今回はフナが漁獲される地引網漁について解説していきます。
地引網というと、海で行われるものを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実は琵琶湖でも地引網が行われています。ここでは、琵琶湖での地引網漁についてわかりやすく紹介します。
地引網とは?
地引網には規模によって「オオアミ(大地引網)」と「コアミ(小地引網)」の2種類があります。
どちらも魚を捕まえる袋状の部分(フクロ部)と、その部分に魚を誘導する翼状の部分(ガワ網部)、そして網を引くための曳網(ひきあみ)からなります。
琵琶湖で行われる地引網漁は、特に大規模なものです。
例えば、沖島で行われるオオアミは、フクロ部分が約32メートル、ガワ網部分が約900メートル、曳網が約400メートルもあります。
網を入れた全長は約1,800メートルにもなります。コアミはオオアミの半分ほどの900メートルです。
捕まる魚
このような大規模な網で漁を行うため、多くの魚が捕まります。
主な漁獲物は、フナ(ゲンゴロウブナ)、コイ、イオ(ニゴロブナ)などです。
コアミではアユやホンモロコを狙って漁を行いますが、ハスやオイカワ、コイ、フナの幼魚も混じって捕まります。
地引網漁は年によって漁獲高の変動が激しく、
維持経営が難しいため、組合単位で行われます。
地引網漁の手順
地引網漁はまず「シオミ」から始まります。
シオミとは、漁場の潮流(シオ)を確認する作業で、経験豊かな指導者(棟梁)が行います。
このシオミによって漁の成功が左右されるため、非常に重要な作業です。
琵琶湖の潮流
琵琶湖は湖ですが、潮流(シオ)があります。
湖底を流れる「ソコシオ」、中層を流れる「ナカシオ」、表層を流れる「カワシオ」の3種類があります。これらの潮の速度と方向で、網をどこに入れるか、どちらへ引くかを決めます。
シオミには古い網を丸めて糸を結び、湖中に垂らして潮の流れを確認する方法が使われます。
特に「ヨセジオ」の時は魚がよく捕れると言われています。
地引網に使う船
地引網漁では、数隻の船団を組んで漁場へ向かいます。
船団には、網を積む「アミブネ」、網を引く道具を積む「コアミブネ」、ガワ網を引く「ブショウブネ」、魚を積み込む「イケスブネ」などがあります。
アミブネは無動力の丸子船で、2隻が左右に分かれて網を積んでいます。
船団はシオミを行う棟梁と合流し、網を下ろす場所や陸の網曳き場の位置を決めます。
棟梁の合図でアミブネは網を入れ、左右に分かれてガワ網を投入します。
潮の状況により、シオの下流に当たる曳網と上流に当たる曳網の長さを調整します。
地引網漁の作業
網を引く作業は、陸で待つ漁師たちが木製のロクロで網を巻き取ることから始まります。
現在ではウィンチが使われることが多いです。網が岸に着くと、ブショウブネが出てガワ網を曳きます。
引き上げられたガワ網は岸につけたアミブネに順次積み込みます。
魚が十分に寄ったところで、手網で魚をイケスブネに移します。
地引網漁の時間
地引網漁はオオアミの場合、5〜6時間かかります。
早朝から始める「アサアミ」と、朝9時頃に出漁して夕方に終わる「ヒルアミ」があります。
コアミの場合は1時間半ほどで漁を終えることができ、1日に2回行うことも珍しくありません。
豊漁の時は3回行うこともあります。
漁期
オオアミの漁期は4月1日から8月の盆までで、特に5〜6月が盛期です。
コアミの場合は5月から11月10日まで行われ、春にはアユ、秋にはホンモロコが漁獲されます。
まとめ
ということで、今回は琵琶湖における地引網漁について解説していきました。
琵琶湖の地引網漁は、湖で行われる大規模な漁法です。
潮流を読み、網を引くために多くの経験と知識が必要です。地引網漁は、多くの魚を捕まえることができる反面、年によって漁獲高が変動するため、経営が難しい漁法です。
しかし、その伝統的な技術と努力によって、琵琶湖の豊かな漁業が支えられています。
海だけでなく湖でも行われる地引網漁について、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。
参考文献
琵琶湖の魚と漁具・漁法 1984年
発行滋賀県立琵琶湖文化館
印刷 (有)森田印刷
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