今回はヘラブナが日本全土に移入できた理由についてゲンゴロウブナ独自の生態から解説していきます。
釣りの対象魚としてゲンゴロウブナから改良されて全国に放流されたゲンゴロウブナ。
なぜ、こうもうまく全国へ移入することが成功できたのでしょうか。
ゲンゴロウブナの生態から紐解いてみましょう。
ゲンゴロウブナとヘラブナについて
ゲンゴロウブナは、琵琶湖原産のフナです。他のフナ比較して大型となり体長40〜50cmまで成長し、体高も高いのが特徴です。
他のフナ同様に雑食性ですが、植物プランクトン食であり、表層〜中層を泳ぎ植物プランクトンを食べています。
そんなゲンゴロウブナを釣り魚として品種改良したものが「ヘラブナ」になります。
ヘラブナは釣りの対象として人気があり、特に専用の道具を使って釣る「ヘラブナ釣り」が楽しまれています。
ヘラブナの移入の歴史
ヘラブナが日本全国の湖や沼に広がった理由は、主に釣り愛好家による放流が関係しています。
もともとヘラブナは、日本の特定の地域にしか生息していませんでした。しかし、ヘラブナは釣りの対象として人気がありました。そのため、たくさんの人が釣りを楽しめるようにと考え、釣り愛好家たちが他の地域の湖や沼にヘラブナを放流しました。
こうしてヘラブナは、自然の川や池だけでなく、人の手によって全国のさまざまな水域に移されました。これにより、日本中でヘラブナ釣りが楽しめるようになりました。
ヘラブナが種間競争に有利な理由
そんなヘラブナですが、どうしてこうも簡単に全国の湖沼へと移入ができたのでしょう。
それぞれの水域にはもともとの生態系もありましたし、種間の生存競争も存在していたと思います。
そんな中、ヘラブナが生き延びるために有利な点がいくつか存在しています。
エサの取り合いが少なかったこと
まず紹介するのはヘラブナ特有の食性です。ヘラブナは主に植物プランクトンを食べていますが、この植物プランクトンは第一次生産者と言われ、湖などの水域の食物連鎖の基盤となっています。
日光と栄養があれば基本的には自然と発生していきますから、よほど栄養塩の少ない貧栄養湖でなければ食に困ることもありません。
また、淡水魚の中でヘラブナと同じような植物プランクトン食性の魚ほぼなく、エサの奪い合いも起きにくいです。
植物プランクトンを接触する生物としてはフナの他に動物プランクトンがいますが、
ヘラブナにとっては動物プランクトンもエサとなりえますからね、かなり有利な状況です。
強いて言うならば、同じく外来種であるレンギョくらいでしょうが、ヘラブナと比べ釣り魚としての価値は少なく、放流されている湖沼はほとんどありませんので問題はないでしょう。。
これにより移入先に生息していた他の魚類と食料の奪い合いが少ないのは大きな利点です。
他のフナと比べて大型なこと
次に大型な個体であると言うことでしょう。
ゲンゴロウブナはフナの中でも大型の個体であり、成長すると体長40〜50cmに達します。
ここまで成長した個体となれば外敵にはなかなか襲われづらくなります。
それでも原産地であった琵琶湖には体長1mを超える「ビワコオオナマズ」が生息しており、ゲンゴロウブナの生態を大きく変えざるまで影響を与えておりました。
これらの捕食者たちは、琵琶湖の生態系の中で重要な役割を果たしていますが、特に外来種のブラックバスは在来種の魚に影響を与えることがあります。生態系のバランスを保つことが大切です。
泳ぐ層が被りにくいこと
次に泳ぐ層が特殊なことでしょうか。ヘラブナは基本的に植物プランクトンを捕食するため、湖の表層〜中層を群れ成して泳ぐことが多いです。
これは「ビワコオオナマズ」から逃げるために生息する場所を変えたとされています。
本来は湖の底層部や岸辺には既存の生態系が存在しており、種間競争や捕食関係が起こりやすいですが、うまく争いの少ないエリアにて回避することに成功しています。
天敵であるサギやイタチなどが生息している岸辺エリアを避けることができますからこれも有利に働いているのではないでしょうか。。
それでも同じように表層などを泳ぐサケ・マス魚類は存在しますので、一概に安心とはいえませんね。
個体数が減っている
ここまで紹介していきましたが、残念ながら現在は全国各所でヘラブナの個体数が減ってきています。
ヘラブナの個体数が湖や沼で減少している理由はいくつかあります。
水質の悪化
工場や農業からの排水によって、湖や沼の水が汚れることがあります。
水が汚れることによってエサとなる植物プランクトンが減少してしまったり、逆に大増殖してしまったりしてヘラブナが住みにくくなり、個体数が減ってしまいます。
環境の変化
ダムの建設や土地の開発によって、ヘラブナが住んでいた湖や沼の環境が変わってしまうことがあります。
これにより、ヘラブナが住み続けることが難しくなる場合があります。
外来種の影響
現在最大の要因としては外来魚問題でしょう。
同じく外来魚であるブラックバスやブルーギルが湖や沼に入ると、ヘラブナの稚魚や卵を食べたりすることがあります。これが原因でヘラブナの数が減少することがあります。
そもそもヘラブナ自身も釣り魚として放流された個体ですが、彼らも釣り魚として放流されています。バス釣りユーザーが減らない限りはこちらは継続的に行われるでしょう。
対策
これらの理由から、ヘラブナの個体数が減少しているのです。
しかし、残念ながら我々には対策の手立てはあまり存在していません。と言うのも、「ヘラブナ自身も移入種」であるからです。
本来生息していない釣り魚として放流されていた個体ですからね、ヘラブナ釣りをする人が少なくなり、放流が行われなくなった結果、数が減少してしまうというのは生態系では仕方がないことなのかもしれません。
それでも、特定外来種であるブラックバスやブルーギル自体は放流は法律により禁じられていますから、それに関しては厳しく非難せざるをえません。
生態系全体が崩れていく姿を見るのは好ましくないので、その点に関しては改善する必要はありますね。
まとめ
ということで、今回はゲンゴロウブナが全国に移入できたい理由について解説していきます。
現在は数を減らしつつあるヘラブナですが、それでも全国の湖沼で見ることができるフナの一つです。
このような環境が維持できるといいですね。
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