としての腎臓のはたらきについて解説していきました。
- 腎臓には体腎、頭腎などの部位が存在しており、魚によって形状が違うこと
- フナをはじめとする淡水魚は浸透圧調整を行うため、おおくの水を排出していること。
また、コラムとして好適環境水が腎臓に与える影響についても解説していきました。
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