ここでは、フナが寄生の対象となる寄生虫について種類ごとに解説していきます。
吸虫類
吸虫は人間に寄生する寄生虫の一つで、人に寄生するものは40種類以上いるとされています。いずれも野生動物を本来の終宿主とする「人獣共通寄生虫」になります。
吸虫は生活環が他の生物とは複雑であり、一般的には3つの宿主を必要とします。
肝吸虫【かんきゅうちゅう】
フナの筋肉に寄生する。
この肝吸虫に感染すると肝臓や胆道に寄生して症状を引き起こすことがあります。主な症状には、腹痛、下痢、吐き気、食欲不振、体重減少などが含まれます。
慢性的な感染は肝臓や胆道の炎症や線虫感染を引き起こし、重篤な合併症につながる可能性があります。
過去には肝臓ジストマとも言われていましたね。
横川吸虫【よこかわきゅうちゅう】
フナの筋肉や皮膚に寄生する。これに寄生された個体は皮膚の黒色素胞が異常発生を起こして体表に黒い点々発生する黒点病という病気に感染する。
この状態のフナをゴマフナと呼ばれる。
見た目似た反して魚の病害性は低く、この吸虫による人に寄生する種類は知られていません。
クリノストマム
吸虫のクリノストマム属の寄生が原因です。
ドジョウでよくみられる寄生虫ですが、フナでもみられることが稀にあります。組織内にみられる楕円形物はメタセルカリアと呼ばれる幼虫が包まれているものです。宿主(魚)に対して与える影響は少ないですが、水温上昇によりメタセルカリアが活性化し、被嚢から出てくると周辺組織が壊死し死に至ることがあります。
その口部や食道に寄生する人間の咽頭に寄生し、咽頭炎の原因となる。外科的に容易に摘出できるが、ドジョウの踊り食いは避けるべきである。
線虫
線虫は細長い体を持ち、細胞内に腸管を持っています。彼らの名前は細長い形態から来ています。一部の線虫は微小であり、肉眼で見ることはできませんが、他のものは数センチメートル以上に達することがあります。
線虫の中には、他の生物の体内に寄生する種類もあり、動物や人間の消化管や肺、皮膚などに寄生していることが多いですね。
感染すると、消化器系の問題、皮膚のかゆみや発疹、全身の不快感など症状が現れることがあります。
有棘顎口虫
アジアやオセアニアなどに分布し、フナにの筋肉及び内臓に寄生しています。ネコやイヌの食道や胃に寄生します。人間も魚の生食などで感染し、幼虫が人の体内を動き回って浮腫やミミズ腫れを起こします。
カムルチーの踊り食いなどで感染した例もありますので、気をつけましょう。
条虫
条虫は細長い帯状の体を持ち、複数の節(体節)から構成されています。
成虫の体は通常数ミリメートルから数メートルまでの長さに達することがあります。頭部には吸盤や鉤があり、これを使って宿主の腸壁に付着し、栄養を摂取します。
条虫感染の症状は、感染の程度や種類によって異なります。
一般的な症状には、腹痛、下痢、体重減少、栄養失調などが含まれます。
体内で成虫が長い間生存することがあります。
ディグランマ(Digramma interrupta)
フナの腹部に寄生する。腹部が膨満し、遊泳が不活発になる。剖検的には、白い紐状の虫体(いわゆる「サナダムシ」)が腹腔内に充満しているのが観察できる。
この条虫は幅1.5cm、体長は1mにも達することがあります。第一中間宿主はカイアシ類、魚類は第二中間宿主で、終宿主は数種の魚食性鳥類である。鳥の消化管内で成虫となり産卵する。直接的な問題は起きないですが、生殖巣の発達が阻害されてしまいます。
この見た目とは裏腹に人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。むしろ、イタリアでは「マカロニ・ディ・マーレ(Maccheroni di mare)」(海のマカロニ)といって、これを食用にする地域さえあるといいます。
ヒル
Limnotrachelobdella sinensis
フナの鰓蓋の裏側に寄生する。鰓蓋に吸着しているヒルが外観的に観察できる。まれに口唇や眼に寄生していることもある。鰓は貧血し、衰弱した魚は死亡する。
吸血性のヒルで、体長3.8-4.9 cm、幅0.9-1.5 cm。細い頸部と太い胴部に分かれ、前吸盤より後吸盤の方が大きい。胴部両側に11対の水泡状突起を有する。宿主の上で交尾した後、離脱して水草等に卵繭を産みつけると考えられる。生活環は一年に一回転すると推測されるが、冬場によく見かけるとのこと。
淀川で大量に寄生したという事例があり、衰弱していたフナの80%に寄生していた。本種はもともと中国のコイから記載されたが、淀川ではコイへの寄生は確認されていない。
