今回は三方五湖の漁業的視点から解説していきます。
私が先日食べたフナの刺身は三方湖で漁師さんが漁を行ったことにより捕獲された魚が使われています。どんな方法だったのでしょうか。
これを読めば三方五湖の漁業分化を知ることができます。
叩き編み漁とは

叩き編漁は、味方湖で11月下旬から翌年3月末の冬の間に行われる有名な漁法です。勇壮な漁法であることから、冬の風物詩として知られています。 水温が下がり、湖底に潜むコイやフナを青竹竿船の上から青竹を使い水面を激しく打ち叩いて驚かせ、仕掛けた一枚網(丈約1m、長さ約100mを4束)に追い込んで獲ります。 叩き編み漁に用いる網は異なる目の大きさの網が何種類も用意されており、乱獲を防ぐために、その年の成魚の生育度合いで網を変えます。 福井県、若狭町での叩くの方言から「かちやみ漁」とも言われています。
三方湖には伝統的な漁法が存在しています。それが「叩き網漁」です。
この漁は基本的には水温5度まで低下した冬に行われます。

わざわざ寒い冬にやる必要があるんですか?
もっとあったかい時期にやればいいのに

その理由は魚の生態と大きく関係があるんです。

というのも、魚類は変温動物で水温が下がることにより体温も低下してしまい、代謝が悪くなります。
そのため、低水温環境では活動的に動くことができませんから基本的には湖底でじっとして春を待っているのです。

冬場じゃ魚はエサに食いつかないから
釣りではなかなか捕まえられそうにないですね。

そんな習性を利用したのが叩き網漁です。
漁師が船にのって、魚がいる場所まで移動し、あらかじめ刺し網を用意しておきます。
その後、長さ5m近くある長い竹竿を使い、水面を思いっきり叩いていきます。
水面を叩く大きな音と振動に魚が驚いて突然飛び出していきます。
そして、飛び出してきたところを刺し網で捕まえるという仕組みになります。

この漁では基本的に「フナ」や「コイ」を捕獲することができます。
特に冬場のフナは臭みもなく、身が締まっていて非常に美味しいですからね。重宝されます。
何でも大きなものでは、昭和53年に体調110センチ、重さ23キロの大物の鯉がかかったこともあるそうです。

人間に例えると小学校1年の子供
と同じ位の大きさでしょうかね。

私たちと同じくらいの大きさですか、
自然はすごいですね
近年では漁をしてる最中にオオクチバスやブルーギルなどの外来種が取れるため、外来種の駆除も担っています。
三方五湖の漁業の特徴3選
そんな三方五湖の漁業ですが、様々な特徴があります
漁業と資源保全を両立する漁法であること

江戸時代ではすでに「村単位」で漁業のルールを設けており、明治時代には「湖」を単位に共同活動を行い、現在も継続しています。
漁業者同士が協同して漁法などをルールを申し合わせ、漁獲量の制限を徹底したり、お互いに監視したりすることで、「魚」という資源を長い期間の保全管理ができています。先ほど紹介したような「叩き網」などの伝統魚法は知的財産にもなります。
400年以上も歴史を持つ「叩き網漁」や「柴漬け漁」、「うなぎ筒漁」、「しじみ漁」は湖底の形状や気象条件、魚の特性をたくみに活用した漁法になります。

いずれも大量に漁獲しない資源を管理する漁法ですね。
産物と地域で受け継がれる分化

海とつながる三方五湖にはフナをはじめをする淡水魚から海水魚まで63種類もの豊富な魚類が生息しています。
湖で獲れた魚は周辺の集落で家庭料理として食されることもありますし、漁業者は飲食店を経営して「フナ」や「ウナギ」などの料理を提供し、漁業の付加価値を高めています。

筆者もフナの刺身を求めて県外からはるばる訪れてましたね。
漁業者の知恵と工夫

そんな見方五湖ですが、およそ5年に一度は大雨により湖水が溢れる水害を受けることがあります。
もちろん、その際には漁業用の舟や漁具が破損することもありますから経済的損失も少なくありません。
そのため、破損しても損失を小さく留め、すぐに漁が再開できるようにと漁具を小型化や簡易化してきました。
そのため、三方五湖では大きな漁船はなく、
小さな舟が使われているんですね。
三方五湖の日本農業遺産
そんな三方五湖の漁業ですが、非常に未来へつなぐ価値がある漁として、平成31年に「日本農業遺産」に指定されていました。
日本農業遺産とは
社会や環境に適応しながら何世代にも和たち継承されてきた独自性のある農林水産業、
それに密接に関わって生まれた分化、ランドエスケープ及びシースケープ、農林多様性が相互に関連して一体となった、伝統的な農林水産業を営む地域を農林水産大臣が認定する制度です。
まとめ
ということで、今回は三方湖における伝統魚法について解説していきました。
長い歴史と漁協の協力で成り立っているこの漁法です。
この方法ならば100年先もこの漁業が残っているのかもしれませんね。
広報わかさ 2019年6月号
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