今回は三方湖と水田の関係について解説していきます。
フナは産卵のために移動を行うって知っていましたか?
これを読めばフナの産卵行動や、三方の住人が魚の産卵に対して行っていることを知ることができるでしょう。
三方湖を巡る人と自然との関わり
三方湖を巡る人と自然の関わりについて研究をして、これからの自然再生などにも必要な望ましい湖と人との関わりについての手がかりを得ることを目的としてきました。
具体的には、三方湖の湖畔の魚の再生産に大きく寄与していたと思われる「低湿地帯」やより身近な水辺として重要だった「流入小河川」を中心に、人々の日常の生活とその変貌を調べてきました。
島之内地区のドブ田の魚取り、
例えば、島ノ内地区の田んぼで行われていた魚取りを紹介しましょう。
ドブ田は櫛みたいになっているんです。ドブ川のほうはやっぱり船が通りで整備をします。
宿川を持っていってみんなで揚げとりました。
泥を上げる。そうすると流れた泥も還元されますし、あれをやると、稲がようできましたね。ほとんど無肥料でも作れる位でした。
田植え後とか6月ごろとかその頃雨が降りますと田んぼに水がどばっとつきますから、そうすると産卵のためのフナがたくさん上がってきて、雨が降るとみんなも持って船取りが仕事でした。
それが面白かったですわ。そんなもの10キロは20キロ取れましたね。
今回の研究により島内地区では昭和40年頃まで「ドブ田」と呼ばれる低湿地の水田があったことがわかっています。
この水田は湿田だったため、稲作には苦労がありますが、フナなどの魚取りの場所として重要でした。また、コイやフナなど三方湖の魚にとっても繁殖場所として重要であったこともわかりますね。
水辺の楽しさや思い出を精神的に価値を与えてくれる場所だったとも言えています。
三方湖はそうした豊かさを持った水辺だったのです。
湖と水田をつなげて魚を増やす
魚道で湖と水田をつなぐ三方湖周辺の水田は、かつては湖に住む魚にとって格好の産卵場となっていました。
田んぼが産卵場として適している理由
- 水の流れが少なく、卵や稚魚が流されずにいられるから
- 水温が暖かく、エサ(動物プランクトン)が豊富だから
特にドジョウやフナなどは、水の貼られた水田で産卵をして孵化した魚は水田の中で大きくなります。
水田魚道|水田へ入れない魚への架け橋
しかし、近年は整備が進み、水田と水路の高低差が大きくなり、魚が遡上できません。
そこで、魚が産卵のために水田へ訴訟していた昔の水辺環境に再生することを目的に、
三方湖周辺で水田魚道を設置しています。
水田魚道とは、魚が田んぼへ自由に出入りできるように、水田と水路との間につけた階段のようなものです。設置することにより魚が昔のように水田に入って産卵できるようになります。
現在、三方湖周辺では、16基の水田魚道が設置されており
11種種もの魚がその魚道を利用していることが確認されています。
特にドジョウやフナなどは、水田で育った多くの稚魚が確認されています。
シュロ産卵で湖と水田をつなぐ。
そんな水田魚道ですが、
残念ながら通年使われるわけではありません。
水田魚道は水路と水田の段差をなくすものであり、様々な魚が水田を利用する効果的な手法です。
しかし、水路に魚がいない場合や水田魚道に水がうまく流れない場合があるので、その際には水田を魚が利用できません。
そこで産卵時期になると、コイやフナが水路に侵入して、水草に卵を産みつけます。
その習性を利用して、水草の代わりに鮎の採卵などに用いられる「シュロ(産卵床)」 に採卵させて、その卵を人の手で睡蓮に移しました。
その結果、水田で育った多くの地域が確認され、シュロを用いて採卵し、水田でコイやフナを増やすことができることがわかりました。
子供にとって「フナ」は三方の象徴
若狭町内全域の小学生を対象とした「昔の水辺の絵画募集」では、
「フナ」が最も多く描かれた生き物だったそうです。
また、描かれる生物にも地域性があり、三方湖沿岸では「エビ」、長谷川流域では「ウナギ」、水田には「蛍」「トンボ」などの昆虫が多かったそうですね。
モクズガニなど「カニ」は若狭町全体でまんべんなく登場しており、「フナ」と並んで若狭町内でもかなり身近な辺の生き物だったことが伺えます。
つまり、三方湖の再生は、単に自然環境が復元されると言うだけではなく、
こうした自然と不可分の社会や経済、文化、歴史なども含めた人の生の豊かさを取り戻すことで達成されると言えるでしょう。
こうした三方湖の人と自然の関わりの研究成果から、自然生産において具体的にどのような自然の関わりを再生するのが良いかなどのヒントが得られるといえます。
まとめ|人が湖と水田をつなぐ
湖と水田をつなげて魚を増やすには、現状に合わせて様々な取り組みを行っています。
どの方法も地域の人々の力が必要不可欠です今後も協力しながら取り組んでいきたいですね。
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