今回は魚病研究課の柴田俊幸が書かれた「消化について」の紹介していきます。
魚が食べた餌は腸管の中で消化される事は皆さんもご存知だと思います。
ではこの「消化」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
消化とは
そもそも餌を食べるという行為の主な目的は、成長とエネルギー源の獲得です。
魚の餌に含まれている栄養素は、炭水化物、タンパク質、脂肪があります。
これらは大きな分子なので、腸管から吸収することができません。そのために、大きな分子を小さな分子に分解する必要があります。
そのように 小さな分子に分解することを「消化」と呼んでいます。
タンパク質は約20種類のアミノ酸が長く連なった構造をしています。
この状態では、腸管からの吸収ができないため、それぞれ単品のアミノ酸に分解し、小さくなった状態で超から吸収されます。
また、炭水化物も多数のブドウ糖が長く連なった構造しています。
炭水化物の消化は、単品のブドウ糖に分解され、吸収されるのです。
次に脂肪は、3つの脂肪酸と 1つのグリセリンが結合した構造をしています。
この脂肪も腸管内でグリセリンと脂肪酸に分かれてから吸収されます。
大きな分子を小さな分子にするために、必要不可欠なものが、「消化酵素」です。
通常、魚の腸管からは、脂肪、タンパク質、炭水化物を分解する消化酵素が分泌されています。
消化酵素で分解できないもの。
消化酵素は すべての栄養素に対して有効かというとそうではありません。
例えば、動物の毛爪などはタンパク質ですが、それらを消化できる消化酵素はありません。
ですから、これらを食べても消化できないので、糞と一緒に排出されます。
また、夜になると水温が低下します。
春先や秋には、水温が低下することで、腸から分泌される消化酵素自体も減少します。
よって、これらの時期には夕方に餌を与えると、消化が始まる夜には水温が低下し、消化酵素の量が減少しやすくなるため、消化不良を起こしやすく注意が必要です。
炭水化物と繊維
この他、消化できない栄養成分の代表的なものに繊維があります。
我々で言う「食物繊維」ですね。
この繊維分もデンプンと同様にブドウ糖が長くなったものです。つまり、デンプンと繊維は非常によく似た構造をしているわけです。
ここで重要な事は、繊維のブドウ糖同士の結合パターンが デンプンと異なるため、通常のデンプンを消化する酵素では繊維を分解できないということです。
ただし、腸管内に繊維分解できる細菌や微生物 が生息している場合には、消化酵素の代わりに彼らが繊維をブドウ糖に分解してくれます。
牛やウサギなど草食動物がその例です。
金魚には胃がない
フナやコイなど、いわゆるコイ科魚類には胃がありません。
食べた餌は、 が食道を通してそのまま腸管に入ります。 このためフナやコイは他の魚と比べて腸管が長くなっています。
よく金魚の飼育書では「 餌は3分から5分以内に食べきれ る量を与えましょう」 と書かれています。これは金魚等にはいかないため、腸管の中がいっぱいになるまで餌を食べ続けるからです。
いっぱい食べられるならいいんじゃないんですか?
そこで当然考えられる事は、消化不良です。
消化不良とは
金魚も人間と同じで、食べすぎたり、古くなって変質してしまったエサを食べると、お腹を壊します。健康な金魚の糞は、肛門から長いひものようにぶらさがっていますが、下痢をすると液状や白っぽい糞を続けざまに噴出させます。また便秘の為に粘液に包まれた不消化のフンを出すこともあります。
金魚のエサやりには水温に気を付ける
金魚などを飼育する場合、餌を与えるタイミングには注意してください。
先ほどにも述べたように春や、秋などの季節は、水温が下がり始める3時ごろに餌を与えてしまうと 消化が始まる頃には水温が下がっているため、消化不良になりやすいのです。
ですから、餌を与える時間は午前中が好ましいです。
また、 室内 の池で餌を与えた後、 天気が急変し、雨が降ると水温は急激に低下するため、同様に消化不良となります。
梅雨の時期は天気予報を参考にして、餌やりの時間を決めてください。
参考文献
フィッシュマガジン 2008年 8月号 p148
柴田 俊幸(魚病研究課)
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