三方湖に生息するフナの固有性|DNA分析

環境学

今回は竹島弘彦、松崎慎一郎による「DNA分析によって三方湖に生息するフナの固有性があったこと」について解説していきます。

なにげないフナですが、その地域固有の系統があるということで、保全の重要性が出てくるという内容となっています。

フナの系統

まず最初に語っているのはフナの系統についての内容になります。
日本中のどこの水辺でも普通に見られるフナはですが、そんなフナも系統という細かい視点から見ると地域によって違いが生じていることがわかってきました。

最近のDNA解析による研究からも、フナには2つの大きな系統からなっているとわかってきており、
日本列島固有の系統と中国大陸、台湾、琉球列島の固有の系統であることがわかってきました。
男の子
男の子

沖縄に生息するギンブナが固有種としてレッドデータブックに載っているのは、
この地域差による系統があるからなんですね。

また、日本のフナは、「本州」、「本州+四国」、「九州」の大きく3つの地域系統からなることもわかってきました。
しかし、これらの地域系統は日本にいるとされてきたキンブナ、ギンブナ、ナガブナ、ニゴロブナ、オオキンブナと呼ばれるフナとは、対応しないとされております。
女の子
女の子

これはどういう意味でしょうか

先生
先生

全国に生息しているフナの時点でギンブナであることは間違い無いですが、

とりあえず、「フナ(Carassius auratus)」というくくりで考えておきましょう

これはキンブナ、ギンブナ、ナガブナ、ニゴロブナなどは全て種が同じ「Carassius auratus」であることから、記載しているのではないでしょうか。

一般的な学者からすればフナの分類は困難を極めますから、純粋にフナの同定作業が行えなかっただけとも考えられますね。

三方湖のフナの現状

そんなフナですが、三方五湖でも「ギンブナ」や「ナガブナ」、「ゲンゴロウブナ」の3種類が生息しているとされており、釣り人や漁業に勤しむ人たちなど多くの人々に愛されています。

そんな三方湖のフナですが、近年は個体数が減ってきているそうなのです。

というのもフナは湖や河川に入る水草や、田んぼに入って卵を産みます。その産卵環境の劣悪化や水草の減少により産卵ができなくなったり、特定外来種の密放流により、仔稚魚の捕食による個体数の減少が考えられますね。

このような現状の中で、三方湖流域に生息するフナと漁業文化を守っていきたいと考えていますが、
この際に重要なのは遺伝的な固有性になります。

当時は三方五湖に生息するフナの遺伝的な情報がまだよくわかっていませんでした。

コラム〜なぜ遺伝的固有性を調べておかないといけないの?

女の子
女の子

なぜ調べる必要があるの?

固有性を調べておくことは「自然保護」の観点からは重要です。

個体数の回復の目的だけならば、別の水域で養殖したフナを三方五湖に放流して、定着してしまえば解決してしまうのです。
でもそれは三方湖に生息しているフナの遺伝子とは違いますから結果としてに元から住んでいたフナの固有性を壊してしまうことになります。

先生
先生

簡単に例えるならば

キンブナしかいない池にギンブナを放流してキンブナの個体数を増やそうとしている

ようなものでしょうか。

一応、どちらのフナも種名は「Carassius auratus」にはなりますから、種の観点からは問題がないように思えますが、これではキンブナは増えないですよね。

男の子
男の子

そういえば、メダカの個体数を回復させるために
「ヒメダカ」を放流した団体とかいましたね。

先生
先生

極論を言えば三方五湖の同じフナの仲間だから
「金魚(Carassius auratus)」を放流してしまおうという考えにもなりえます。

女の子
女の子

それは・・・いやだなぁ

三方湖のフナの固有性

ということで、三方五湖の漁協の方々にご協力のもとで、
三方湖流域からたくさんのフナを採集し、その個体をもとにDNA分析を行いました。

分析の結果、三方湖やその周辺のフナは、ほとんどが本州+四国系統に含まれましたが、そのうちの1部は、三方湖やその周辺のフナだけでグループを作ったそうです。

このことから三方湖流域には固有の小系統がいるのかもしれないということがわかりました。
今後さらに詳しい分析を進めることにより、三方湖の系統の固有性がより確かなものになるかもしれませんね。

東京大学大気海洋研究所  竹島弘彦、
国立環境研究所     松崎慎一郎

考察〜三方五湖固有性って

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
男の子
男の子

もしかして「ナガブナ」のことでしょうか。

先生
先生

可能性はありますね。

文章にも「三方湖やその周辺のフナは、ほとんどが本州+四国系統に含まれましたが、そのうちの1部は、三方湖やその周辺のフナだけでグループを作った」とありますが、やっぱり引っかかることがあるんですよね。

この方々はフナ「Carassius auratus」という種の括りでしかみていないイメージがありますからね。

「ほとんどが本州+四国系統に含まれた」というのが「ギンブナ」であり、
「一部は、三方湖やその周辺のフナだけでグループを作った」というのが「ナガブナ」であると言ってもおかしくありませんね。

先生
先生

純粋にギンブナとナガブナの系統差だったのかもしれませんね。

女の子
女の子

ナガブナの方が個体数が少ないと言われていますからね。

まとめ

ということで、今回は三方湖に生息しているフナの固有性について解説していきました。

少々、DNA分析方法には疑問が残る内容にはなっていますが、それでも環境保護の観点からは重要な内容になりますね

長い目でフナの個体数の回復を見ていく必要がありますが、それでもフナの固有性を確認できたのは大きな一歩になりますね。

コメント