今回はフナに寄生する寄生虫の中でも最も危険とされていた「肝吸虫」について解説していきます。
昔、フナを生で食べてはいけないと言われていた原因ですが、
ここでは正しく理解して正しく怖がりましょう。
肝吸虫とは
肝吸虫(かんきゅうちゅう)は、ヒトを含む幅広い哺乳類を終宿主とし、肝臓内の胆管に寄生する吸虫の1種であり、一次宿主である淡水魚や淡水甲殻類を経由して人間に感染することがあります。
この寄生虫の感染は、寄生された動物の生の組織を摂取することによって発生します。
これらの吸虫の幼虫は、寄生した魚の筋肉や内臓に寄生しており、それらを生の状態で摂取することで人間に感染します。
生の魚や生焼けの魚を食べることが
一般的な感染経路になりますね。
この肝吸虫に感染すると肝臓や胆道に寄生して症状を引き起こすことがあります。
主な症状には、腹痛、下痢、吐き気、食欲不振、体重減少などが含まれます。
慢性的な感染は肝臓や胆道の炎症や線虫感染を引き起こし、
重篤な合併症につながる可能性があります。
肝吸虫感染症は、特に東南アジアや東アジアの一部地域で一般的ですが、世界中で見られます。感染を予防するためには、生の淡水魚を避けるか、適切に調理することが重要です。
また、感染を治療するためには医療の専門家の指導のもとで適切な薬物療法を受ける必要があります。
感染するリスクが少なくなっている?
実は、以前と比較して肝吸虫に感染するリスクが以前よりも少なくなっていることが明らかになっています。
その要因としては一次宿主である「マルタニシ」の個体数が減少していることですね。
というのも、肝吸虫に感染する肝吸虫症ですが、1950年代は最も発症が多かったです。
特に秋田県の能代地方や宮城県の北上川下流域、新潟県蒲原地方、利根川中流域、琵琶湖周辺、岡山県南部、吉野川流域が主に流行の地でした。
逆に言えば、この地方では中間宿主である「マルタニシ」が生息していること
フナをはじめとする川魚を生で食す文化があったとも言えますね。
しかし、現在は中間宿主であるマメタニシが著しく減少したことにより、
新規患者の発生がなくなったと考えられ、流行は終息したとされています。
確かに以前と比べると、水質汚濁、農薬散布、用水路の改修、水田の乾田化のために
タニシの生息地自体が減ってしまっており、みられることも少なくなりましたね。
それに伴って肝吸虫自体も少なくなったのでしょう。
油断は禁物
現在は終息されたとされていますが、それは完全にフナの生食が安全であるということにはつながりません。
そもそも、フナを生で食べる人自体が少なくなっているからですね。
フナには完全に寄生虫が存在しないというわけではありません。
Fish Fight!の風評被害
フナを生で食べなくなった要因としてはとある歌が原因ではないかと考えています。
それが「野猿」の「Fish Fight」です。
この歌のサビに「フナは生じゃ食えないはずさ」というフレーズがあります
フナの生食は泥臭いもの、生臭いと印象を与えたからであると言えます。
結果として、フナをはじめとする川魚の生食を控えることになり、
肝吸虫症の感染が抑えられたと考えられればありがたいことかもしれませんが、
そもそもこの曲がリリースされた2001年にはそもそも肝吸虫症の発症自体がほとんどありませんからね。
現在の肝吸虫症の発症例
現在でも、肝吸虫症に感染する方がいるそうです。
しかし、日本人の発症のほとんどが海外からの感染とされています。
つまりは海外旅行をした旅行者が現地の生魚を食したことにより「肝吸虫」に感染したことになります。
東南アジアではいまだに肝吸虫症の感染は存在していますし、魚の食べる文化は多いですから、
海外で魚を食べる時には特に気をつけましょう。
なお、肝吸虫症の感染経路は中間宿主を摂取することですから、
この感染が再び広まることはほぼありません。
今後、肝吸虫が増える可能性
今後、肝吸虫自体が増える可能性としてはほぼないと言っても過言ではありません。
強いていうのならば「国外からの外来魚に感染していた寄生虫が河川などで定着してしまう」
ことでしょうか。
日本国外にも肝吸虫は存在していますから、これに寄生された個体が河川に定着し、寄生虫の卵が河川に広まってしまえば感染の可能性はないとは言えません。
いずれにせよ、我々にできることは無理に川魚の生食を避けることくらいでしょうか。
まとめ
ということで、今回は寄生虫の肝吸虫の現在の状況について解説していきました。
以前と比べると寄生虫による感染のリスクが減っていますので、
フナの刺身で食べることは不可能ではありませんが、完全に安全とも言えませんからね。
生食を行う際には自己責任でお願いいたします。
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