野生の白鮒(シロフナ)の謎に迫る|白色変異種

品種改良学

ヒブナの希少性と金魚の見分け方

ヒブナ(緋鮒)とは、一般的に体色変異を行っているフナを指します。
基本的は名前の通り「緋色」をしている個体を指しますが、黄色や青色、そして今回のテーマのような白色をしている個体も「ヒブナ」と総称することが多いです。
先生
先生

この場合、「フナ」の種は特に問わないことが多いですね。

ヒブナは日本各地で野生種として稀に見られますが、特に釧路市の榛名湖のヒブナの場合は天然記念物として保護されています。

このヒブナと金魚の和金は識別する事は難しく、2つの種類の違いを見極めるには、
飼育し、産卵させる以外に方法は無いようです。

ヒブナから生まれた稚魚はすべて「フナ尾」ですが、
和金場合は稚魚の中には、「ふた尾」や「みつ尾」などの個体が生まれます。

野生の白鮒

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ただでさえヒブナが見られることが稀なのに対し、野生で白鮒(シロブナ)が見つかる機会はさらに珍しいことです。

ここで記載している白鮒は昭和31年7月20日に天塩川上流の剣淵川に注入している支流のさらに上にある沼(周囲約300メートル)において、士別市在住の三浦栄一氏が釣り上げた個体になります。

約2年ほど彼の家の水槽(金魚鉢?)で飼育した後、「珍しい鮒」として研究所に持ってこられたものになります。

飼育研究

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そこで研究者たちは直径35cm、高さ35cmの円筒上状ガラスバットの中へ水8L入れ、金魚とともに飼育研究を実施しました。

飼育にあたって、水槽内に金魚藻を入れて日当たりの良い場所に置き、餌として小型のミミズを与えていました。
このようにして全長8センチ前後の大型のものと5センチのもの数とともに約3年間生存しました。

この2回の冬の期間を過ごしましたが、金魚と異なり、性質は活発で、しかも動作も敏感に遊泳してたそうです。しかも、餌の食べ方も金魚に比べて慣れにくく、本当に野生のフナに近かったみたいですね。

飼育した感じでは、バット内でも飼いやすくて環境の変化には比較的強くかったそうですね。
特に水質の悪化や溶存酸素の欠乏に対しては耐性があり、混泳していた金魚とほとんど変わらなかったようです。

ただ冬の温度の低い時期には、暖房の影響によって、飼育環境の水の温度が急上昇してしまい。
水温の著しい変動に対しては、さすがに強くなく体調がを崩れました。

形態測定記録

今回の個体の形態計測値を簡単に示すと、


体型測定

  • 全長 10センチ

  • 体長 7.8センチ
  • 
頭長 2.55センチ
  • 体重 15グラム

鰭の係数

  • 背鰭 3棘14軟条
  • 胸鰭 16軟条
  • 臀鰭 3棘5軟条
  • 腹鰭 9軟条

その他の係数

  • 側線鱗数27個
  • 鰓耙数43本

この数値としてはごく普通に見られる野生のフナ及び和金と何ら変わっているところはありませんでした。ただ体と各ヒレの色合いは目が黒色である以外はほとんど完全に白色です。

その他に頭頂部と背鰭直下の側線鱗に沿って、ほんのわずか黒色素胞(メアノホワ)が存在していたそうですね。


頭頂の大部分は白色ですが、半透明なため脳内の構造が明瞭に見られていて、
鰓部分は美しい赤色が鰓蓋部を透けて見えることで、桃色に見えていたそうです。

色が発現する理由

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金魚のいろいろの色彩を発現する要因として、普通隣の裏や真皮中に虹色素胞があるためなのですが、虹色素胞が局部的にもたないものもあります。

このようなものでは赤、黒、黄の各色素胞が部分的に発生が抑えられますので、魚全体が美しい発色を示し、虹色素胞のない部分は透明に見えるわけです。

先生
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ちなみに、この現象は遺伝的に完全優位性形質であることが知られています。

卵発生中の胚胎が最初に発現する色素胞は、発眼期の眼球の黒色素胞です。

ついで虹色素胞、黄色素胞と言う具合になります。それぞれの色素胞は成長するに従って形成されていきます。

また、透明鱗の場合は、まず黄色素胞が退化して色味を失い、さらに黒色素色も褪色することにより色素胞を持たない乳白色な体色になるわけです。
これら色素崩壊にはグアニン、テアミイーゼと言う酵素が役割を演じているとされています。

 これらの事柄から野生で見出された白色のフナの場合は、初めに目に黒色素胞ができてはいたものの、
さらに沼にもヒブナが生息していたと言うことも考え合わせ、ヒブナとして色素が分布していた魚の体が成長するに従って色素胞が崩壊されて白色の体色になったのではないかと考えられます。

野生種としては珍しい一例になります、紹介した次第です。

野生の白鮒より
さけ・ます孵化場調査課技官 寺尾俊郎

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