
今回は「透明鱗フナ」について解説していきます。
体の中が透けて見えるような、不思議で美しいフナを見たことはありますか?

見たことあります!目が黒くて、エラの赤いところが透けてる魚ですよね。
なんでそんな姿になるんですか?

とても良い観察ですね。それは「虹色素胞」が関係しているんです。
今日は、その透明鱗の仕組みや、どこで見られるのか、さらには遺伝のことまで一緒に見ていきましょう。
透明鱗フナとは?

透明鱗フナとは、文字通り「鱗が透明に見える」フナのことです。
漫画『釣りキチ三平』では「宇宙ブナ」として登場したこともあります。
関西地方、特に兵庫県では「行基鮒(ギョウキブナ)」
愛知県津島市では「恵比寿様(エベスサマ)」や「恵比寿鮒(エビスフナ)」という名称で呼ばれ、珍重されてきました。
透明鱗の仕組みとは?

通常、フナの鱗や皮膚には以下の4種類の色素胞が存在します
- 赤色素胞
- 黄色素胞
- 黒色素胞
- 虹色素胞(光沢を反射する)
このうち、虹色素胞は光沢を与える働きがあり、フナの腹部が白く光るのもそのためです。透明鱗フナはこの虹色素胞が欠損または著しく減少しているため、鱗が透明に見えます。
目の白目部分がないため、黒目がちに見える
エラ蓋が透明で、内側の赤いエラが透けて見える
鱗は存在するが、反射性が低く、皮膚越しに血管や筋肉が見えることもある
このような透明鱗の個体は、無鱗魚ではなく、あくまで「透明な鱗を持つ魚」です。
透明鱗の活用と研究
特に日本では、1950年代以降に透明鱗メダカが発生学・遺伝学の研究モデルとして活用されています。透明体のため、生きたまま内臓や血流などの観察が可能です。
透明鱗の遺伝形式
遺伝子の仕組み
透明鱗形質は、常染色体上の劣性遺伝子によって制御されるとされており、両親から同じ遺伝子を受け継いだ場合(ホモ接合)に発現します。
関連する遺伝子
たとえば「slc45a2」など、色素細胞の形成や色素合成に関与する遺伝子が関係していると報告されています。これが欠損・変異することで色素が作られず、透明化が起こります。
他の魚における透明鱗の例
透明鱗の形質はフナに限らず、さまざまな魚種で確認されています。
- メダカ(Oryzias latipes)
古くから作成されており、透明鱗体型は鑑賞用だけでなく研究モデルとして有名。 - 金魚(Carassius auratus)
「出目透明鱗」などが固定品種化しており、「紅葉和金」などが有名である。 - ドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)
農業用水で突然変異が見られる - グッピー(Poecilia reticulata)
透明鱗の改良品種が流通しています。 - 熱帯魚全般
パーカーホやカトラなどのコイ科魚類やエンゼルフィッシュで確認。
「レッドチーク」という名称で流通することもあります。
金魚における透明鱗品種:紅葉金魚


透明鱗の金魚として有名なのが「紅葉金魚」。透け感のある赤系の体色が、紅葉のような風合いを醸し出しています。
- 紅葉琉金
琉金型の赤~オレンジ透明鱗 - 紅葉出目金
出目金体型、淡い体色が特徴 - 紅葉和金
和金型、観賞用として人気 - 紅葉オランダ獅子頭
頭部の肉瘤が特徴で、透明鱗でやわらかな発色
※透明鱗個体は色抜けや日焼けに弱いため、直射日光を避けた飼育管理が推奨されます。
愛知県における透明鱗個体の発見と背景

愛知県津島市や三重県四日市市では、野生の透明鱗フナが「エビスサマ」として昔から知られています。
この地域は、紅葉金魚の発祥地「弥富」にも近く、養殖された透明鱗金魚が逃げ出し、在来種と交雑して透明鱗のフナが誕生した可能性もあります。
突然変異と見るか、人工種との交雑と見るかは、今後の遺伝子検査によって明らかになるでしょう。
透明鱗フナを展示している水槽施設
津島市児童科学館(愛知県津島市)


津島市内にある科学館で、館内には淡水魚の展示水槽が複数設置されています。その中のひとつに、「エビスブナ」の名で知られる透明鱗フナが10尾ほど飼育されていました。
地域に伝わる「恵比寿様」伝承とも結びついた展示で、過去には『さかなクン』さんがこの施設を訪問し、透明鱗フナを寄贈したという話もあるようです。ローカルな自然文化と展示が融合した、珍しい事例です。
スイトピアセンター「水のパビリオン」(岐阜県大垣市)


