今回は魚の泳ぎ方と速さについて解説していきます。
魚の瞬発的な泳ぐ速度や高速で回遊するマグロなどの「持久力」そして「水中を泳ぐ能力」は、その筋力もさることながら、水中という環境を生かす体型や遊泳方法など目を見張るものがあります。

魚が早く泳げる理由を中心に解説していきます。
魚の遊泳能力について
遊泳と浮力


そもそも水中で早く泳ぐのが難しいです。

それではなぜ、
魚たちはあれほどまでに早く泳ぐことができるのでしょうか。
それは水中という特殊な空間に着目する必要があります。
わたしたち人間を含めた陸棲生物が、重力に対抗して維持するために大きな力を必要しているのに対して
魚は自らの比重に近い水中にいるおかげで、大きな力を使わずに姿勢を保つことができるますね。

魚が、その筋力のほぼ全てを推進のために使うことができますね
実際に魚は陸棲生物に必要な重力に抵抗する為の抗重力筋を持ちません。
体のほとんどを占める体側筋は推進力を生み出すだけになり、
そんな無駄のない筋肉の構成が早く泳げる第一の理由と言えます。
遊泳速度の種類

遊泳速度といっても「瞬発的なスピード」か「長距離を泳ぐ際のスピード」によって意味は異なっていきます。
魚が数秒以下の短時間に出すことのできる。
最大スピードを「突進速度(実験地)」または「最大遊泳速度(理論値)」と呼びます。
それに対し、
30分〜数時間と比較的長時間泳ぎ続ける最大のスピードを「巡航速度」と呼びますね。
また、鰓蓋を開閉して自ら呼吸することができないカツオやマグロなどの回遊魚では、
呼吸や揚力を維持する為の「最小維持速度」という概念がありますが
これは巡航速度よりも低くなっています。

短距離走とマラソンで使う筋肉が違うのと同じなんですね
遊泳に使う筋肉

突進速度(最大遊泳速度)と巡航速度の関係は、遊泳に使われる筋肉の違いにあります。
魚の筋肉の働きについてはまた別で詳しく解説していますが、
その中でも遊泳能力には 体側筋と血合筋の役割は大きな意味を持っていますね。
体側筋は比較的短時間しか収縮を繰り返さない一方で、
血合筋は酸素の供給が充分であれば長時間も収縮を繰り返すことができます。
魚が突進速度を繰り出す時には主に体側筋が使われる為、
一時的にスピードは出せても持続時間は短いです。
一方、巡航速度で泳いでいる時には血合筋が使われているため、
疲労せずに長時間泳ぎ続けられます。

血合筋をたくさん持つ魚ほど、
長時間の遊泳に耐えるということになります。
巡航速度〜突進速度のスピード域では、体側筋と血合筋それぞれ双方を使って泳いでいるため、
速度が速くなるほど、持続時間は短くなります。
逃げる魚の速度(突進速度)

魚のスピードは体感されるのは、川や湖で早い速度で逃げる姿でしょうか。
釣りで針をくわえたり、エサを見つけて素早く食いついて来る時も魚のスピードの速さには 驚かされます。
魚の突進速度は1秒あたり体長の10倍が目安になります。

つまり、体長30cmのフナなら1秒間に3mも泳げるというわけですね。

そう考えると早く感じますね
魚によってはさらに瞬発速度が早いものがあり、
体長の20倍ほどのスピードを出すケースがあることが実験によって明らかになっています。
泳ぐ方法
遊泳と体型
魚の遊泳速度はマグロで時速82km、マグロを捕食するカジキに至っては時速125kmを超える速度を泳いだ記録があります。
これら早く泳げる魚の特徴は全て水中で抵抗が小さい体型をしていることですね。
魚の泳ぎ方に関しては「魚類に体型」の項目で解説したように
「紡錘型」「側扁型」「縦扁型」「ウナギ型」「フグ型」があり、

フナなどのコイ科魚類が側扁型にあたります。
早く泳ぐ魚類の多くは紡錘型をしています。
紡錘型は前から見ると縦長の楕円形であり、水の抵抗が小さそうな体型をしています。
一方で、側扁型は急な方向変換や遊泳速度をこまめに調整するのを得意としています。
これは泳ぐ時に尾鰭を大半に使う紡錘型よりも体の全体を使うことで、背鰭や胸鰭も扱うためですね。
泳ぎ方の違い
ウナギのように体の全体をくねらせて泳ぐものもいればマグロのように尾鰭を激しく動かすものもいます。
そんな泳ぎ方にも魚ごとに違いがあり、魚の泳ぐ速度を左右する要素の一つとなっていますね。
泳ぎの際の運動方法は大きく分けて「波状運動」と「振動」があります。
波状運動
体を左右にくねらせる動きを行い泳ぐ方法。巡航速度は他の魚と比べて遅め。
アナゴやハモなどのウナギ型に多い。
振動
体の後部で波状運動を行い、尾鰭の振動で推進力を得る泳ぎ方。高速で泳ぐ魚に多く
アジやマグロなどはこの方法が多いです。
フナは振動型の泳ぎ方に当たりますね。
いずれも早く泳ぐには全身の波状運動よりも尾鰭の振動を使った方が有利となります。
尾鰭の使い方

遊泳の早いマグロなどの魚は主に尾鰭の振動を使って泳いでいます。
鳥が羽をばたつかせてお空を飛ぶように、尾鰭を左右に振って推進力を得ています。
魚の尾鰭はほとんどが上下対象の形をした「正尾」と呼ばれるものですが、
尾鰭も魚によって形は異なり様々な種類が存在します。
そして、早く泳ぐ魚ほど「尾鰭が深く切れ込んでいる」特徴があります。
その一方で、フナのように尾鰭の面積が大きい魚の場合は短時間のダッシュや旋回を得意としています。
まとめ
ということで、今回は魚の泳ぎ方と能力の解説をしていきました。
- 泳ぐ時には瞬間的な「突進速度」と持久的な「巡航速度」があること
- 泳ぐ時には「体側筋」と「血合筋」を使いこなしていること。
- 体型や泳ぎ方によって違いがあり、フナは側扁型で体全体を使って泳いでいること
魚が泳ぐのに特化している姿なのが非常に面白いですね。
今度水族館に行ったら泳いでいる姿を観察してみましょう。
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