人間には寄生しないので、食品衛生上問題ないです。
線毛虫
繊毛虫(せんもうちゅう)は、原生生物の一群であり、寄生するもものや自由に生活を送るものなどさまざまな生態を持つ生物です。
繊毛虫は細胞内に繊毛と呼ばれる微小な毛状構造を持っており、これによって移動や摂食が可能です。
細胞内には通常、1つ以上の細胞核があります。形態や大きさはさまざまで、単細胞のものから多細胞のものまで存在します。
白点虫(chthyophthirius multifiliis)
フナをはじめとするほぼ全て温帯淡水魚にみられる寄生虫。主に体表、鰭、鰓に寄生する。
外観的に小さな白点として認められる。重度に寄生を受けた魚では、粘液分泌や異常遊泳がみられる場合もある。鏡検により、体表、鰭、鰓の上皮内で回転運動している虫体が観察される。私も飼育している魚に感染する事が稀にあります。
人間には寄生しないので、食品衛生上は問題ないです。
トリコジナ症(Trichodina reticulata)
フナの体表、鰭、エラに寄生する。多くの場合は外観的には無症状であることが多いです。虫体は丸いドーム型で、直径数10~100 μm(写真3)。付着盤中央の歯状体環と周囲の繊毛によって魚に付着寄生する。
寄生されると粘膜が異常に発生して体が白く濁り、エラに感染すると赤く爛れる。水質悪化などが原因で生体防御が低下した際に大量発生しやすい。
人間には寄生しませんので、食品衛生上の問題はないです。
粘液胞子虫(Myxozans)
世界中に2000種類以上存在する寄生虫。魚とイトミミズの仲間を交互に宿主としてそれぞれの体内で粘液胞子虫と放線胞子虫に変態する。
環形動物から放出された放線胞子は3つの突起により水中を浮遊し、魚のエラや体表から感染する。そして魚の内臓や筋肉、内臓を寄生して粘液胞子を作る。
フナに感染する粘液胞子虫の場合は人間には寄生しませんので、食品衛生上は問題ないです。
なお、クドアが寄生したヒラメの生食により下痢や嘔吐を起こす食中毒が問題となっている。冷凍調理や加熱調理で無毒化できるほか、養殖場での検体整備により減少しているとのことです。
単生虫(Monogeneans)
単生虫は魚類の鰓や皮膚に寄生する扁形動物の一種です。約3000種類もの種類があるとされており、大きさは1mm以下から数cm程度とされています。
一般的には卵生で、孵化した幼生は線毛で泳いで宿主に遭遇すると繊毛を捨てて寄生生活に入ります。中間宿主は必要としていません。
フタゴムシ(Eudiplozoon nipponicum)
フナのエラに寄生する。通常、外観症状はないが、重度の寄生を受けると鰓が褪色する。
オスとメス両方が出会って蝶々のような形をしている。
人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
目黒寄生虫館の初代館長である亀谷了氏が研究していた寄生虫ということで、このミュージアムのシンボルマークになっている。
ギロダクチルス(Gyrodactylus spp.)
フナの体表、鰭、鰓に寄生する。通常、外観症状はないが、大量寄生により摂餌不良や衰弱がみられたり、患部が出血することもある
人間には規制しないので食品衛生上は問題ない。
甲殻類
エビやカニの仲間である甲殻類ですが、その中にも寄生生物が存在しています。
イカリムシ(Lernaea cyprinacea)
フナの体表に寄生する。大きめな見た目により寄生していれば虫体が容易に観察できるでしょう。
外部寄生性の甲殻類で、角状突起というイカリ状の頭部を宿主組織内に穿入させて寄生する。肉眼的に認められる成虫はすべて雌で、体長は10-12 mm程度である。体表の寄生部位周辺に炎症が起こる。角状突起の穿入部位は他の病原菌の二次感染を招きやすいといわれる。
なお、人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
チョウムシ(Argulus japonicus)
フナの体表に寄生する。
体表に、大きさ1 cm弱の虫体が観察される。寄生部位には炎症および出血が見られる(チョウ症)。寄生性の甲殻類で、温水性淡水魚の体表に寄生する。吻状の口の直前にある刺針を宿主に突き刺し、その基部にある毒腺から毒液を注入することにより、漏出した血液を摂取する。
人間には感染しないので、食品衛生上の問題はない。
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