【環境学】外来種がフナに与える影響について

水産学

ども、あおいふなです。今回はフナが数を減らしている原因の一つである外来魚問題について解説していきます。今回の話を通じて、外来種が在来種にどのような影響を与えているのかを少しでも理解いただけたら幸いです。

外来種と外来種問題

コイ、実はこの魚も外来種である可能性が高い。

 生物が自らの能力ではなく、人為により自然分布域から障壁を越えて分布域外へ移動されることを導入、移動された生物は外来種(外来生物)という。

 外来種は自然に分布している在来種(在来生物)に何らかの影響を与える。在来種のフナが外来種であるオオクチバスの捕食に対する対抗手段を持たない場合なら、一方的にその種は食い尽くされしまい、絶滅に追いやるだろう。捕食や生息場所をめぐる競争などにより在来種を絶滅に追いやり、生物多様性を著しく損なう外来種は、特に侵略的外来種と定義されている。

外来生物法と特定外来種

特定外来生物であるブラックバス。本栖湖にて撮影

 「特定外来生物による生態系に係わる被害の防止に関する法律」が2005年に施行された。
 外来生物法の目的は、特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業の被害を防止し、生物多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資するとされている。

 特定外来種とは、国外外来種のうち、在来種の存続を脅かすなど生態系を破壊してしまうか、人に危害を加えたり健康に害を与える、あるいは産業に重大な悪影響を与えるか、与える可能性がある生物のことである。特定外来種に指定されると、その生物の飼養、栽培、保管、運搬、輸入が全国一律で禁止され、駆除が実施されることになる。違反すれば高額な罰金が課せられる規制である。

日本で特定外来種に指定されている魚類は、フナとの関係が高いオオクチバスやブルーギルをはじめとする13種である。 日本に生息する外来種は淡水魚だけでも国外外来種は44種、国内外来種は50種もあるとされている。(「外来種ハンドブック」による)

なお、日本産淡水魚は外来種を含め312種も確認されているので、外来種の比率がいかに高いか想像がつける。
 ここでは日本における外来種がどのような影響を与えているのか、その可能性も含めて、1生物多様性への影響と3産業の解説をする。

生物多様性への影響

摂食による影響

ブルーギル。繁殖力が強く雑食性でフナの卵を捕食する。(姫路水族館にて撮影)

 食べることは生物のもつ基本的属性の一つであり、外来魚は必然的に在来生物を食べることになる。生態系における栄養段階を考慮すれば大型の肉食性の魚類ほど大きな影響を与えると推測できる。特に繁殖力が強い場合は、在来生物の地域絶滅すら引き起こしかねない。

その典型が大型肉食魚のオオクチバスによる捕食の影響である。琵琶湖ではオオクチバスの爆発的な増加とともにニゴロブナが減少している。同様な事例は全国各地から報告されており、その影響の大きさが伺いしれる。

競争による影響

フナ同士でも、水系が異なると遺伝的交雑や繁殖の競争が発生し、数が減少してしまう。(姫路市水族館にて撮影)

 生態的地位がにている生物同士は競争関係に陥りやすい。競争関係とは、例えば餌が同じならば餌を巡る競争に、繁殖生態が同じならば繁殖場所を巡る競争になるということである。在来生物同士であれば、共進化の結果、餌を変える、繁殖時期をずらす、というようにうまく棲み分けていることが普通であり、だからこそ共存しているのである。

 外来生物の生態的特性が在来魚のそれに重なるところがあれば、そこに競争関係が生じ、激化すれば、どちらかが衰退する。

沖縄本島では、沖縄系統のギンブナが外来のフナとの競争によって生息地を追われ、数が減少している事例がある。

生息環境の破壊

ソウギョ。大陸産外来種で草が好きな大型魚。その水域の植物を多く食害する恐れがある。

 魚類の行動が生息環境を過度に改変し水生生物の基礎基盤を破壊してしまう事がある。中国原産のソウギョは全長1mを越える大型魚で、水草を大量に摂食するため、池やお堀等の除草目的で放流されることがある。

このような魚を野外に放流すれば、希少な水草などの特定の種の絶滅を引き起こす可能性があるだけでなく、放流数が水域生態系の中で過剰であれば、水草群落そのものを食べ尽くし、他の水生生物の産卵場所や稚魚の育成場所が失われてしまうだろう。

長野県の野尻湖や木崎湖では、ソウギョの放流によって水草群落が壊滅したという。フナの繁殖場所は水草なので警戒する必要がある。

産業への影響

漁業被害

 外来種による捕食が原因で有用水産資源が著しく減少すると、漁業に大きな悪影響を及ぼす。琵琶湖では1980年代後半にオオクチバスが爆発的に増加し、入れ替わるようにニゴロブナをはじめとする在来魚の漁獲量が減少した。

1990年代にはブルーギルも爆発的に増加し、在来魚に大きな影響を与えている。外来魚の増加は在来の有用水産資源を減少させるだけでなく、漁業の作業効率を著しく低下させる。オオクチバスやブルーギルが大量に入網すれば、選別作業に手間がかかる。チャネルキャットのように鰭の棘が鋭い魚種が大量にかかれば、網から外す作業に手間がかかるだけでなく、網が破損するといった被害も出るだろう。混入する外来魚が利用できない場合には、その処分にも手間や費用が発生する。

食文化の破壊

ふなずし。以前は庶民の食べ物であったが、今やフナの数が減って高級料理に・・・。(琵琶湖博物館にて撮影)

 水産資源の減少は漁業への影響にとどまらず伝統的な食文化の衰退や消滅にも直結する。琵琶湖のフナの鮒鮨は、滋賀県民の無形民俗文化財の一つに指定されているが、材料となるニゴロブナが著しく減少したことで、庶民の味が高級料理になってしまった。


 ニゴロブナが減少した原因は、環境の改変による産卵場や仔稚魚の育成場の消失に加えて、オオクチバスやブルーギルといった外来魚による食害が追い打ちをかけたものと推定されている。

まとめ

いかがでしたでしょうか。人々が行ってしまった違法的な放流が原因でフナをはじめとする様々な在来種が数を減らしています。
これを食い止めるには外来種の密放流をなくし、外来種の駆除と非常に多くの手間がかかります。

みなさんの力で少しでも在来種を守っていきましょう。

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