大垣市の複合施設「大垣市すいとぴあセンター」内にある展示コーナー「水のパビリオン」でも、透明鱗フナと思われる個体が確認されました。
展示水槽は「川魚の紹介」として構成されており、個体には特別な表記はなく、単に「フナ」とされていましたが、体長10cm超でエラ蓋が透けて見えるなど、明らかに透明鱗の特徴を備えた存在感のある個体でした。
東京タワー水族館(東京都港区/閉館)


かつて東京タワーの下にあった「東京タワー水族館」では、金魚展示コーナーの中で透明鱗フナと見られる個体を確認した記録があります。
当時の展示には明確な透明鱗の説明はありませんでしたが、金魚品種との関連性や形質を考えると、その中に透明鱗個体が混ざっていた可能性は高いと思われます。現在は閉館しているため、確認はできませんが、記録として貴重です。
我が家の透明鱗フナの飼育記録

我が家のフナ水槽でも、透明鱗フナを1尾飼育しています。体長は10cm程度で、体高はやや低め。体色は全体的に黄色がかっており、どちらかというと「キンブナ」に近い体型です。
完全な透明鱗というわけではありませんが、背中側の一部やエラ蓋、眼球にはわずかに光沢が見られます。ホームセンターのアクアリウムコーナーで販売されていた個体で、当時の価格は1,480円でした。
販売されていた水槽では、オイカワと混泳していたためか、十分な餌を与えられていなかった様子で、やや痩せ気味でした。現在は我が家の環境にもすっかり慣れ、浮上性の金魚用のエサをよく食べてくれています。
同じ水槽で飼育している他のフナたちとも特に問題なく混泳できており、透明鱗個体だからといって、餌や飼育に関して特別な支障は見られません。
ただし、虹色素胞が欠損している可能性を考慮して、直射日光が直接当たらない環境での管理を徹底しています。過度な光は色抜けやダメージの原因になることもあるため、慎重に環境を整えています。
おまけ:天王川公園の訪問記録|エビスブナの伝承地を歩く


「エビスブナ」が生息していると伝えられる愛知県津島市の天王川公園を訪れてきました。
公園は津島市児童科学館の西側に位置しており、車でおよそ10分ほどの距離にあります。ナビ検索でも迷うことなく到着でき、駐車場も無料で利用できました。
この天王川公園は、何といっても春の「尾張津島藤まつり」で有名な場所です。例年4月下旬から5月上旬にかけて藤の花が見ごろを迎え、公園内に設けられた全長275メートルの藤棚が美しく咲き誇ります。私が訪れた際には残念ながらまだ開花前でしたが、その分園内は静かで、ゆっくりと散策することができました。
公園内の水辺観察



藤棚が設けられている一帯には水辺がありましたが、水深は浅く、当日は魚の姿を確認することはできませんでした。


その代わり、公園北側にある「丸池」では多数の生き物の姿を観察することができました。特に目立ったのはコイの群れで、よく見るとその中にフナの姿も確認できました。体高が高く、口が大きいヘラブナタイプの個体のほかに、体型の異なるフナ(オオキンブナまたはギンブナ)も見られました。



また、この池ではミシシッピアカミミガメやウシガエルといった外来種の姿が非常に多く見られ、在来種と思われるモツゴやナマズなどの小型魚も一部に確認できたものの、全体としては外来種優勢の生態系となっている印象を受けました。
金魚との交雑と透明鱗個体の可能性


うした状況を考慮すると、かつて津島や隣接する弥富市で盛んに養殖されていた金魚が野外に放流され、それが在来のフナと交雑することで、透明鱗の形質をもつ個体が誕生した可能性も否定はできません。
ただし、現在のように外来種の影響が大きい水域では、透明鱗個体が安定して自然繁殖を繰り返すのは難しいと考えられます。環境の変化や交雑の影響を含めて、今後の遺伝的調査や保護の視点も必要かもしれません。
アクセス情報
- 名称:天王川公園(てんのうがわこうえん)
- 所在地:愛知県津島市宮川町1丁目
- アクセス:名鉄津島駅から徒歩15分/車の場合は東名阪自動車道「弥富IC」より約20分
- 駐車場:あり(無料・藤まつり期間中は混雑に注意)
- おすすめ時期:4月下旬〜5月上旬(藤の見頃)
まとめ
透明鱗フナは、色素胞の遺伝的変異によって光沢を失い、独特の姿を見せる美しい存在です。
その形質は偶然の産物かもしれませんが、地域の文化や金魚養殖の歴史と深く結びついています。
研究価値も観賞価値も高い透明鱗個体。その不思議な魅力は、見る者の心を惹きつけてやみません。

ということで、今回は「透明鱗フナ」について解説していきました。
見た目の美しさだけでなく、遺伝や環境、地域文化とも深い関わりがあることがわかりましたね。

はい、透明な鱗にもちゃんと理由があるんですね!
科学的な視点から見ても、すごく魅力的な魚だと思いました。


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