フナは地獄耳!?聴覚が鋭い理由(物理的感覚)

生物学

今回は魚の聴覚について解説していきます。

これを読めば魚が音を認識する仕組みとその能力について学ぶことができると思います。

そもそも、水中では音の伝わり方が全く異なります。

先生
先生

魚は音に敏感だと言われていますが、
実際にどのように音を聞いて行動をしているのでしょうか。

聴覚の大切さ

我々人を含めた陸上の動物は、密度の低い空気に包まれて生活しています。

空気中では数km〜数十km先のものを視認することができるでしょう。

しかし、水中ではそうはいきません。

先生
先生

透明度の高い水域でも視界はせいぜい数十mで、
濁りのきつい河川や内湾では数mの視界を得るのは難しいです。

さらにフナが生息している湖沼や河川では泥や砂が蓄積し、
泳ぐだけですぐに巻き上がってしまいます。

男の子
男の子

水の中って何も前が見えなくなるほど汚いときもありますよね。

つまり、魚をはじめとした水中に生息している生物は陸上よりも、
はるかに視界の悪い環境で生活をしているのです。

 先ほど言ったように水中の音は陸上よりも早く伝達しますから、
視界の利かない水中で生活する魚にとっては、
視覚で得られる情報よりも音による情報を有効に活用しているのです。

水中による音の伝達について

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先生
先生

もし、あなたがダイビングなどで水中に潜った経験のある方でしたらご存知の通り、
水中には音のない世界ではありません。

むしろさまざまな音にあふれた世界であると知っているのではないでしょうか。

水中で発生した音は光や電波と比べて減衰が少なく、広範囲に広がっていきます。

また、空気中の音は秒速340m程度と言われていますが、
水中ではその5倍である秒速1500mに達します。

水中では音は空気中よりも早く伝達しますので、
人間が水中で音を聞くと早すぎて音の方向がわからなくなるほどです。

聴覚器官について 

先生
先生

聴覚とは外部の刺激を受容する感覚の一つで、主に音波を感じる感覚になります。

本来、聴覚は「ヒト」の感覚に当てられた用語でしたので、他の生物が音波よ「音」として感じているのかは定かではありません。

今回は水中で生活している魚が振動や音波を感じ取る感覚を「聴覚」として話を進めていきます。 

魚が音という刺激を直接感じる器官として内耳と側線があり、
聴覚を補助する役割として鰾があります。

音の伝わり方には2種類あり、音圧と粒子変動があります。

内耳では音圧を感じて側線では水粒子の振動である粒子変動を感じます。

人間の場合、耳は大きく3つに分かれており、外耳、中字、内耳とあります。

これにより空気中の音を鼓膜で振動に変えて耳小骨によって効率よく音の情報を内耳に伝えることで音を聴いています。

一方で、魚には陸上動物に見られるような外耳や耳の穴はなく、内耳しか存在しません。

魚の周りにある「水」そのものが音を伝えて魚の頭骨を伝わり、内耳に届けられるのです。

側線と音

内耳とともに魚の感覚器官として重要なのが側線です。

側線による感覚は水中の音の中でも低周波にものに敏感に反応します。

側線の構造

側線は魚の体表に存在する感覚器官であり、音のような振動波のほか、水の流れや揺らぎ、接触などを感じています。
魚の側線は体の表面に伸びる点線のように見えますが、これは側線という期間が小さな孔の連続だからですね。

側線のある鱗は「側線鱗」と言われ、それぞれの鱗に「側線孔」という小さな孔が空いています。

この穴を通して皮膚や鱗の中にある「側線管」と呼ばれる管に水が通っています。

側線間の中には「クプラ」と呼ばれるゼラチン状の物質が並んでおり、
その中には内耳と同じく有毛細胞が包まれていて、水の振動や水の粒子の動きを感じとっています。

これは外敵の接近や障害物の存在をいち早く察知し視覚に頼らずとも自由に泳ぎ回るのに役立っています。

先生
先生

フナのような通常の魚類は体に1本側線が存在していますが、
底棲魚や深海魚は側線が発達しているものも多いです。

アイナメは体に5本も側線を持っていたり、カレイやヒラメは尾の先まで側線が伸びており、砂の中にいても餌や外敵の接近に察知できると言います。

また、大地震や嵐の前にナマズが暴れたり、深海魚が浅瀬に打ち上げられたりと言った魚の異常行動が見られることが古くから言い伝えられています。

こう言った行動も、魚の持つ特殊な感覚によるものではないかと言われています。

フナ
フナ

側線による感覚は単に音を感じるものではないので、

聴覚というよりもむしろ「第六感」と呼ぶべきものかもしれませんね。

 鰾と音

鰾は魚の体の比重を周囲の水の比重と等しく自由に遊泳するための器官ですが、
聴覚にも深く関係しています。

多くの魚類では音を頭骨で受けて、音を増幅して内耳へと伝えています。
その際に鰾が増幅器としての役割を果たしています。

一般的に柔らかい底質の池などに棲む魚は聴覚に優れたものが多く、
フナやナマズの仲間の多くはこうした環境に棲みます。

先生
先生

これらの魚は「骨鰾類」といい、
鰾と内耳の間にあるウェーバー器官という小さな骨を使って振動を伝えています。

女の子
女の子

「聴覚のスペシャリスト」とも呼ばれているそうですね。

反対に海や川の上流に生息する魚は比較的聴覚が鈍い傾向があります。
これは逆環境中の騒音が多すぎる為、感覚が麻痺しないようにするために抑えられているのだと考えられています。

魚の聴覚能力

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生物の聞き取れる周波数

人間 20〜20000Hz

鳥 200〜8000Hz

犬 35〜80000Hz

魚 100〜3000Hz

ヒラメ 〜400Hz

さて、魚の音を受けるための構造について解説していきましたので肝心の聴覚について解説していきます。

まず、我々人間の場合ですが、周波数20〜20,000Hz(ヘルツ)の音を聞き分けることができます。

魚に単純な音を周波数ごとに発生させて魚の聴覚を測る実験を行った結果、概ね数十〜数千Hzの範囲であることがわかっています。

ちなみに鳥類が200〜8,000Hz、犬が35〜80,000Hzであると言われていますので、魚の聴覚はかなり低周波に偏っていると言えますね。

魚の種類ごとに解説していくと、まずフナをはじめとした骨鰾類ですが、数十〜数千Hzの音を聞くことができるのに対して、鰾と内耳がつながっていない魚類では100〜3,000Hz、ヒラメのような鰾の持たない魚では400Hz程度までが聞き取れる音だということがわかっています。

男の子
男の子

魚の聴覚ってたいしたことねーじゃん

単純にみれば魚は人と比べてかなり低い音しか聞き取れないということになりますが、これは魚の聴覚が陸上生物に比べて劣っているというわけではありません。

先生
先生

というのも水中での生活においてわざわざ広い範囲の音域は必要がないんですね。

フナが低周波の音に敏感なように必要な音域に特化した聴覚を発達させているという意味合いもあるのだと考えられます。

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