フナの産卵場所としての「ヨシ原」について解説していきます。
水ヨシ原とは、水辺に生える背の高い草「ヨシ」がたくさん集まってできる場所です。
このヨシ原は、多くの生き物たちにとって大切な場所となっています。
たとえば、小さな魚やエビは、ヨシの間に隠れて敵から逃げたり、卵を産んだりします。また、水鳥たちはヨシ原に巣を作り、安心して子育てをすることができます。
ヨシ原は、まるで生き物たちの家のような場所なのです。
ヨシ原に住む生き物たち
琵琶湖やその周辺の内湖には、約80種類もの水草が生えています。ヨシのような抽水植物、ヒシのような浮葉植物、ネジレモのような沈水植物など、さまざまな形の水草が見られます。
かつて、琵琶湖の内湖や岸辺には広大なヨシ原が広がり、多くの生き物たちの住処となっていました。春から初夏にかけて、フナやコイといった魚たちはヨシ原で産卵を行います。また、滋賀県の鳥であるカイツブリは、ヨシの間に巣を作り、子育てをしています。
ヨシ原で行われる漁
昔から、ヨシ原では「タツべ」や「ヨシ網漁」といった漁法が行われ、ヨシ原に生息する魚たちを捕まえていました。漁師たちは、ヨシ原が多くの生き物にとって重要な場所であることを知り尽くしていたのです。
しかし、近年では開発の影響でヨシ原の面積が大幅に減少しており、かつての広大なヨシ原は明治時代の約3割程度まで減っています。
ヨシ原の四季
春から夏のヨシ原
4月から 6月にかけて、雪解け水や梅雨の雨のために、琵琶湖の水位が上がり、水中のヨシ原(水ヨシ)の体積が増えます。
多くのヨシが水に浸かり出すと水中や水辺の生き物たちが巣を作り、卵を産み、子供を育てる場所としてヨシ原を利用していきます。
夏から秋のヨシ原
9月から10月の台風の時期を過ぎると、この時期には水ヨシで生活していた魚が巣立ち、湖の岸辺で生活していきます。
やがて琵琶湖の水位は下がり、陸上のヨシ原(陸ヨシ)の面積が増えていきます。
この状態のヨシは太く高く成長して、秋の時期には草丈が4メートルまで伸びていきます。
この状態のヨシ原には、ヨシ以外にもいろんな陸上植物が生えだし、ネズミをはじめとする多くの陸地の生き物の隠れ家となります。しかし、陸ヨシは 年々減っており、生き物たちの居場所がなくなっているのも事実です。
冬のヨシ原
1月になると、ヨシは全体が枯れ葉が落ちて茎だけになる姿が目立ちます。風景の色合いは白っぽく単調ですが、この季節にもヨシ原には生き物たちが住んでいます。
人々がヨシを刈り取り収穫するのもこの時期です。刈り取られたヨシの根にはは春の芽生えに向けて栄養が蓄えられています。春に向けた準備がもう始まっているのですね。
琵琶湖の水位低下がフナの産卵に影響を与える
琵琶湖の魚の多くは、春先から湖の水位の上昇により、産卵が誘発され、産卵や繁殖の場となるヨシ原や内湖、水田地帯へ移動し産卵をしていきます。
しかし、琵琶湖の水位が急激に下がってしまうと、琵琶湖から内湖、水田への産卵の通り道がなくなって、魚が取り残されてしまいます。
さらに水位が下がり干上がってしまうと、せっかく産みつけられた卵も乾いて孵化できなくなったり、生まれたばかりの稚魚も助からなくなります。
こういった状態を避けるためにも、琵琶湖の推移を急激に下げないようにすることが 必要であり、琵琶湖の生態系の調査や取り組みも行われています。
固有種たちの繁殖の鍵だった水ヨシ
琵琶湖固有の魚であるニゴロブナやホンモロコなどは、湖岸のヨシやヤナギの根っこなどで産卵をします。
古くから湖の付近で生活している人々に親しまれた魚ではありますが、近年では漁獲量が減っており、これらの魚の保全は緊急の課題となっています。
魚の繁殖の場として重要な役割を担っている琵琶湖の護岸のヨシ体は、琵琶湖の水位の影響を非常に受けやすい区域でもあります。
産卵環境を守る対策
フナやモロコの産卵の繁殖を守るためには、水ヨシ帯を確保することが重要であります。
そのためには水ヨシ帯を再生する取り組みを進める一方で、琵琶湖の水位の急激な変化を抑え、
有効な水ヨシ帯の面積をできるだけ長期間維持することが重要になります。
治水利水環境のバランスに配慮した水調節を流域全体で考えていく必要がありますね。
まとめ
水ヨシ原は、たくさんの生き物たちにとってとても大切な場所です。
ヨシが生えることで、水の中のゴミや汚れが自然にきれいになり、魚やカエル、鳥などが安心して暮らせる環境が作られます。
また、ヨシ原は台風や洪水からも私たちを守ってくれる自然の防波堤のような役割を果たしています。
このように、水ヨシ原は自然の中でたくさんの生き物たちが助け合いながら生きるための場所です。
私たちも、この大切な自然を守るために、ヨシ原やその周りの環境を大事にしていくことが必要です。
コメント