イネは水に浸っていても生長できるの?フナと水田の水位|水棲植物学

水草学

今回は「イネが水に浸っていても成長できる理由」について説明していきます。

また、水田での水位管理や水田にいるフナの関係についても解説していますので、魚好きの人もご覧ください。

1. 一般的な植物の根腐れする理由

先生
先生

それではまず、湿地帯や水中で植物が生えることができない理由
について解説していきましょう。

女の子
女の子

水中にいれば水枯れすることがないのに、
どうして陸上に植物って生えているんですかね。

多くの植物は根が水に浸ると腐ってしまいます。これには2つの大きな理由があります。

酸素・光量不足

水中には空気中よりも酸素が少ないことでしょうか。

植物は根からも酸素を取り入れていますが、水中環境では必要な酸素を確保できませんから、
根が酸素不足になり、枯れる要因になりますね。

また、光合成には光が必要です。水中では光が弱くなるため、光合成が効率的に行えず、栄養が作れません。

有害物質

次に、水中には有害物質が多いことでしょうか。

水田のような水が多い場所では、「二価鉄イオン」や「硫化水素」といった毒性のある物質ができやすいです。これが植物の根を傷つけてしまい、結果として枯れてしまいますね。

先生
先生

ただし、水中に適応した水草などは特別な構造を持ち、
水中でも元気に育つことができます。

2. イネが特別な理由

イネは普通の高等植物と比較して特別な構造と機能を持っています。
そのため、水に浸っていても元気に育つことができます。

通気組織の発達

イネは茎や葉から根まで酸素を運ぶための特別な通気組織を持っています。
これにより、空気中の酸素が根に届きやすくなり、酸素不足になりにくいのです。

酸素の分泌

次にイネの根は水中へ酸素を出すことができます。
この酸素によって根の周りを酸化させて、水中の毒性のある物質を無害なものに変えることができるのです。

先生
先生

例えば、前に言っていた毒性のある「二価鉄イオン」ですが、
イネはこれを無害な「酸化鉄」に変えることができるのです。

酸化鉄の被膜

イネの根の周りには、「酸化鉄」という赤褐色の物質が付いています。

これは、イネが出す酸素によって「二価鉄イオン」から作られるもので、この被膜が根を他の毒性物質から守ることができます。

3. 水田での管理

とはいえ、イネもずっと深い水に浸っていると酸素不足に陥ることがあります。

先生
先生

そこで、農家の人たちは以下のように工夫してイネを育てています

管理について

水を落とす
イネの根がよく成長する時期(第三分水期)には、一度水田の水を全部抜いて乾かします。
これによって茎の徒長を抑えるだけでなく、根に十分な酸素を送ります。

水の管理
その後は2〜3日ごとに水をためたり落としたりししていきます。
これによって土に酸素を送りつつ、イネに必要な水分を供給します。

水田の水位は農家の人たちが稲を育てるために管理しています。
水位を調整することで、イネが健康に育ちやすくなるのです。

水田に生息する魚たちと管理

さて、そろそろイネだけでなく魚の話をしていきましょう。

そんな水位の変化する水田にはメダカやフナなどの小魚が住んでいます。水位の変化は、これらの小魚にとってもは死活問題です。

水田の水位が深いときにはフナたちは自由に泳ぎ回流ことができ、エサも見つけやすくなりますので、
魚たちにとって快適な環境です。
しかし、中干しして水位が浅かったりしたときは小魚たちは泳ぐ場所が少なくなり、最悪の場合、干からびて死んでしまいます。

女の子
女の子

いつまでも田んぼに生息することができるわけでないんですね。

農民の配慮

そのため、農家の人たちは、水田でイネを育てるだけでなく、そこに住む小魚たちにも配慮しています。水位を調整することで、イネと小魚の両方が健やかに育つ環境を保っています。

特に落水の時期には、小魚たちが干からびないように注意して、水田の周りの水路や池に逃げ込むことができるようにしています。

まとめ

ということで、今回はイネが水中でも生育できる理由について解説していきました。

イネは特別な通気組織や酸素を出す能力を持っているため、水田のような水に浸った環境でも根が腐らずに成長できます。

また、農家の人たちが工夫して水田の水を管理することで、イネがより健康に育つようにしています。これがイネが水に浸っても元気に育つ理由です。

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