水族館における分類学的展示|水族館コラム

水族館コラム

今回は、水族館における分類学的展示について解説していきます。
これにより、水族館の展示方法について詳しく学ぶことができるかと思います。

それでは見てみましょう。

分類学的展示とは

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「分類学展示」は、 1つの水槽に、1つの種類の魚だけを展示すると言う方法。
コイはコイだけの水槽、ナマズはナマズのみの水槽といった同類の生物を展示してを並べます。

この展示方法は種の多様性を比較するのに適しており、最も伝統的な手法のひとつです。
形態的特徴に注目させて解説するため「形態比較展示」とも言われています。

現在でも珍しい種類や特殊環境での飼育管理が必要な個体、また他の魚との混泳が難しい個体などはこの展示方法を用いることが多いですね。

フナの場合

フナの場合は あまり分類学的展示をされる事は少ないです。

と言うのも、この展示方法は、基本的に1つの種類の魚を1つの水槽で飼育するため、何かしらその魚に対して展示を行うと言う強い思いが必要だからです。

よほど、珍しい魚や 外的特徴があるものでなければ、あまり1つの水槽で展示をする価値は薄いと思われます。

そういう点を踏まえると、フナ の展示の場合は、分類学的展示よりも地理学的展示で使用されることが多いかと思います。

それなりに淡水魚を専門としている水族館では、1匹1匹の飼育展示を重きに置いているので、単独展示をしているところも少なくありませんが、一般的な場所ではほとんど見られません。

以前、私が見かけた分類学的展示では、愛知県にある赤塚公園ギョギョランドで、 体長40センチを超える非常に大型のオオキンブナ の展示が印象に残ります。

分類学展示をしているフナ水槽

そんなあまり分類学展示されにくいフナ 水槽ですが、いくつかの水族館では分類学展示をしている場所も少なくありません。 一つずつ見ていきましょう。

琵琶湖博物館のニゴロブナ展示

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まずは、 滋賀県の琵琶湖 博物館で展示されているニゴロブナ 水槽です。
ここでは、ニゴロブナが1つの水槽で飼育展示をされています。

ニゴロブナは、日本を探しても琵琶湖にしか生息していない琵琶湖固有種ですので、
分類学的展示をする価値が十分にある種であると言えるでしょう。

また、この水槽の近くに、ニゴロブナの生態について解説されたパネルや食文化を解説した特別なコーナーもされています。

先生
先生

まさに、ニゴロブナ のために存在するコーナーですね。

沖縄美ら海水族館のギンブナ展示

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次に、沖縄県の美ら海水族館で、意外にもフナの 分類学展示を行っています。
ここではギンブナを 1つの水槽で飼育展示をしており、意外かと思われますが、

沖縄に生息しているフナは、 系統学的には、 本州に生息している他のフナ とは 異なる系統を持っているとされています。また現在沖縄では、そんな系統のフナ が 絶滅危惧の可能性が 出てきています。

日本で1番人気の水族館である沖縄の美ら海で、フナ がいることに対して違和感があるかもしれませんが、これを 知っていただくことで、少しでも保全活動の知見を広めていただければと思います。

そのためにも、このフナの 分類学 展示は非常に価値があるものです。

福井県立海浜自然センター

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同じように福井県の海浜自然センターでもギンブナの分類学的展示を行っています。
現在はナガブナと混泳しています。

まとめ

ということで、今回は分類学的展示について解説していきました。

学術的に価値がある展示方法であり、博物館的な側面がありますが、他の展示と比較して目を引きにくい展示方法ですので、そこはそれぞれの水族館での展示の腕が試されますね。

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