平野の湖沼|フナの生息地

生物学

今回はフナの棲家として「平野の湖沼」について解説していきます。

穏やかに水を讃える平野の湖沼は、天然の水辺はもちろん、護岸や漁港といった人工の構造物などのさまざまなポイントがある広大な水域です。

湖沼とは

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そもそも湖沼とは、海と直接繋がっていない天然の窪地に水が溜まった水域のことを指します。

湖沼の中でも比較的大きなものは「湖」、小さなものは「池」と呼ばれることが多いです。
しかし、「湖」や「沼」に対して明確な定義はありませんね。

湖には山上湖やダム湖などもありますが、ここでは平野にある湖や沼について解説していきます

湖と沼の違いについての名称の由来

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湖と沼の違いの違いについては法的な区分は存在していません。

現在では湖沼学者である吉村信吉氏が唱えた
「深さが5m以上を湖、深さが2m未満で中央部まで沈水植物の生えているものを沼」
としている定義に沿って一般的に呼び分けられています。

成り立ちと種類

湖沼の種類

断層湖
地殻変動などの構造運動(隆起や陥没)によってできた湖

三日月湖・堰止湖
蓄積物や崖崩れによって河川が堰き止められてできた湖

海跡湖
もともと海であった場所が氷河期の水位変動や河口が堆積物によって塞ぎ止められてできた湖

湖はさまざまな要因によって成り立っています。

平野の湖沼は、栄養塩類濃度が多い「富栄養湖」であることが多いですね。
冨栄養湖は、湖沼の植物プランクトンが多いため、透明度は5m以下と非常に低いです。

沿岸にはヨシやマコモ、ガマといった水草群落が発達しやすい湖沼です。
それに加え、湖底の泥の中にはユスリカの幼虫などが発生して、水草の周りにエビや魚が育成する環境が存在することで、魚類も多く生息しています。

富栄養湖の問題

富栄養湖では夏場の水温の高い時期には「水の華」と呼ばれるラン藻類を中心とした藻類が大量増殖することがあります。

この水の華が発生すると、溶存酸素量が減少してしまい、水質悪化と生息している生物に対して被害が及びます。

水面を緑色にアオコも水の華のひとつで、これは生活排水が流入する湖沼でしばしば問題となっています。
近年では排水設備や河川の導水路を整備するなど、水質改善のための対策がされています。

湖沼に生息する魚とポイント

平野の湖沼ではフナ類やコイやウナギ、タナゴ、タモロコが生息しています。
また、移入種としてヘラブナやブラックバス、ブルーギル、ライギョなどのさまざまな種類の魚も見られますね。

湖沼の見た目にわかる地形的なポイントとしては、沿岸や湾状に変化しているところや、河川の流入点や流出点など、水流の変化が起きる場所が挙げられます。

沿岸に変化の少ない場所でもアシやガマなどの水棲植物が生えているところや、桟橋や橋脚まわり、水門や樋門まわりといった人工構造物の周りでは魚が集まりやすく、姿を確認しやすいポイントとなっています。

湖沼の沿岸体には、波浪や堆積によって、水深が浅く比較的平坦な「湖棚」という地形が形成されています。
その先には傾斜の急な「湖棚崖」があり水深が急に深くなるポイントです。
そして、湖棚崖の先には湖底平原が広がっています。

湖沼の底の形状は、湖の成り立ちや年月によって変化していきます。
川が堰き止められてできた湖沼の場合、元々川が流れていた跡が窪地となっており、それが魚の通り道となっています。

また、河川の流入点は流れてきた土砂などが堆積することで、湖棚崖と比べてなだらかなカケアガリが形成されます。

フナが名産の湖【三方五湖】

三方五湖は、福井県美浜町と若狭町にまたがる三方湖、水月湖、菅湖、久々子湖、日向湖の5つの湖の総称です。
5つの湖は水質や水深が違い、すべて濃さの違う青色に見えることから「五色の湖」と呼ばれています。
全長11.2kmの県道三方五湖レインボーライン線からその違いがよく分かり、五湖と日本海のダイナミックな景観が楽しめます。
また2005年11月にはラムサール条約湿地に登録され、2019年には持続的な漁業文化が日本農業遺産に認定されました。
公式HPより引用

その中でもフナが生息している湖は「三方湖」と「水月湖」、「菅湖」でしょうか。
5つの湖の中でも生息が限られているのはそれぞれの湖の塩分濃度の違いです
三方湖は淡水湖、水月湖と菅湖は汽水、久々子湖、日向湖は海水に近いので、湖ごとに生息している生物相が異なっているのも面白いですね。
近くにフナを観察できる施設として道の駅「三方五湖」と福井県海浜自然センターがあります。

道の駅 三方五湖

道の駅「三方五湖」では三方五湖の文化や漁業についての解説や野鳥の観察を行っている施設で、入り口に入ってすぐに180センチの大型の淡水の水槽が置いてあり、三方湖に生息しているフナを観察できます。

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また、フナの漁業に関する記載も多くされ、主にボート乗って水面を棒のようなもので水面を叩き、驚いたコイやフナなどの魚を網に誘い込むそうです。

自然観察棟のすぐそばには、三方五湖の一つである三方湖が佇んでいます。湖へアクセスできるように岸には桟橋あり、ボートが複数用意されておりました。ここからすぐに自然観察や漁に出かけることができそうですね。

福井県海浜自然センター

一方、福井県海浜自然センターは歴とした水族館で、三方五湖に生息している魚を主に飼育展示しています。
湖ごとに水槽を分けて飼育展示をしていますので、見てみると面白いですね。
それぞれの詳細はフナのいる水族館で詳しく解説していますので、よろしければそちらもご覧くださいね。

まとめ

ということで、今回は平野の湖沼について解説していきました。

湖沼は野池同様に我々の身近にあるフィールドです。自分の足で湖沼を一回りして魚を探してみるのも面白いですね。

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