今回は大阪経済法科大学の川瀬成吾が書かれた「保全分類学」について、解説していきます。
保全分類学とは

この分類学の主な目的は、
「絶滅や生態系の破壊を防ぎ、生物多様性を維持する」ことです。
生物学における分類学は、生物の分類や分類体系を研究する学問分野であり、
生物の多様性を整理して理解するために、生物種を分類し、分類体系を構築します。
これには、生物の形態、遺伝子、生態学的特性など、さまざまな要素を考慮することが含まれます。
そのなかでも保全分類学は、「絶滅の危機に瀕している種や生態系の保全」に焦点を当てています
保全分類の学者は、絶滅の危機にある生物における種を識別して、保護するための優先順位をつけて、保護計画を立案します。
これには絶滅のリスクを評価し、適切な措置を講じるためのデータ収集や分析が含まれます。
保全分類学は、保護活動や政策立案の基盤となる重要な情報を提供します。
分類はなぜ行うのか

多くの生物が急速に数を減らし、その保全が急務となる中で、生物の分類学を果たす役割はますます重要になってきています。
そんな中、
分類学とは自然の中から主を見つけ出し、名前をつけ、系統累計関係に基づいて整理をする学問です。
分類学の研究が進むごとに何を守るのか、
なぜ守るのかが明確になって、種の保全が行いやすくなります。

生物多様性解析とその修復を目指した21世紀の分類学、
それが保全分類学です。
分類をする価値

近年、瀬田川の下流、淀川から信州の「ヨドぜゼラ」が発見されました。
ゼゼラの仲間には日本には1種類だけだと思われていましたが、よく調べると、淀川に従来から知られていたゼゼラとは、異なる集団が見つかり、それが新種に記載されました。
しかし、このセゼラは発見されて、すぐに絶滅危惧種に選定されました。

もし発見されないままだったら、
人知れず絶滅していたかもしれなかったんですね。

まだ名前がついていないし、見つかっていない種はたくさんいます。
そのため、さらなる分類学研究の進展が求められています。
他の川に生息している魚を放流してはいけない理由
ここからは応用として保全分類学の一例を解説します。
例えば、フナのいる川に別の地方にいる川にフナを放流することは、
環境への悪影響を引き起こす可能性があります。
生物多様性への影響
別の河川に生息している魚の放流は、既存の生態系の生物多様性に影響を与える可能性があります。
他の生物との競争や捕食の影響で、在来の生物種の数や分布が変化することがあります。
遺伝子汚染
異なる系統のフナが交雑することによって、在来のフナの遺伝子プールが変化し、
遺伝的多様性が減少する可能性があります。

これらの理由から、
異なる生息地の生物種を放流する前には、
十分に環境への影響を確認することが必要なのです。
生態系に与える潜在的な影響を正確に評価し、適切な管理戦略を採ることが重要です。
分類学の今後
筆者の方は千葉県出身で、多様性に富んだ琵琶湖の素晴らしい自然に見せられ、もっと知りたいと思う反面、姿を消していく生物もたくさんいて、なんとかしたいと思って育ってきました。
その延長で研究を行い、生物多様性の理解とその保全にわずかでも貢献できることがモチベーションとなっているそうです。
1人でも多くの人に生物の魅力が伝わり、守ろうと思ってくれる人が増えれば研究者として嬉しく思っています。
大阪経済法科大学川瀬成吾 保全分類学
コメント