埼玉県が日本有数の金魚生産地!その発展の歴史と秘密

漁業学

今回は埼玉県が金魚の生産地になった理由について解説していきます。

埼玉県は現在、愛知県に次ぐ日本屈指の金魚の生産地として知られていますが、その発展には地域特有の歴史と工夫が関係しています。

どのようにして埼玉県が金魚生産の一大拠点となったのでしょうか?

以下で詳しくご紹介します。

金魚養殖の歴史

1950年代〜60年代:鯉から金魚への転換

1950年代の埼玉県では、稲作と並行して鯉の養殖を行う農家が多く存在しました。
しかし、当時の鯉の売り上げは低迷し、養殖農家にとっては大きな課題となっていました。

そこで農家は、埼玉県水産研究所に相談したところ、より利益が期待できる金魚の養殖をすすめられました。
このアドバイスがきっかけとなり、埼玉県内のいくつかの地域で金魚養殖がスタートしました。

1960年代後半:金魚ブームの到来と市場の成長

1960年代後半には全国的に金魚ブームが到来し、観賞魚としての金魚の需要が急増しました。埼玉県の養魚業者たちは、増大する需要に対応するため、大宮、上尾、上里町などに市場を開設し、金魚の取引を活性化させました。

また、東京ではこの頃、水質悪化や土地の価格上昇により金魚の生産者が減少していたため、首都圏に近い埼玉県の金魚生産がさらに重要な位置づけとなっていきました。

こうして金魚養殖業が拡大し、地域の産業として確立されるようになったのです。

また、1968年には埼玉県で初めて「埼玉県観賞魚品評会」が開催され、県内の金魚養殖技術を競い合う場が誕生しました。
この品評会は現在も続いており、地域の養殖技術と金魚文化の発展に貢献しています。

1970年代以降:水産流通センターの設立

1975年には、加須市に水産流通センターが誕生しました。
このセンターは埼玉県養殖漁業協同組合によって運営され、県内唯一の観賞魚市場として毎週水曜日に競りが行われています。

ここでは専門業者による取引が中心ですが、春と秋には一般の来場者も金魚を購入できる展示即売会が開催され、地域の人々にも親しまれる場となっています。
このように、埼玉県の金魚生産は地域経済と文化に密接に根付いたものとなっていきました。

埼玉県の金魚生産を支えるその他の要因

埼玉県が金魚生産で発展した背景には、気候や水質、技術、立地といった複数の要因が影響しています。

1. 気候条件

埼玉県は比較的穏やかで温暖な気候を持ち、金魚が成長するために最適な環境が整っています。金魚は温暖な水温を好むため、冬が比較的穏やかな埼玉県での養殖が適しているのです。

2. 水質の良さ

埼玉県には清流や湖沼が点在し、養殖に適した良質な水を確保しやすい環境が整っています。
また、金魚の育成には水田の排水や井戸水も利用され、こうした水源の良質な水が金魚の健康な成長を支えています。

3. 伝統と技術

埼玉県では金魚養殖の技術が長年受け継がれており、地域の養殖業者は金魚の繁殖と育成に関して豊富な知識と高度な技術を有しています。
この技術の蓄積が、質の高い金魚の生産に結びつき、埼玉県産の金魚が高い評価を受ける理由の一つとなっています。

4. 首都圏へのアクセスと需要

埼玉県は首都圏に隣接し、東京をはじめとする都市部へのアクセスが良好です。
この地理的な利便性により、観賞魚としての金魚が都市部で大きな需要を持つようになり、埼玉県産の金魚が広く流通するきっかけとなりました。

これらの要因が複合的に働き、埼玉県は現在、日本を代表する金魚生産地のひとつとして知られるまでに成長しました。

埼玉県で誕生した特別な金魚と錦鯉

埼玉県は、多種多様な金魚や錦鯉の生産地として知られています。中でも、小赤や琉金といった人気の品種に加えて、埼玉県水産研究所(旧水産試験場)が開発した特異な品種もあります。

ヒレナガニシキゴイ

引用:埼玉県水産試験場

ヒレナガニシキゴイは、昭和52年に上皇陛下が皇太子として水産試験場を訪問された際、インドネシアの長いヒレを持つコイと日本のニシキゴイを交配する提案を受けたことから生まれました。

昭和57年に交配が行われ、ヒレナガニシキゴイが誕生しました。
この品種は、尾ビレ、胸ビレ、背ビレがニシキゴイに比べて約2倍も長いという独特の特徴を持っています。

丹頂コメット

引用:埼玉県水産試験場

丹頂コメットは、昭和59年に作出された品種で、尾ビレや胸ビレが長いコメットの中から特別に選ばれました。
その特徴は、まるで丹頂鶴のように頭が赤くなっていることです。この鮮やかな見た目が、多くの愛好者に親しまれています。

埼玉県で作り出されたこれらの品種は、独自の美しさと魅力を持ち、金魚や錦鯉の愛好者から高く評価されています。

まとめ

埼玉県が金魚の一大生産地として発展した背景には、地域特有の気候や水質、長年培われた養殖技術、首都圏へのアクセスの良さなど、さまざまな要因が絡み合っています。
地元の農家の工夫と努力が、県内の金魚生産を支え、今もなお埼玉県は高品質な金魚を生産し続けています。

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