フナには歯はあるの?|魚の食性と摂食器官

形態学

今回は摂食器官について解説していきます。

魚が食事をする際にどんな器官を使うのか、その機構について解説しています。

食性

魚類は生息場所にいる餌生物を無差別に摂食するのではなく、好みのエサを食べることが多いです。

しかし、生息場所に好みの餌生物が存在しなかったり、存在していても量的に不足したり時には餌となる生物を求めざるを得ないので、魚類の餌の選択性は必ずとも決まっているわけではありません。

魚の消化管の構成は積極的に接触する餌の生物によって反映されていますね。
食性は消化管内の餌である生物の種類や食事方法を加味して判断していきます。

食性の種類

魚の食性の表し方にはいくつかの種類があります。
大きく分けると動物食性(肉食性)、植物食性(草食性)及び雑食性です。

それでは細かくみていきましょう。

食性の表し方

魚食者
 大きな口、鋭い歯があるのが特徴です。

貝食者
 貝殻を砕ける強靭な歯があるのが特徴です。

底生生物食者
 味蕾や鰓耙が発達しており、
 硬い歯を持ち、口から水を噴出する。

デトリタス(底生有機物)食者
 咽頭歯をもち、砂と一緒に餌生物を吸い込み捕食するのが特徴。

プランクトン食者
 鰓耙が長く細かく発達しており、
鰓耙でプランクトンを濾す特徴です。


ポリプ(サンゴ等)食者
 吻が前方に突き出ている。


藻類(海藻、水草)食者
 植物をスリつぶす歯を強靭な歯をもつのが特徴。
 消化器官として腸が体長と比べて5倍近くと長い。

雑食者
 上記の食性の複合

なお、食性の違いは、口の位置、大きさ、開閉機構をはじめとして、
歯、鰓耙、消化管などの形態と密接に関係することが多く

それらの器官の特徴から、その魚類の食性を推察することが可能な場合もあります。
また、魚類の生息場所と食性との間に深い関係がある例も少なくないですね。

先生
先生

フナの場合は雑食者にあたり、
底生生物、プランクトン、藻類をよくたべます。

口・口腔

フナの口の動き

口の形態は顎の構造と機能に密接な関係があります。

硬骨魚類では「伸出機構」といって開口時に上顎を伸出させるものが多く
伸出機構には上顎を縁とる骨の動きが深く関与しています。

フナのような進化した真骨類では前上顎骨が長く後方へ伸びており、
上顎の縁取っていることでさらにその前端背方に上向突起が発達します。

これによって上顎の可動性はが良くなり、前方に顎を伸出させることによって口が前に突出して、
餌となる生物を効率よく口内に吸い取ることができます。

なお、口の動きについては筋肉の項目で解説しています。フナの筋肉の種類と動き

口の位置

口の位置や大きさは魚の摂食行動と密接な関係があります。

遊泳しながら小魚に襲いかかるマサバやカツオなどでは、口は頭部前端に位置する。
底生生物を主な餌とするドジョウやチョウザメなどでは、口を下向きに曲がっている。

また、口の位置が成長段階によって変わることがあります。

多くの魚類は仔稚魚期には前向きの口を備える。
このような口は仔稚魚が遊泳しながらプランクトンを摂食するのに適している。

先生
先生

成長共に餌生物の種類や大きさが変化するのに伴って顎の形に変化が生じ、
上向きあるいは下向きとなります。

口の大きさ

口の大きさも摂食行動と反映することが多いです。

デトリタス食性のボラやプランクトン食性のキビナゴやイワシ、底生生物食性のヒメジ、ドジョウの口は一般的に小さく、魚食性であるサケやマダラの口は大きいですね。

自らよく動いて摂食する魚類の口は相対的に小さく、
餌生物の接近を待ち伏せして襲う魚類の口は大きい傾向があります。

そして、口に取り入れられた食物は、咽頭へと運ばれます。
魚類の口腔では消化酵素は分泌されず、口腔は食物のみならず呼吸と水の通路になります。

歯は摂食に対して大事な役割を果たす器官ですが、生物によって基本構造に違いがあります。

歯の構造

無顎類
 角質歯とよばれ、ケラチン質の層で構築されている。

軟骨魚・硬骨魚類
 外側はエナメル質、象牙質、歯髄の三層によって構築されている

真骨魚類は円錐歯と呼ばれる歯が一般的です。種によっていくつかの変形があります。

フナの歯(咽頭歯)


コイ科魚類をはじめとした歯は咽頭歯を備える種が多いです。
咽頭歯は咽頭部にある歯で口腔から送られてきた食物を捕らえて食道へ送り込みます。

胃が無くても色んなものを消化できるのは、喉の部分にある咽頭歯で餌をすり潰して消化しやすい状態にしたうえで腸に送り込む為である。

咽頭歯がある魚はコイ科以外にはオオクチバス、ベラ、ウミタナゴ、カワスズメのなどがあります。

コイの仲間は上記の魚と比較して両顎に歯がなく、下咽頭歯のみが発達しています。
咽頭部背面に相対して発達する咀嚼台と噛み合わせて食物を咀嚼していきます。

咽頭歯とは人間の奥歯に似た臼状の歯で、白いホーロー質で覆われており、コイはこの咽頭歯を使い10円玉を曲げることができるとも言われています。

形状は左右一対の骨に片側4個の歯が並んでいます。

鰓把

 鰓耙とは、無顎類を除く魚類がもつ鰓にある摂食器官の一つです。
構造は鰓弓の内縁につながっている突起になり、細い櫛状で1列に並んでいます。

鰓耙の形、数、発達状態は種によって異なっており食性によって関わりがあります。

フナをはじめとした真骨魚の多くは鰓耙を備えています
その形は棘状、ヘラ状、葉状、コブ状など種によってさまざまです。

食性による鰓耙の違い

プランクトン食の魚類
微細な植物プランクトンやボラのようなデトリタスを濾して接触する魚類では
鰓耙が長く、数が100本を超えるほど多く密生しています。

肉食魚の魚類
鰓耙が短く、数も少なくなっています。エソやタチウオの鰓耙は鋭い突起状となっており数が少なく、ハモやアンコウの貪食の魚類では鰓耙は退化し消失しています。

鰓耙にはさらに二次的に微小な突起が並び、濾過時には鰓耙をふるいを形成するようになっています。

先生
先生

フナ類は特に種類によって鰓耙数が異なりますので分類の際に使用されます。

同じフナ類でも水生生物を捕食するキンブナの鰓耙は長さが短く、数も50本以下と少なく、
植物プランクトンを食するゲンゴロウブナは鰓耙が長く、数が100本を超えるほど多いです。

まとめ

ということで、今回はフナの摂食器官と食性について解説していきました。

  • 食性と体の作りには密接な関係があること
  • 口の大きさや向きは食性の違いで変わること
  • 歯は魚によって形が異なり、フナは喉の奥に咽頭歯という歯があること
  • エサの仕分けは鰓耙の中の鰓耙で行い、フナは細かいこと

以上になります。
魚の顔つきが違うのは個性・・・なのではなく、食べるものに適した顔つきになっているんですね。

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